第75話 ダンジョンに訪れるはNPC

 

 キャラメルをテイムしてから数日が経った。

 第4エリアの攻略も大分進み、既に見つかっているダンジョンも全てクリアした。


 一気に第4エリアを攻略したからか、俺のレベルが4も上がった。キャラメルは40まで上がったのだが、進化はまだ出来ていない。レア個体だからなのか、進化は45レベルのようだ。もしかしたらもっと上かもしれないけどな。


 シュラたちもレベルは上がっているが目ぼしい強化はない。何と言うか本格的にレベルが上がらなくなってきているんだよな。シュラなんて俺が4もレベルが上がっているのに2しかレベルが上がっていないし、ぷらてあや朱鞠は3だ。もしかすると今のレベルが今の俺のレベルに丁度良いところなのかもしれない。


 現在俺はミヨガダンジョンの奥で今後このダンジョンをどうするかを考えている。

 一応考えてはいるが、実現までは結構な時間が掛かりそうなんだよな。少なくとも俺のレベルがまだそれほどでもないし、テイムしているモンスターも4匹だ。


 このダンジョンを成長させていけば30層まで作れるのなら5層ごとにシュラたちを配置してダンジョンキーパーの役割を与えたいのだけど、数が足りないし、やっぱり今のレベルでは不安がある。


 とりあえずここ数日に課金して換金したFsで出て来るモンスターを増やしたのだが、下手に階層を増やしても管理するのが面倒だと思ったため、まだ階層は増やしてはいない。


 一応1階層目にでるスライムの数は倍にしたのだが、そもそもこのダンジョンに来るプレイヤーが居ない。第2エリアだからというのもあるだろうが、微妙に目立たない場所にあるため、アンゴーラが言うには素通りされたこともちらほらあるらしい。


「アンゴーラ」

「何じゃ?」

「このダンジョンって本当に誰も来ていないのか?」

「入って来た者はおらんの。入口まで来て確認していった者はおったが、そのまま踵を返して行ったわ」


 全く人が来ていないという訳でもないのか。しかし、目の前まで来てなんで入らずに戻って行ったんだろうか。


「その戻って行った奴はどんな奴だったんだ?」

「知らぬ。妾はダンジョンの中に入ってきた者のことはおおよそ把握できるが、それ以外は近付いて来たかどうかしか把握はできぬ」

「そうか」


 まあ、アンゴーラはダンジョンコアそのものだから、ダンジョンの中に侵入してきた奴を把握できても、それ以外はほぼ無理という事か。


「ぬ? 誰かこのダンジョンに侵入して来たようじゃの」

「本当か?」

「うぬ、本当じゃ……ぬ? あ……あいつらは、妾を捨てた……」


 うん? アンゴーラを捨てた? ああ、最初にアンゴーラが言っていた事か。たしか自分を捨てた者たちに復讐するとかなんとかの。

 え? そいつらが来てんの? NPCだろう? あ、いや、PMダンジョンの説明にNPCも来る可能性があるって載っていたような。


「本当にそいつらなのか」

「忘れる訳がないわ! 妾を足蹴にした上に馬車から叩き落した者じゃぞ!?」


 思いの外、捨て方に殺意があるな。イメージ的に置き去りとかだと思っていたんだが。アンゴーラがここまで恨むのも無理はないな。

 しかし、何でそいつらがこのダンジョンに挑んで来たんだ? 偶然にしては出来過ぎな気がする。もしかしたら、アンゴーラ関連のイベントなのか?


「ぐぬぬぬぬぅ!!」


 と言うか、アンゴーラが本気で今ダンジョンに入ってきたと言っていた奴らを憎んでいるようだ。まあ、やられたことを考えれば理解は出来る。

 しかし、アンゴーラの態度からそれほどまで復讐したいのか、と思ったんだが、俺が直接被害に遭っていないからそう感じるんだよな。もし、俺がアンゴーラと同じような境遇だったら、同じように憎むと思うし。


「アンゴーラはどうしたいんだ? 一応、ダンジョン内に住民が居る状態でも設定を弄ることは出来るし、あいつらに目に物を見せてやることは出来るぞ?」

「ぬ! ぬ……ぬぅ、確かにあ奴らにやり返したい気持ちはある。しかし、このダンジョンはすでにお主の物だ。妾の私情に付き合わせる訳には……」

「いいぞ、それくらいなら。俺の場合、設定を弄るためのFsはどうにでも出来るし、今やらないとあいつらがもう1度来るかなんてわからないだろう?」

「そうじゃが、そうなんじゃが。いいのかのう。お主には関係ない妾の事情じゃぞ?」

「関係ないって言っても、アンゴーラはこのダンジョンのダンジョンコアになっているんだから、俺と無関係って訳じゃないだろう?」

「そ、そうじゃな。いや、だが、しかし」


 もしかして、自分だけで復讐したいのだろうか。言葉だけなら単純に巻き込みたくはないだけに聞こえるんだが。しかし、アンゴーラだけで復讐は無理だろうな。少なくとも今の状態ではこの部屋からは動けないし。


 いや、この問答の時間が惜しいな。それに現状俺にはダンジョン内の状況は見られないし、どんな状況かもわからない。踏ん切りがつかないだけなら押し込めば受け入れるだろう。それでも拒否されるなら、それまでだ。


「グダグダこんな問答をしていても無意味だな。さっさとそいつらにやりかえすぞ」

「え?」

「とりあえず、そいつらの状況を教えてくれ。今どんな感じなんだ?」

「え、う、うぬ? こ、これじゃ」


 今まで意見を聞いていただけだった俺が、いきなり復讐するぞ、と言ったことでかなり戸惑った様子のアンゴーラだったが、拒否する素振りは見せず俺の目の前に30インチくらいのモニターウィンドウを表示させた。

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