第3話 診察結果 後編
医者はジークの診察を終え、診察室にある電話へと目を向けた。
ゆっくりとした動きで受話器を手に取り、番号を押す。いつもよりボタンが重く感じ、指が震えたため何度か押し間違えた。
プルルルル、プルルルル、プルルルル……。
やっとのことで、発信できたが中々出ない。
一旦、切って掛け直そうかと思った瞬間、
『もしもし』
電話がつながり、低く落ち着きのある声が聞こえてくる。
「もっ、もしもし、こちらは国立中央病院のセガです。今さっき、ジーク君の診察が終わりました」
『ああ、ご苦労。結果は?』
「衰弱は思ったより進んでおりました。余命は三年といったところです」
『……』
しばらく、沈黙が続く。
「あ、あの……、いかがいたしましたか?」
『ああ。いきなり黙って悪かったな。なんとも言えない期間だったものでな』
「左様ですか。こちらからはご要望通り、安静にするように伝えました」
『そうか。それでジーク・ウォーカーは何と?』
「魔泉の水を手に入れるつもりだそうです」
『ふーっ、儘ならんものだな。頑固なのは血筋か?』
明らかに不機嫌な様子に、医者は息を飲んだ。
「ジーク君には、何か手立てがあるようでした」
勝算があるかと尋ねた時、ジークは何も答えなかった。しかし、その瞳には力強さが宿っていたと医者は感じた。
『神童……。そう呼ばれていたか。彼は優秀だ。ハンデキャップを乗り越えて、史上最年少でA級冒険者になったのだからな。何か手を打つ必要があるかもしれんな……』
再び、沈黙が訪れた。何か思案している最中、医者は邪魔しないように相手の言葉を待つ。
『ああ、悪い。セガ君、ご苦労だったな』
「い、いえ、お気になさらないでください。こちらからの報告は以上です」
『よろしい。では、明日からも通常通りに君が業務できることは保障しよう』
「あ、ありがとうございます。では、失礼させていただきます」
医者は電話を切って、息を吐き出す。手には尋常じゃないほどの汗をかいていた。本当のところ、今日はもう業務を放り出したい衝動に駆られたが、ジークの保護者である祖父母への報告がまだ残っている。先の電話のような緊張感はないが、患者の余命について伝えなければいけないのは精神的に辛いものがある。
(今日は酒でも飲んで早めに寝よう)
そう心に固く誓い、ジークの祖父母へと電話をかけた。
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