第29話 先の不安

 

 さてと、ここのギルドも使えるようになったし、今受けられる依頼も全部受けて来た。後は、近くのフィールドに出て、依頼を熟しつつ素材を集めてシュラのレベルを上げていくか。


 ああ、それからテイムスキルのレベルが10を超えたから2匹目もテイムできるようになったんだよな。なら、それも同時に探すことにしよう。




 町の近くのフィールドでモンスターを狩る。周囲には別のプレイヤーは居るが、そこまでの密度ではないので順調にモンスターを狩ることが出来ている。

 この辺りに出て来るモンスターは、犬や狐のようなモンスターと、レベルが大幅に上がったスライムが大半である。たまにトカゲやもぐらのようなモンスターが出て来るが本当にたまにであり、割合で言うと100匹に1匹居るかどうかの数しか出て来ない。


 ふむ、この辺りのモンスターのレベル帯は10前後と言ったところか。第1エリアやダンジョンと比べても大分高くなっているな。とは言え、だからと言って苦戦することは無いけどな。


 1時間もフィールドで戦っていれば、依頼の方も、採取系以外は全て完了していて後は報告をすれば依頼は達成される状態になっていた。


 そして残っている採取系の依頼で必要なアイテムが採取出来る場所に向かう途中も、育成スキルで使用する素材を獲得するためにモンスターを狩りながら進んで行く。


「シュラ! そっちに行ったぞ」

「です!」


 フィールドに居た犬型のモンスターが1体、シュラのいる方へかけていく。どうやらこの犬型モンスターは群れでエンカウントしやすいようで、依頼を熟している最中も何度も群れとの戦闘になっている。


 既に、俺は3体引き付けているので、俺の横を通り抜けてシュラの方へ攻撃を仕掛けていったその犬を止めることは出来ない。

 しかし、こうなったのは初めてではないので、慌てることなくシュラに指示を出して自力で対処させる。


「ぁんまー、なのです!」


 舌足らずといった感じでシュラがそう言うと、シュラの右腕がスライム魔法によってハンマーの形を形作り、それを迫ってきた犬型のモンスターに向かって振り下ろす。

 そして、そのハンマーはモンスターの頭にクリーンヒットし、一撃でポリゴンになって消えて行った。


「っです!」


 うーん、ドヤ顔だ。可愛い…可愛いんだが、第2エリアに入ったあたりから何となく気付いてはいたけど、やっぱりさらに言葉に出来る範囲が増えているよな。


 最初は、の!だけだったのが、第2エリアに入る前には、なのです!まではっきり言えていたし、今回ははっきり言えている訳ではないけど、ハンマーって言おうとしているからな。学習…ではないだろうけど、成長しているという事なのだろうか。


 ……最終的にはプレイヤーと同じように話せるようになったりするのか? 


 そうなったら殆どNPCと同じ……死んだら消える、って考えると戦わせ辛いんだが! いやマジで戦わせられなくなりそうだ。

 いや、今更何を言っているんだという感じはあるだろうけどな。実際にその可能性が目の前に出て来ると、実感がわいてくるんだよ。それに最初はここまで話せるようになるとは考えていなかったからな。


 まあ、俺がそうならないように立ち回ればいいんだろうけど、どうにもならない時もあるからな。テイムモンス用の蘇生薬とかそのうち見つからないだろうか。そうすれば…。


「です?」

「ん? ああ、すまん。戦い終わったから次の場所に移動しような」


 まあ、そのなるとはまだわからないし、今考えたところでどうにもならないだろう。


 それで、既に俺の方も戦っていたモンスターを倒し終えているし、狩り続けた所為なのか周囲にリポップしてくるモンスターの数が減って来ているようなので、別の場所に移動して狩りを続けよう。

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