第70話 PMダンジョンについて説明する

 

 未だに驚いている様子のイケシルバーだが、自分たちがまだ把握していない情報を俺が持っている、インスタントダンジョンには先がある、という事を把握したことで、いつも情報を渡している時よりも聞く姿勢がやや前のめりになっている。


「よもや、ではあるが、知っていることを教えて欲しいのう。出来る限りの報酬は渡すぞい」

「いや、まあ、報酬はいつも通りでいいんだが」

「そうもいかんよ。ただでさえインスタントダンジョンの情報が少ない上に、PMダンジョンの情報など、この話が始まる前に確認した掲示板には一切情報が出ていなかったのだぞ? その情報が何時もと同じ扱いな訳があるまいに」

「掲示板に出ていないって、単に秘匿しているだけの可能性もあるだろう」

「そうだとしても、こうやって情報を出してくれておるミヨさんは希少なんじゃぞ? 相応の報酬を渡してより良い関係を築くというのは、儂ら情報系クランとしては必要なことなのじゃよ」


 確かに、情報提供者は多い方が良いのはわかる。それに自分で言うのもなんだが、俺みたいにポンポン隠し立てることもなく情報を出す奴もそう多くないだろう。特にプレイヤー数が少ないテイマーとしても貴重だろうし、今後の事を考えればPMダンジョンについても、おそらく今一番情報を持っているのは俺だろうから、何かあって情報提供を辞められるのは困るだろう。

 まあ、それはわかるんだけどなぁ。


「別に報酬が微妙でも構わないんだけどな。俺としては報酬としてちゃんとした情報が手に入ればいいんだし、そこまで気にはしないぞ」

「そう言ってくれるのは嬉しいがのう。他の情報提供者と差をつける訳にもいかんでの」

「まあ、そうだな」


 と言うか、こんな感じの話前もした気がするな。何時だったかは忘れたけど。


「まあ、その辺りはいつも通りで良いよな。とりあえず、俺の把握しているインスタントダンジョンとPMダンジョンについての情報だけど……」



 俺の知っている範囲でイケシルバーに情報を提供する。それを聞いたイケシルバーは終始真剣な表情をしていた。時折、手を動かしていたのでウロボロスの仲間と連絡を取っていたのか、FSO内で使用できるメモ機能を使っていたのかもしれない。


「なるほど。なるほどの。インスタントダンジョンは攻略するまで成長し続けるダンジョンと」

「そうだな。まあ、攻略のしやすさと報酬の事を考えれば、適度に成長させてから攻略するのが望ましいだろうな。そこまでインスタントダンジョンを放置できるかどうかはわからないが」


 普通のプレイヤーならダンジョンを見つけしだい攻略するものだろうし、成長しきるまで見つからない、という事もFSOのプレイヤーの多さを考えればそうそうないだろう。その状況でインスタントダンジョンを放置して適度の所まで成長させる、というのは至難と言うかほぼ不可能だろうな。そもそも、その適度のところ、というのを検証するのも相当難しいだろうし。


「そうだの。おそらくクラン総出で出張って、他のプレイヤーがインスタントダンジョンに入れないようにする必要があるだろうのぅ」

「うわ。そうするのって、迷惑プレイヤーどころか迷惑クラン扱いされるんじゃないか?」

「そう言われる可能性は高いのぅ。掲示板などで情報を流しても見ないプレイヤーは多いじゃろうし、態と向かって来る者も出そうじゃ。それに他のプレイヤーのプレイを阻害するというのはしたくないしのぅ」

「ああ、そうだな。ま、その辺の検証の方法はそっちで考えてくれ」

「ふほほ、そうじゃの」


 インスタントダンジョンの検証に関しては、インスタントダンジョンの攻略の数を熟せばある程度は目安が出るとは思うけどな。それまでにどのくらいの時間が掛かるかはわからないけどさ。


「あとはPMダンジョンについてじゃが、これも検証が難しいのぅ。ダンジョンコアの欠片の使い道がわかったのは良かったのじゃが、そもそもウロボロスでもダンジョンコアの欠片は10個も集まっていないのじゃ。メインでダンジョンを検証している者たちは何度も攻略しているのじゃがな」

「あーまあ、俺はそもそもLUKが高いし、幸運系のスキルも持っているからなぁ。おそらくその差だろうな」


 流れ星の奴は違うとして、激運とドロップ率増加のスキルの影響がもろに出たんだろう。このスキル、現段階で取得する方法は見つかっていないようだし、確実に普通の取得方法で取得できる奴ではないだろうからな。


「そうじゃろうな。ミヨさんもかなりの回数、ダンジョンを攻略しているようじゃが、人数の差がある以上、こちらの攻略回数が少ないという事はないじゃろうし」

「だろうな」

「話を聞く限り、クランでPMダンジョンを持ちたいのじゃがのぅ。それはいつになるのやら。とりあえず、一度ミヨさんのPMダンジョンを見に行きたいのじゃが」

「それはいいが、さすがに一番奥には行けないと思うぞ? それに攻略されるのは困るし」

「確認したいだけじゃからな。攻略はするつもりはないし、無理に一番奥に行きたい訳でもないぞい」


 とりあえず、時間が合う時にイケシルバーたちウロボロスのメンバーが数人、俺が管理しているPMダンジョンである、ミヨガダンジョンに来ることになった。

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