第2話 駅
誰もが一度は利用したことがあるであろう「駅」。多くの人たちが移動手段として使用しているなくてはならない存在。今回はそんな駅に関する話です。
ガタンッ、その振動で私は目をゆっくりと開けた。どうやら仕事の疲れのせいか、電車で眠ってしまったようだ。電車内の電光掲示板で次の駅名を確認する。よかった。どうやら降りる駅はまだのようだ。このままもう一度眠ってもいいが、目的地で起きれる自信がない。仕方ない、我慢するか。そうして睡魔と闘いながら目的の駅に着くのを待つ。10分ぐらい経過しただろうか、目的の駅に着いた。扉が開き、私は電車を降りた。そのまま改札に行くための階段に向かう。横ではさっきまで乗っていた電車が発車した。残業で遅くまで会社に残っていたせいか、私のほかにこの駅で降りた人はいなかった。それどころかホームにも人はいない。腕時計を見ると1時を過ぎていた。早く帰って寝ないと明日起きれなくなる。そう考え、足早に改札へと向かう。ICカードを改札にかざすと、警告音が鳴る。どうやらチャージし忘れていたようだ。こんな時に限ってついていない。早く帰って寝たいのに。少々不快になりながらも、チャージするためにカードと金を機械に入れる。しかしなぜか上手く読み取ってもらえていないのか、1000円札が入らない。段々とイライラしてきた。そんな時、急に後ろから「どうされましたか?」と声がかかった。振り向くと駅員がいた。私は「チャージしようとしているんですが、なんでか上手く入らないんですよね。」
と現状を駅員に伝えた。「それでは少々お待ちください、点検いたしますので。」
そう言うと駅員は機械の蓋を開けて調べだした。しばらく様子を眺めていると、突然「ん?なんだこれ?」と駅員が呟いた。人もいなくて静かだったので、その呟きが聞こえた。「どうしたんですか?」と声をかける。「いやですね、紙切れが挟まってたみたいで、取り除いたんですが、何か文字らしいものが書いてあるんですよ。」そう言って駅員はその紙切れを見せてきた。確かに文字らしきものが書かれているが、小さすぎてよく読めない。
「いたずらですかね?」「どうですかねぇ、小さい子供が親の目を盗んでやったんですかねぇ。ともかくこれで直りましたのでお使いください。」「ありがとうございます。」
私は駅員に礼を言うと再びICカードを入れてチャージしようと1000円札を入れた。するとなぜかまた1000円札が出てきた。これには流石に駅員も私も驚いて、思わずお互いに目を合わせた。すると、もう一枚何かが出てきた。それを手に取ると、どうやらまた何か書かれた紙らしい。しかし今度はちゃんと文字が読める。そこには
『これ 読めた? 読めてたらうれしいな おしゃべりしようよ』と子供の字で書いてあった。これを駅員と二人で読んでいたが、お互い気味が悪くなったのか無言のまま目を合わせた。沈黙がしばらく続き、意を決して私が駅員に話しかけようとしたとき、突然改札の一つが、ピピッと子供用ICカードをかざしたときの音が鳴り、同時に改札が開いた。しかしそこには誰もいない。駅員と私はなりふり構わず、全速力で改札を飛び越え、駅員室に転がり込んだ。駅員は私が転がり込むと、急いで鍵をかけた。
「なんなんですかいまの!!」「分かりませんよ!!分かるわけないじゃないですか!!」駅員も私も恐怖心からか、大声で怒鳴りあった。しかし、しばらくたってようやく落ち着きを取り戻した私たちはさっきのことについて整理しだした。
「さっきの、偶然だと思いたいんですけど...。仕事の疲れのせいにしたいんですけど。」「私もですよ... 長く車掌を務めてきましたが、こんな事初めてですよ。」「やっぱり幽霊とか、そういう類のものなんでしょうか?」「私は霊感というのがないのでわからないんですけど、そう考えるしかないんじゃありませんか?ともかく、今日はここで日が昇るまで待機しましょう。4時には私たちの仕事が始まりますので。」「ありがとうございます。」
ということで駅員室で待機することになった私たちだが、そのあとは結局何も起こらず他の駅員たちが到着した。しかし私たちは極度の緊張状態が続いていたのでとても疲れていた。後から到着した駅員にタクシーを手配してもらい、会社には休みの連絡を入れた。そして駅員に礼を言ってタクシー乗り場へと向かおうとしたとき、あの改札が目の端にちらりと映った。それが見えた瞬間私は後ろを振り向かずにタクシー乗り場まで走りすぐにタクシーを出してもらった。私は見てしまった。改札の前に立っていた小学生ぐらいの背丈の少年が満面の笑みで手を振っていたのを。
しかしタクシーが出てからは安心で眠ってしまい、運転手に起こされた。
「お疲れだったんですね、お体にお気をつけて。」「はは、色々ありまして。ありがとうございます。」「僕も今日はお家でお父さんとゆっくり休むんだよ。」
「今日はお父さんといっぱいおしゃべりするんだ!ね、お父さん。」
いかがでしたでしょうか?少しでも面白いと思っていただければ幸いです。今回は一人称視点で物語を書いてみました。意外と一人称で書くのって難しいんですね。感情の表現がうまくできなかったです。投稿時間も投稿間隔もバラバラですが今後ともよろしくお願いします。
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