第19話 ボス


 岩が消えた場所に残った物が気になったので起き上がり、それを確認しに向う。


「んん~?」


 確認しに行くと岩が落ちて来たような跡は一切なくなっていたが、そこには黒く光る小さな石がいくつか落ちていた。それを手に取って鑑定を使って確認してみる。


[(アイテム・宝石)黒曜石 レア度:2 Fs:2000]

 黒く輝く石。砕くと刃物のようになる事から武器として使われることがあるガラス質の石。FSOの世界では低級の宝石扱い。

 育成傾向:力・頑丈


 ほーん。黒曜石ね。あれか、確か大昔に槍の先端に使っていたやつだよな。まあ、説明文を読む限り同じような用途で使われている感じだな。ついでに育成傾向も表示されているから育成スキルで使うことも可能と。


 しかし、何で岩は消えたのにこれは消えなかったんだ? 消えたという事はスキルの影響で出て来たのだろうし、これも消えていないとおかしい気がするんだがな。もしかしてこのドロップアイテムを含めてスキルの効果なのか? 


 上を見上げて岩が落ちて来た形跡を探すが、岩が剥がれ落ちたような跡は一切なかった。そもそもダンジョンの中である以上、トラップ以外で落石が発生する訳がないんだよな。という事は先ほどの岩はスキルが作り出した物か、どこかから転移してきた物か。


 うーん。まあ、考えてもわかる訳がないんだけどさ。それに、スキルを消すにしても消さないにしても、先にダンジョンをクリアした方が良いだろう。


 辺りに落ちている黒曜石を全て拾い、先ほどのゴブリン軍団が出て来た先に向かう。


 そう言えば、モンハウをクリアしたのに報酬はないのか? 見る限りなさそうだが、まさかあれはモンハウではないのか? いやいや、まさかな。あんなに出て来たのにモンハウじゃないってことは無いだろ。


 周囲を見渡すも、それらしき影は見えない。


 まさか、モンハウではない? いや、ワンチャンダンジョンをクリアすれば追加報酬として出る可能性も。ん? 待ったもしかして黒曜石がモンハウ報酬の可能性もあるのか? むしろその方が自然と言うか、しっくりくるような。


 あー、そうだと思ったらそうだとしか思えなくなったわ。まあ、すっきりしたからいいか。




 ダンジョンのさらに奥へ進んでいると、さっきのモンハウがあった場所に比べれば狭い物の、そこそこ広い空間に出た。


 ゲートキーパーとの戦闘エリアか? それとも終点のボスエリアか。第1エリアのダンジョンだし、ボスエリアの可能性が高いかもしれないな。


『ボス:ダンジョンマスターとの戦闘エリアに入りました。ダンジョンマスターとの戦闘が開始されます』


 あ、やっぱりボスエリアだったのか。


 しかし、ダンジョン最深部のボスはダンジョンマスターで固定なのだろうか。前にやったゲームだとダンジョンマスターとは戦えない仕様で、ダンジョンをクリアするにはダンジョン最深部に居るダンジョンボスを倒すことだったんだが。FSOはダンジョンマスターを倒してもダンジョンそのものが消えない仕様でもあるのだろうか。


「ゴッガアアアアッ!」


 いつの間にか空間の中央に出て来ていたボスが雄叫びを上げることで今いる空間は戦闘状態に移った。

 そして、それを確認してすぐさま看破を発動し、ダンジョンマスターの情報を確認する。


[(ダンジョンマスター)ホブゴブリン LV:12 属性:なし]

 HP:1500

 MP:120

 総合攻撃力:144

 総合防御力:86

 スキル:不明


 ホブゴブリンか、しかも分類がダンジョンマスターになっていると。スキルは不明……まあ、ボスだからだな。そこまでは見せてくれないという事だろう。


 ただなぁ、ホブゴブリンが持っている武器がこん棒何だよな。普通のゴブリンが持っていた物よりも圧倒的に大きいとは言え、こん棒ならばイージーモードだ。さっきまで飽きるくらい相手にしていた武器だから、サイズは変わっても攻撃範囲は何となくわかるようにはなっている。


「ガッアアアァ!」


 ホブゴブリンがこん棒を振り下ろしてきたので斜め後ろに避ける。こん棒は地面に叩きつけられて直ぐに横薙ぎの攻撃に移行した。しかし、既に後ろに回避している俺に当たることは無い。


 ホブゴブリンの攻撃による隙を見て、ライトボールを出来るだけ多く放つ。それで与えたダメージは多くて2割といったところだ。ボスにしてはダメージを受けているようなので、やはり他のゴブリンと同じように魔術系統の攻撃には弱いのかもしれない。


 これからの攻撃を受けたことで怒ったのか、ホブゴブリンはさらに雄叫びを上げて今の攻撃よりも速い速度でこん棒を振り回してきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る