第8話 嫌なやつ、変なやつ
ギルドに戻って来て直ぐにギルドのチュートリアルが始まった。基本的に他のゲームと同じようにギルドの使い方や依頼に関する説明と受注方法、最後に取引掲示板の説明で終わった。
「これでチュートリアルは終わりとなります。このチュートリアルの中に出て来たものの説明などはヘルプに記載されていますので、再度確認したいことがありましたらそちらを参照してください。
それと、チュートリアルが終わりましたのでギルドカードをお渡ししますね。
では、ギルドを出ることでこのチュートリアルは完了となります。何か聞きたいことや、質問はございますか?」
ギルドを出ないとチュートリアルは完了扱いにならないのか。うーん、聞きたいことなぁ。
「ギルドを出る前に依頼を受けることは出来る?」
チュートリアル専用の空間だからこのギルドには俺以外に数人しかいない状態だが、チュートリアルを完了してまたギルドに入るとなると、おそらくギルドの中には他のプレイヤーも居るはずだ。
多くのプレイヤーが居る中で依頼を受ける手続きをするのは時間が掛かる可能性があるから、ここで依頼が受けられるなら楽だと思ったのだが、どうだろうか。
「Gランクの依頼なら可能です。手続きをしますか?」
「お願いします」
「現在、受注可能な依頼はこの3つになりますが、どうしますか?」
受付嬢から提示された依頼はスライムとウサギの討伐依頼と薬草の採取依頼だ。あれ、これってもしかしてチュートリアル前でも受注可能だった依頼じゃないか? 討伐依頼のやつはどちらもチュートリアルの平原で出て来たし、薬草に関しては採取できそうな草が生えていたのを見たような気もする。
いや、今更だな。今気付いたところでチュートリアル前に受けられたかどうかはわからんし、今受けられるなら受注してしまおう。
「3つとも受注でお願いします」
「わかりました。ミヨさんのギルドランクではこれ以上同時に依頼を受注できませんので注意してください。依頼の受注手続きが完了しました」
「ありがとうございます」
そう言って受付嬢に頭を下げ、ギルドから出る。ギルドの出入り口を通り抜けると転送の時と同じように視界が一気に白くなり、周囲の光景が切り替わる。
『チュートリアルが完了しました。報酬として1000Fsとギルドポイントを獲得しました』
これでチュートリアルは終わりと。よし! さあ、さっき受けた依頼をクリアするためにフィールドに出よ……
「お! そこの人。一緒にフィールドに……あー、テイマーかぁ、すまない。聞かなかったことにしてくれ」
「は?」
「雑魚は要らないんだ、それじゃ」
いや、え? 何だよいきなり! 自分から声かけておいてその返しはあり得ないだろ!? それに最後の一言は完全に余計だよな!?
テイマーが嫌われていることは知っていたが、まさかこんな扱いを受けるとは思っていなかったわ。そもそも誘われたところで一緒にプレイするつもり何て一切なかったんだが、当たりやに遭遇した気分ってこんな感じなのか?
何かもう楽しもうとしていた気分が台無しだ。やることは変わらないが、フィールドのモンスター倒しまくってこの気持ちを発散してこよう。
「ふっほほ。マナーの悪い方に当たりましたのぉ」
「んあ?」
なんか変なの出て来たんだが。なにこいつ? 全体的な印象としてはイケオジと言うかジェントル系だが、まあ、初期装備だから割と滑稽な感じでもあるな。
「おや、申し訳ない。警戒させてしまったかの」
「何か用か?」
さっきの奴みたいな奴ではない保証はどこにもないから警戒を強める。言動だけなら友好的なのだが、それだけでは内心はわからないからな。
「警戒させてしまい、すまんの。少し話を伺いたいだけなのじゃが、いいかの?」
「……内容による」
うーむ。こちらに敵意がある感じでは無いし、騙そうとしている感じでもなさそうだ。
「その種族について聞きたいのじゃが、そう言えば自己紹介がまだじゃったかな。儂はイケシルバーというのじゃが、まあ、頭上のネームを見ればわかる事じゃがの」
プレイヤーネーム見た目まんまかよ! もう少しひねったネームに出来なかったのか! 聞いた瞬間笑いそうになったわ!
「それで聞きたい理由についてじゃがの、今はまだ条件を満たしていない故無理じゃが、儂は他のメンバーと一緒に情報系クランを作る予定での、そこで種族の情報も…どうした?」
失礼ではあるが、プレイヤーネームを聞いて笑いを堪えている俺の顔をイケシルバーが覗き込んで来た。
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