第77話 ダンジョンに潜む暗殺者

 

 4人組は順調に2層目に到達した。


 多少、ゲートキーパーとして設定してあったレアスライム大群に苦労していたようだが、今のところ問題なく進めている。とは言え、2層のモンスターは1層目のスライムオンリーではなく、ゲルスライムという動きがやや早いタイプのスライムなので、おそらく3層目への到達は厳しそうではある。


『出て来るのスライムばかりじゃねぇか。外れダンジョンかここ』

『1層目のゲートキーパーはレアスライムだったし、倒してもFsしか手に入らなかったから、外れじゃねぇかな』

『もっと先に進んで見ないとわからんだろ?』

『さっさと先に進むぞ。1層目はともかくさすがにこれじゃあ1人で捌けねぇよ』


 2人は既にこのダンジョンに見切りを付けているのかつまらなさそうにしていて、それをもう一人が窘めているというか、説得している感じだ。最後の1人は単騎で前から迫って来るモンスターを捌いている。


「まあ、強くはあるが連携が上手いわけではないし次の階層には行けないだろうな。となると、ここでさっき設定したアサシンラビットが出て来ないと駄目なんだが……」


 そう言ってモニターを眺める。アンゴーラは声を上げていないが真剣 (だと思われる) な表情でモニターを凝視していた。


『さっさと先に進むぞ。そもそもダンジョンに出て来るモンスは奥の方が珍しいことが多いのだから、グダグダ言ってないで手伝えよ』

『はいはい、わかっぺ?!』

『どうした!?』


 迫って来ていたモンスターを1人で捌いていた奴に急かされ、渋々といった感じで戦闘に加わろうとしていた奴がいきなり倒れた。それに気づいた奴が驚き声を上げた。


 お? いきなり1人倒れたな。死んではいないようだが、麻痺しているのか? なんか痙攣しているな。これってアサシンラビットがやっているんだよな? 他にこんなことが出来るようなモンスターは居ないはずだし。


 しかし、一撃では倒さないのは何でだ? 設定した時に見たアサシンラビットのステの感じからしても、一撃でも倒せるような気がするのだが。


『麻痺ってる!? 回ふっ?!』


 おっと、2人目も倒れたな。ああ、気を取られたのか? ジェルスライムの攻撃が当たるようになったな。


『おいっ!? どうなってんだよ!』

『知るがぁ?!』

『ちょ!?』


 うーん、割とあっさり終わりそうだな。何と言うか復讐って感じはあまりしないような。


『何が起きているんだよ!?』


 いきなり倒れた仲間に最後に残った男は同様しながら自身に向かって来るジェルスライムを雑に倒して行く。


『ぉぐっ……あ? ゥサ……ギ?』


 倒れている内の1人が小さく声を上げている。うさぎ、と言っているところから、アサシンラビットの姿を見つけたようだが、どうしてこんなタイミングで気付くんだ?


『あ、ぐべっ!』


 最後の1人もアサシンラビットの攻撃によって地面に倒れた。しかし、先ほどまで攻撃していたジェルスライムが突然動くのを止め、そしてアサシンラビットが倒れた男たちの前に現れた。

 男たちは目の前に出て来たウサギを見て、自分たちがあのウサギにやられたことを理解したようだ。


 ああ、そういうシチュエーションなのか。アンゴーラに関係する復讐イベントなのだからこういった感じになったのかね。


 そして、アサシンラビットは目の前の男たちを睨みながら後ろ足で地面を蹴り、音を出し始めた。

 すると、一時的に動きを止めていたジェルスライムが男たちに向かって行く。麻痺の状態異常を受けて動けない男たちは恐怖に染まった表情を浮かべながら、なすすべなくジェルスライムの大群に飲み込まれていった。


 殺し方がえぐい。


 アサシンラビットの足ダンは、たしかウサギがストレスを感じている時にする行動だったか? 何ていうのかは忘れたがそんな感じの行動だったはず。

 いや、それにしても動けない相手を徐々に殺していくとかえぐいわ。ジェルスライムだったからあんな感じになったんだろうけど、他のモンスターだったら甚振られながら殺されるみたいな感じになったのだろうか。


 男たちに群がっていたジェルスライムが散り散りになっていくところを見て、あいつらが死に戻りしたことがわかった。


 まあ、とりあえずこれであいつらはダンジョンの外に移動しただろう。

 もしかしたら、死んでもまた来るかもしれないって考えていたけど、あんな死に方したらさすがにもう1度このダンジョンにってことは無いだろうな。


 とりあえず今回の件はこれで終わりだろう。

 隣でまだモニターを眺めているアンゴーラを確認しながら、俺は次にする事を考えていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る