第57話 リアル回・1
デバイスからの接続が切れて視界がデジタル上の物から、現実の物へと移り変わる。完全に視界が回復してから起き上がり、デバイスの上から移動する。
寝ているのとは違い、フルダイブ中は寝返りを打たないので6時間もプレイしていると体が硬くなる。まあ、がちがちに硬くなるという訳でもないので、軽く伸びをする程度で問題なく体が硬くなった感じは大体拭える。
今回は伸びだけでは物足りなく感じたので軽くストレッチをしてから、デバイスが置いてある部屋から出る。
ここ1月ほど同じようなサイクルで生活しているので、タイミング的に時間は18時を少し過ぎた時間だろう。実際にリビングの壁に掛かっている時計を見れば18時15分を指していた。
そして、いつも通り昼・夕で契約している弁当宅配サービスから届けられている弁当を玄関まで取りに行き、それを食べる。
特段美味しいわけではないが、十分味の良い弁当をぱくつく。
俺は別に食べ物にこだわりはないのだが、この手の宅配弁当は質の良いところ以外、高層マンションへの宅配を行っていないので、選択肢は殆どなかった。まあ、ここまで運んできてくれるなら、不味くなければどこだろうとありがたいことに変わりはないが。
夕食の弁当を食べ終わった後にPCを開いて、メールの確認をする。
スマホでも確認は出来るが画面の大きさからモニターで確認した方が見やすいし、わかりやすいので毎回PCで確認している。
確認したところ10通ほどの新規メールが届いていた。その内、マンション管理会社からのメールが2通、他はセールスのものだった。
管理会社からのメールの内容は、新規の住民がこのマンションに入居したというお知らせだ。
他のマンションではどうなのかはわからないが、俺がこのマンションを購入した際に契約した管理会社は新規で入居者が入ってきた場合、俺に知らせが届くようになっている。まあ、俺はいつの間にかマンションの住民が増えていたとしても気にはしないのだが、マンションの持ち主である俺に一切連絡をしないのも問題だ、という事で、このようにメールが届くのだ。
ふむ、13階のDに新規入居者が入って、え? この一つ下の階に新規で入居した人が居るのか!? 駅近最上階一つ下の階だから、かなりの額だったはずなのだがよく入ったな。このマンションって賃貸ではないし、最上階でもないのに億円越えだったから当分は入居者が居ないと思っていたのだけど。
そもそもここは都内ではない。都内ならば金持ちは多いだろうしあの値段でも購入する人はそれなりに居ただろうが、さすがに首都圏ではあるが都会とも言えないこの地域で買う人が居るとは思っていなかった。
まあ、周囲に迷惑をかけるような人物でなければ誰でもいいか。マンションの持ち主からすれば、空きがあるよりも埋まっていた方が良い訳だからな。
メールの確認を終えてPCを閉じ、デバイスと連携しているスマホから課金専用のアプリを開き、課金上限金額まで電子マネーを振り込んだ。
本当ならデバイスでも課金できるようにして欲しいところだが、現状出来るようにはなっていない。
フルダイブ用のデバイスでゲームが出来るようになったころは、デバイスから課金が出来たようだが、フルダイブ状態での課金はどうやらゲーム内通貨を使用する感覚と似てしまうらしく、その結果、際限なく課金してしまう人が多く現れてしまった。
その上、アバター複製事件と重なり、結果として、セキュリティ強化と安易な換金を抑制するために、デバイスから直接課金が出来ないようになったのだ。
まあ、俺が何を言おうと何が変わる訳でもない。それにゲーム内マネーと同じようにリアルマネーを使いそうになる感覚は分からなくはないので、一応は納得している。面倒なことに変わりはないのだけどな。
一日の上限である金額を課金した後は、少しの間ゆっくりして、またFSOへログインした。
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