第40話 ボスはデカ蜘蛛

 

 やっと終わった。

 いやぁ、1対1体が弱いと言っても大量に来ると精神的に疲れる。うわ、SPが半分以下になっているんだけど。ゴブリンのモンハウでもここまで減らなかったぞ。どれだけ数が居たんだよ。


 シュラも特別苦戦していた感じはないし、素材的にはかなり集まったから結果だけ見れば悪くはなかったんだけどな。


 周囲を見渡す。

 あれだけの数を倒していたにも拘らず、他のモンスターが一切出て来なかったことからして、この階層には他の種類のモンスターは居ないのかもしれない。


 それと、モンハウをクリアしたにも関わらず報酬らしき影もない。いや、ゴブリンダンジョンも最初は黒曜石が報酬だと思っていたけど、あれ以降モンハウをクリアした後に何も出て来なかったから、ここでも無いのかもしれない。


 しかしイケシルバーからこのダンジョンのメインはプレンテだと聞いていたんだが、蜘蛛ばかり出て来る。別のダンジョンに来てしまったのだろうか?

 情報に関してイケシルバーが嘘を吐くとは思えないから、その可能性も十分あるだろう。


 さて、子蜘蛛も倒したし、ボスの場所まで進もう。

 正直、蜘蛛の巣が張り巡らされた樹々の中を進むのは気が進まないけど、ボスと戦わないとダンジョンをクリアした事にはならないからな。


「シュラ行くぞー」

「……なのです」

「ん? どうした?」


 シュラに声を掛けたのだけど、反応が鈍い。後ろに居るはずのシュラを確認すると戦闘態勢を維持したまま、森の一点を見つめていた。


「あっちに何かある―」


 見つめている先に何かあるのかシュラに問いかけた言葉を言い切る前に、その先の森の中から何かが勢いよく飛び出してきた。


「シュァァァアアー!!」


 森の中から飛び出してきたのは、今まで出て来た蜘蛛よりも1回りどころか2回り近く大きな蜘蛛だった。そいつは出て来て早々に俺たちに向かって、前足を上げて威嚇の姿勢を見せている。おそらく先ほど倒した子蜘蛛の親という事なのだろう。


「…あー、なるほど、連続戦闘なのね。完全に戦闘が終わった訳じゃないから、シュラは戦闘態勢を解かなかったと」

「です」


 デカい蜘蛛。まあ、リアルの蜘蛛をそのまま巨大化させた感じよりも、マイルドに巨大化させた見た目なのでそこまで気持ち悪い感じは無いが、嫌な人は嫌だろうな、と思える程度には虫っぽさは残っている。


 ただ、子蜘蛛と一緒に戦うことになっていたら、対処しきれなかった可能性もあったんだろうけど、単体で出て来たのならそこまで苦戦する気はしない。


 そう思ったところで、蜘蛛は威嚇を止め、こちらに向かって高速で移動し始めた。


 デカい分、移動する際の脚の動きが見えやすくなっていて少し気持ち悪さを覚えるが、直線的な動きなら対処は簡単…。


 楽勝だな、と思ったところで、蜘蛛は不規則に飛び跳ねながら距離を詰め始めた。


 うわぁ。超面倒な動きを始めたんだけど。ぴょんぴょん不規則に跳ねられると、いくら弾速が早いライトショットでも当てるのが難しい。



[(ダンジョンボス)ビッグスパイダー LV:18 属性:毒]

 HP:1450

 MP:440

 総合攻撃力:106

 総合防御力:96

 スキル:体当たり・跳躍・毒牙・不明



 咄嗟に看破した結果、このような情報を獲得した。


 ふむ、ダンジョンマスターではなく、ダンジョンボスか。

 ダンジョンボスと出ている以上、こいつを倒せばクリアになるだろうけど、ホブゴブリンと違いダンジョンボスとなっている理由は何だ? …いや、それを考えるのは後にしよう。


「シュラ! こいつは毒攻撃持ちだから気を付けろ。なるべく攻撃は食らわないように!」

「なのです!」


 総合攻撃力だけを見れば、1・2層のゲートキーパーだったフォレストモスよりも低いが、総合防御力は上だし毒属性攻撃を持っている以上、厄介な相手に変わりはない。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る