2章プロローグ アンゴーラ

前語り ぬぐぁあぁぁぁっ?! の後 上

 

 えぇ……。ダンジョンをクリア扱いになったのはいいけど、状況が呑み込めない。いや、それよりもあの光の影響で視界が真っ白に染まったままだから、周囲がどうなっているのかがわからないな。みんな無事なのか?


 アナウンスで、俺がこのダンジョンを支配下に置いたと言ったってことは、アンゴーラはどうなった? まさかあの衝撃で死んだのか? それとも俺がダンジョンを乗っ取ったことで消滅してしまったのか?


 しだいに融合したダンジョンコアとアンゴーラがぶつかった際に発した光の影響が収まり、視界が回復してきた。


『なんじゃ今のは。妾のダンジョンコアが光り出して……』


 ようやく見えるようになった視界の中に、多少衝撃で飛ばされていたようだけど、驚きで固まり腹天状態のアンゴーラの姿が確認できた。


 大分混乱しているようだけど、どうやら生きていたようだ。良かった、とは思うけど、結局さっきのやつは何だったのだろうか。


 ≪ダンジョンコア:アンゴーラに触れてください。

 プレイヤーメイドダンジョンについての説明が表示されます≫


 はい? ダンジョンコア:アンゴーラって、え? じゃあ、あれってアンゴーラがダンジョンコアと融合したから出た光なのか?


 とりあえず、目の前に出ているアナウンスウィンドウに従って、アンゴーラに触れてみるか。


 触れるためにアンゴーラに近付いて行く。それに気づいたアンゴーラが、はっと我に返りすぐさま近づいて来ていた俺に対して警戒態勢を取った。


『なんじゃお主。何で近付いてくるのじゃ、ってのわ?!』


 しかし、俺よりも近くに居たぷらてあがアンゴーラの見えない位置から近付き持ち上げた。警戒していなかった相手にいきなり触れられたのでアンゴーラが少しだけパニックになっているが、まあ問題は無いだろう。


「ぷらてあ。そのままアンゴーラを確保しておいてくれ」

「わかっ…た」


 ぷらてあに指示を出してアンゴーラを逃がさないようにしてから、触れるために手を伸ばす。何処に触れればいいのかはわからないため、現状触りやすい位置にある頭でいいかと思った際、アンゴーラの額に先ほどまでなかったはずの黄色い宝石のような物が付いていることに気付いた。


「アンゴーラ。お前、額に宝石なんか付いていたか?」

『何を言っておる! そんなものは付いてはおらぬわ!』


 という事は、さっきのダンジョンコア関連で付いたってことか? アンゴーラが知らなかっただけで最初から付いていた可能性はあるけど、それならさっき対面している間に見ていただろうし、無かった可能性の方が高いよな。


 うぅむ、一回触って確認するのもいいかもしれないな。もしかしたら、触った瞬間に取れるかもしれない。


 とりあえずアンゴーラの額にある宝石のような物に触れてみる。


『お主何をしているのじゃ!?』

「うーん、普通の宝石っぽいな。取れそうな感じもない」

『だから何をぬにょ?!』

「ん?」


 なにかアンゴーラの様子がおかしい? 今まで微妙にもがいていたというのにいきなり動かなくなった。死んだような感じではないのだけど、抱えているぷらてあや近くで見ていたシュラも不安そうにアンゴーラの様子を窺っている。

 朱鞠は気にしているかどうかはわからない。さすがに蜘蛛の目ってどこを見ているかわからないんだよな。だからアンゴーラを見ているのか、見ていないのかもわからない。


『あ…お…ぐ』


 これ、大分まずくないか? アンゴーラから漏れて来る声からして、何かダメージ受けてそう。やってしまったことはどうにもならないけど、回復魔術を使えるように準備しておいた方が良いのだろうか。この状態のアンゴーラに聞くかどうかはわからないけど。


『えあ? うぬぉ……う、嘘じゃ。妾がダンジョンコアと融合したなど信じとうない。じゃが、これは……』


 どうやら無事?のようだな。目の前の虚空を見つめて何やらブツブツ呟いているが、もしかして俺と同じようにアナウンスウィンドウでも目の前に出ているのだろうか。

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