第39話 くもクモ蜘蛛…キモ

 

 蜘蛛を倒した後に出てきた宝箱の中身は予想通り魔石(小)のみ。

 正直別の物にして欲しいところだが、現状魔石が手に入るのはダンジョンでゲートキーパーやボスを倒すか、スライムを倒す以外には無いので俺以外のプレイヤーにとっては問題ないのかもしれない。


 宝箱の中身を回収したので、転移陣を使用し次の階層に進む。



 3層目は1、2層目と同じ森。しかし、若干薄暗く湿っぽい。


 ……訂正。さすがにこれは自分を誤魔化せない。これは同じ森ではない。

 目の前に広がっている光景は確かに森だ。しかし、全体的に白みがかっているが、葉の白い樹が生えている訳ではない。


 樹が白く見えている理由は、蜘蛛の巣。そう、蜘蛛の巣だ。しかもちょっと先に卵のうらしき白い球体が見えている。

 もう面倒なことになる気配しかしない。


「モンハウ再び」

「…です」


 幸いと言うべきか、ゴブリンの時とは違い、おそらく出て来るのはスモールスパイダーだけだろう。そうだとすれば攻撃パターンは1種類のみのはずだから、対処はしやすいはず。


 懸念を上げるとすれば卵のうのサイズからして100以上のスモールスパイダーが出てきそうなことくらいか。


「先に進むならあれを対処しないといけないんだよな」

「なのです」


 面倒だな。いっその事、火魔術でも取得するか? レベルが上がったからスキル取得可能欄が1枠空いているし。まあ、今取ったところでスキルレベルが低くて使い物にならないだろうが。ああ、いや、この階層が湿っぽい理由は火魔術対策か。

 さすがに楽はさせないと言うことだろう。


「シュラ。危なくなったら声を上げろよ。死んだらそれまでだからな」

「です」


 まあ、最悪シュラが死にそうになったら、俺が先に死にに行くけどな。


 俺が先に死ぬと言うのは、テイムモンスは死んだらそれまでだけど、テイムモンスの主が先に死んだ場合、プレイヤーがリスポーンポイントで復活すると同時に、テイムモンスもそこに転送されるからだ。それを利用してテイムモンスの死を回避する小技的なやつだな。


 自殺することが小技として扱われているのはどうかと思うが、テイムモンスが死にそうなところを緊急回避できるので、有用な手段ではあるんだよな。


「さて、じゃあ行くか」

「っかま、です!」


 ん? 聞いたことのない掛け声なのだが。かま? いや…鎌か? そう考えながらシュラの方へ視線を向ける。そして、予想のとおりシュラの腕が今まで1度も見たことのない鎌の形状に変形していた。


 あの、シュラさん? 私、そんな形状変化知らないのですけど? 今までハンマーとこん棒、小型の大砲だけだったのに、なぜいきなり鎌なのか。


「です!」


 俺の疑問を余所にシュラが卵のうらしき物目掛けて走り出した。シュラだけ先に行かせる訳にもいかないので俺はシュラの後を追う。


 特定の範囲内に入ったのか、卵のうと思われる球体が脈動し、中から大量のスモールスパイダーが現れた。


 うへぇ、キモイ。数匹程度なら何とも思わないが、さすがに数十匹とか百匹を超えるような数がぞわぞわと言うかわさわさと出てくれば、キモイという感想以外何も出て来ない。

 ゲームの中だから鳥肌が立つことは無いけど、リアルの体で鳥肌が立っていそうだな。


 蜘蛛の子を散らすように、マジで散ってくれればいいんだが、残念ながら蜘蛛たちの狙いは俺たちだ。散ることは無く一直線にこちらに向かって来る。ある意味、変な方向に散って気付いたら背後に、みたいな展開がなさそうなのはいい事ではあるんだが。


 寄って来るスモールスパイダーを殴り倒して行く。うーん、1撃だな。

 ああ、よく考えたらこの蜘蛛たちは生まれたばかりだから、レベルは1なんだよな。道理であっさり倒せている訳だよ。


「おらおらおらおらおら!」


 寄って来る蜘蛛たちを殴り続ける。倒しても倒しても寄って来る。若干、無双ゲーになりつつあるな。


「ですですですですです!」


 真似しなくてもいいんですよシュラさん? あくまで掛け声なので、と言うか、その掛け声だとカタカナに変換したらなかなかヤバイ気がするんデスが。シュラにそんな意図は無いだろうけどさ。


 ついでにシュラの鎌は切るより刺すのがメインのようだ。刺し殺した蜘蛛がポリゴンになって消える前に次の蜘蛛を刺しているから、若干串焼きの焼く前みたいな感じになっているが。



 そうして10分程戦い続け、ようやくスモールスパイダーを全滅させることが出来た。

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