第20話 ダンジョンはダンマスの家?


 当たり前だがホブゴブリンの攻撃範囲は広い。推定2メートル程の大きさでそれに合わせたサイズのこん棒を振り回すから、半径2メートルちょいくらいはこん棒が当たる範囲だろう。


 まあ、態々ホブゴブリンの攻撃範囲に入る必要は無い。見るからにこん棒攻撃一辺倒なホブゴブリンの戦闘スタイルに俺が合わせなければならない理由など、これっぽっちもないのだから。



 適切な距離を保ちながら光魔術を放ち、距離を詰められそうになったら急いで離れる。それを何度も繰り返すことでホブゴブリンのHPは直ぐに10%を下回った。


 楽だな、ホブゴブリン。さっきのって、まあ、あれも集団で圧殺されかけただけだから1対1なら強くはないしな。ボスとはいえ、それの上位種的な存在である以上、劇的に強くなる訳でもないか。


「ゴアァガァ…」

「ん? なんだ?」


 後2~3発くらいで倒せそうだなぁ、と考えていたところで、ホブゴブリンが今まで振り回していただけのこん棒を上に掲げた。


 叩きつけ? いや、距離があるしな、地割れ攻撃…はさすがにホブゴブリンが出来るような技ではないし、衝撃波系の技を放つ特殊行動か?


 とりあえず今まで見たことのない動作をしているホブゴブリンを警戒して直ぐに動けるように体制を整える。


 って、別にホブゴブリンの行動を待つ必要は無いよな。さっさと攻撃しよう。


「ライトボー…」

「ゴォガッ!」


 俺がライトボールを放つよりも数瞬先にホブゴブリンは手に持っていたこん棒をこちらに向かってぶん投げて来た。


 投げられたこん棒は俺が遅れて放ったライトボールを何事もなかったように消し飛ばし、唸りを上げているかのような勢いで俺に迫る。


 待て、これ食らったらHP全快でも即死するくらいの威力あるんじゃないか!?


「ちょ、っそぉいっ!」


 俺は全力で横に飛び、飛んで来たこん棒を避ける。そして避けて直ぐにこん棒は俺が元居た位置に着弾し、この空間に轟音を響かせてさらに向こうへバウンドしながら飛んで行った。


「ガアァア!!」

「ちょまっ!?」


 こん棒に気を取られていた隙にホブゴブリンが目の前まで迫って来ていて、俺に向かって攻撃を繰り出していた。それを身を捻って強引に躱し、ホブゴブリンから距離を取る。しかし、距離を取ってもホブゴブリンはすかさず距離を詰めて来る。


「何だよ、ホブゴブ。インファイトしようってか? 止めろよ、俺インドア派なんだよ!」

「ゴアアァッ!」


 攻撃を避け、逃げながらライトボールを放つ。心なしか先ほどよりもダメージの通りが悪い。おそらく、特殊行動の影響で耐久値が若干上昇しているのだろう。


「インドア派に接近戦を仕掛けてくんじゃねぇ! 多少は戦えるって言っても多少でしかないんだよ! お前みたいなアウトドア派に…ん?」


 いや、こいつってダンジョンマスターだよな? ダンジョンマスターにとってダンジョンは家みたいな物、だとすると…


「お前もインドア派だとぉ?!」

「ゴア? ガアァアッ!!」


 ホブゴブリンは俺がそう叫ぶと、は?みたいな行動を取ったが直ぐに攻撃に戻った。

 まあ、冗談はここまでにして真面目にホブゴブリンに攻撃をしよう。


「ライトボール! ライトショット!」

「ゴッガアッ!」


 光魔術2連発を食らうのはさすがに耐久値が上がっていたとしても手痛いダメージだったのか、ホブゴブリンの動きが鈍った。

 

 そして、さらにライトボールとライトショットを放つことでホブゴブリンは地面に倒れ徐々にポリゴンになって消えて行った。


『ダンジョンマスターとの戦闘に勝利しました! この戦闘による報酬が支払われます。

 初めてダンジョン(初級)をクリアしました。

 全プレイヤー中初めてダンジョンをクリアしました!

 称号を獲得しました!

 ダンジョンクリア報酬が発生します。おめでとうございます。

 ダンジョンをクリアしたため、ダンジョン入口への転移陣の利用が可能になりました』


 ああ、しっかりアナウンスされるのか。しかし、モンハウを除けば規模的に初心者向けの規模だからそうかもしれないと思っていたが、やっぱり初級扱いなんだな。


 報酬は…強制インベントリ行きか。いや、奥に宝箱があるからそれがダンジョンクリア報酬だろうな。インベントリに入っている物はホブゴブの討伐報酬だな。


 んー、そう言えばダンジョンマスターを倒したのだから、もしかしてこのダンジョンの消滅とかあるのか? それっぽいアナウンスが無いから崩壊しない可能性もあるが、俺がここから出たら消える? 残ってくれた方が素材獲得のためにありがたいんだが、どうだろうな。

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