第76話 徘徊モンスター

 

 アンゴーラが出したウィンドウに映っていたのは4人組の男。未だ1層目のスライムたちと戦っているようだが、難なく倒せているので2層目には行けそうだな。

 しかし、戦いながら話している内容は結構荒っぽい。


 話しを聞いている限り、どうやら珍しいアイテムやモンスターを求めてこのダンジョンへ来たようだ。

 しかし、第2エリアに在るようなダンジョンに普通、そんな物があるようなことはそうそうないと思うが、4人組は確信めいた感じの会話を続けている。


「アンゴーラ。本当にこいつらであっているのか? どう見てもペットなんかを飼っていたような連中には見えないし思えないんだが」

「何を言っておるんじゃ? あ奴らが妾を捨てた理由は売れないからだったんじゃぞ! モンスターの事を商品としか思っていない連中じゃ、飼っている訳なかろう」

「あ、そう言う奴らね。なるほど」


 となるとアイテムも自分たちで使うというよりも売るのが目的か。道理でさっきからスライムを倒しながら愚痴を言っている訳だ。スライムからじゃあ、碌な素材やアイテムは手に入らないからな。


「それじゃあ、どうやってやり返すか。アンゴーラはどうしたい?」

「ぬう……。妾と同じ目に……と言いたいところじゃが」


 アンゴーラと同じ目、と言うと馬車から蹴落とす感じか。まあ、同じ感じには出来ないな。馬車の上ではないし足蹴にするにも、直接あの場には行けない。しかし、そうなると似たような感じにすることは可能……か?


「同じ目に遭わせるのは無理だな。だが、一方的にあいつらを打ちのめしてダンジョンから追い出せば似たような状況にはなるか?」

「む……まあ、確かに状況だけなら似ておるかもしれぬ」


 まあ、アンゴーラの時は死ぬ可能性があったけど、このダンジョンを追い出す程度じゃあ死なないんだよな。そこを見れば大分違うんだが、とりあえず方向性は決まったな。後はどうやってそこまで持って行くかだが。


『アナウンス

 特定の条件を満たしたため、一時的にダンジョン内に徘徊モンスターを設定できるようになりました。また、一時的に特定のモンスターを選択可能になりました』


 はい? えーと、あー、やっぱりこれってアンゴーラ関係のイベントなのか。一時的にってことはこのイベント的なやつが終わった後は設定できなくなるのか、それとも上手く行くと設定できるようになるのか。

 とりあえず、今これが出て来たってことは、これを使ってNPCたちを追い返せばいいんだな?


「あいつらは……1層目のゲートキーパーの少し前の所か。なら2層目に設定すればいいのか。いや、そもそも徘徊モンスターってことは特定の場所に設定できないのかもしれないな」

「何を言っておるんじゃ?」

「ん? あー、あんまり気にしないでいいぞ。とりあえず、あいつらを追い出すための方法が出来たってだけだしな。

 っと、アンゴーラ。ダンジョンの設定をするから設定画面を出してくれ」

「ふむぅ? まあ、わかったのじゃ」


 何を言っているのかわからない、と言った表情、ではなく口調のアンゴーラが出してきたダンジョンの設定画面を弄る。

 いくつかの項目の中に新しく徘徊モンスターの項目が出来ていたので、それを選択する。


 徘徊モンスターの設定は……ああ、やっぱり特定の層には置けない感じだな。5層ごとの範囲を指定して置くのね。という事は、今回は1~5層目に徘徊モンスを設定してあいつらがエンカウントするのを待つと。おそらく今回はイベントの一部だろうから確実にエンカウントするだろうし、深く考えないで良いよな。


 それで選択できるモンスターは……1種類のみと。たぶんこれもイベントだからかな。今選択できるモンスターがアサシンラビットとかいう知らないモンスターだし、どう考えてもアンゴーラ関係だろ。

 何と言うか、名前からして結末がわかりそうだな。まあ、あの名前のウサギじゃなかっただけマシか?


 1~5層に徘徊モンスターとしてアサシンラビットを選択する。何気に設定するのに1000DPも必要だった。代わりにレベルは高めだったが。

 それと、ちょうど同じタイミングで4人組が1層目のゲートキーパーを倒したところだ。


 1層のゲートキーパーはレアスライムとはいえ、100匹だしレベルもスライムよりも高めなんだが危なげなく勝ったな。NPCなのにそこそこ強いようだ。もしかしたらプレイヤーの平均よりは強いかもしれない。


「とりあえず設定は終わったが、どうなるかね」


 2層目に進むNPC4人組を眺めながら俺はそう呟いた。

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