第41話 慣れる、噛まれる
飛び掛かって来る蜘蛛を躱す。
躱すと同時に攻撃を入れようとしたが、蜘蛛の脚が邪魔をして体部分に攻撃を当てられない。
この蜘蛛自体の脚はアシダカグモのように長いわけではない。しかし、1メートルを超える体格に見合った脚の長さを持っているため、俺の腕では側面から攻撃した場合リーチが足りない。
一応脚には攻撃を当てられているので、ダメージ自体は与えられているが、量自体は微々たるものだ。
このまま足を重点的に攻撃することで部位破壊が発生する可能性もあるが、サイズ的に部位破壊ではなく怯ませるのが精々な気がするな。
暫く、攻撃を躱しながらちまちまダメージを与えていたことで目が慣れて来た。
この蜘蛛の移動速度は速い。しかし、目で追い切れる速さではあるし、体当たりも躱せる程度の速さだ。
最初にライトショットでも当てられないと思ったが、目が慣れて来た今なら回避したタイミングなら当てられないことは無いだろう。
そもそもこの蜘蛛の一番厄介なところは速さではなく、不規則に飛び跳ねている事だ。フェイントではないが距離が開いていると、ほぼ確実にこちらの遠距離攻撃はかわされてしまう。
なので、先ほどからちまちま攻撃していたように、攻撃を躱した瞬間に近距離で魔術を放てばいいのだ。
「っ! ライトショット!」
「シャギッ!?」
ライトショットが体に命中したことでビッグスパイダーが軽く怯む。
よし、当たるな。しかし、軽くとはいえライトショットで怯むという事は、魔術系の攻撃に対する耐性が低いのか?
「たいほぅ…っです!!」
蜘蛛が怯んだ隙を見逃さず、シュラが攻撃を放つ。
大砲か。うーん、やっぱりシュラの言語能力、若干上がっているよな? これも今まではっきりと言えていなかった単語だし。レベルが上がったのか? 階層を移動する前にステの確認をしておくべきだったな。
シュラの攻撃が蜘蛛に命中したことで与えたダメージは、総量の10%を少し超えるくらい。シュラの自損ダメージは5%には届いていないくらいか。
自損によるダメージは数値だけ見ればそこまで大きくはない。しかし、このダメージは攻撃を外しても発生するので、軽く見ることは出来ない。
事前にこの攻撃は必ず当たると思う時だけ使え、と言いつけてあるので乱発はしていないが、ボス戦などでは小さなダメージでも致命傷になる可能性があるので気が気ではない。
蜘蛛が再び飛び跳ね始めたので、攻撃をして来たら直ぐに躱せるように構える。
蜘蛛の攻撃を躱してライトショットを当てていく。
時折、体当たりと同時に噛みつきて来るような動作をしているので、噛まれたらスキル欄にあった毒牙の効果で毒状態になるのだろう。
「ですぅっ!?」
「シュラ!?」
噛みつかれないようにしなければ、そう考えていた時によりによってシュラが噛みつかれた。
噛みつかれたことで一時的に動けなくなったシュラに対し、蜘蛛は拘束しようとしているのか体を揺らしながら体勢を替えている。
それを確認した俺は直ぐさま蜘蛛の行動を止めるために走り出した。
「ライトショット!」
「シャギィッ!!」
近付きながら攻撃したのだが、先ほどとは違い、ライトショットが当たったにも拘らず蜘蛛は怯まない。
「お…らぁっ!!」
「シャギュァッ!?」
怯まなかった蜘蛛目掛けて走りの勢いそのままに殴りかかる。リアルだったらこんなことできないなと一瞬思いつつも攻撃は蜘蛛に当り、蜘蛛は悲鳴を上げ、ひっくり返りのたうち始める。
「アンチポイズン! …ヒール!」
のたうっている蜘蛛を一旦無視し、シュラに掛かっている状態異常を回復させた上でHPも回復させる。
「大丈夫か、シュラ!」
「だいじょ、なのです」
毒は直したしHPも回復させたから大丈夫なはずだが、確認のために声を掛ける。シュラは大丈夫だとアピールするように腕を伸ばし返事をしてきた。
「大丈夫そうだな。じゃあ、後はこいつを仕留めるだけだ」
「です!」
蜘蛛はまだのたうっている。そろそろ起き上がってきそうだが、残りのHPは30%を下回っているので、ここから追い打ちを掛ければ起き上がる前には倒せるだろう。
そして蜘蛛が起き上がる前に、俺がライトボールとライトショットを放ち、シュラが腕をハンマーに変えて攻撃したことで蜘蛛のHPが全損し、ポリゴンへと変わっていった。
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