第35話 通報 or GMコール
基本的にFSOのダンジョンには一度に入れるプレイヤーの数に制限はない。それに、パーティーを組んでいない複数のプレイヤーが同時に入った所で、一緒に攻略しなければならないような構造にもなっていない。
ソロで入ればソロで、パーティーで入ればパーティーでダンジョンをクリアすることになっている。
なので、先にや後になんて順番は存在しない。
ついでにこのダンジョンは既に攻略済みなので、ダンジョンクリアの競争なんてものも存在しないし、そもそもFSOのダンジョンは最初にクリアしたとしても特別な報酬がある訳でもない。
「聞いてんのかぁ?」
まあ、こいつらの目的はありもしないルールで脅迫して、ここに来たプレイヤーからアイテムやらFsを脅し取る事だろうな。
ぶっちゃけこいつらに関わる必要は無いし、話す必要もない。無視してさっさとダンジョンの中に入ってしまうのが正解だろう。ああ、でもGMコールって程でもないから通報くらいはしておくか。
「おい! 無視すんじゃねぇよ!」
「俺らが先に来てたんだぞ! 順番ぐらい守れよ!」
「はぁ…」
ため息が漏れる。本当にこういった輩は何処にでもいるよな。こういう人に嫌がらせをすることを楽しみにしているプレイヤーってのは対処に困るんだよ。レッドネーム化していればこっちから攻撃して黙らせられるんだが、そうでないと攻撃する訳にはいかないし。
「てめぇ! その態度は何だ!」
俺がため息を吐いたのが気に食わなかったのか、絡んで来ていたプレイヤーの1人が掴みかかって来る。そして、俺の肩に触れる直前にセクシャルガードに阻まれ思い切り弾かれた。
「いってぇ!? てめぇ!」
いや、これは俺のせいではないし、完全に自業自得だろ。ああいや、こう言う奴らにとってそういうのは関係ないか。何かにつけていちゃもんを付けるのがこう言う奴らのやり方だしな。
だけど、これで通報ではなくGMコールをする踏ん切りがついた。さすがに直接掴みかかられたら通報だけで済ませるつもりはないからな。
『どうなさいましたか?』
「第2エリアにある新緑のダンジョン入口で複数のプレイヤーに絡まれているので対処をお願いします。それと1度ですがセクシャルガードが発動しています」
『少々お待ちください。確認します。……他のプレイヤーからも複数の通報が入っていましたので、こちらで対処いたします』
ふむ? 他のプレイヤーから通報があったという事は、こいつらはもっと前からここで陣取っていたのか?
「てめぇ! 今何し―」
俺がGMコールしたことに気付いたプレイヤーたちが掴みかかろうとしてきたが、その前に動きが止まり、そして直ぐに姿が消えた。おそらくGMの判断により別空間に飛ばされたのだろう。
今回、GMがここに来なかったのは気になるが、他のプレイヤーが居ないから見せしめとして使えないからか? それとも単に忙しいからなのか。
まあ、気にしても意味はないから、さっさとダンジョンの中に入るか。シュラも何かつまらなそうにしているし。
ダンジョンの中に入ると、そこには森が広がっていた。
聞いていた通りではあるけど、ゴブリンが居たダンジョンに比べて1フロア当たりの面積が広い。一応このフロアにも壁はあるらしいけど、それでも1キロメートル四方くらいの面積はあるらしい。
まあ、1フロアが広い分、第2エリアのダンジョンとしては浅く、ゴブリンダンジョンと同じ3層目がボスフロアだそうだ。
フロアが広いから次の階層に移動できる場所を探し出すのは時間が掛かる。しかも、その場所はダンジョンに入るたびに変わるらしく、事前に調べていても意味は無いようだ。
なので俺たちもこれからしらみつぶしにこのフロアの中を探すことになるだろう。
という訳で、この森ダンジョンの探索を始めよう。
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