第11話 実食!ワイズ・ラビットのお肉はどんなお味?
「ニコ、お前、女みたいな男だな」
これが「ブレイブハート」リーダーのアルトリウスが最初にボクに発した言葉である。
次いで、
「お前みたいな男でも冒険者は務まるんだな」
とも言い放ちやがりました。
いや、ボクは本当は女の子だから。
それに女みたいな男に冒険者が務まらないなら女性冒険者が活躍していることはどう解釈しておるのだね、チミ?
っていうか、おたくのラファエロ君だってたいがい女の子みたいな雰囲気醸し出してますけど!?
ボクが苛立っている様子を見て、サブリーダーのランスがフォローを入れてくる。
「いやいや、魔法職は俺らと違って
「そうだそうだ! ボクは魔法職だから戦士職みたいにゴリラのようなムキムキにならなくたって良いんですぅー!」
ボクの反論に対して今度はアルトリウスがキレそうになる。
「ああ? 誰がゴリラだって?」
まさに一触即発の雰囲気である。
なんなんだコイツ、いきなり突っかかってきてむかつくな!
『
ボクが「おお水よ、流動せし者よ――」と唱え始めると、慌ててテミスが止めに入る。
「ニコ、店の中でそれはちょっと…… な? まぁ、アルトリウスも口は悪いが根は悪く無いやつなんだ。 ここはオレに免じて矛を納めてくれないか?」
「まぁ、テミスが言うならボクは納めるよ。どの道、今日はMPを使い果たしているからもう魔術は使えないしね。ちょっと唱えてみたくなっただけさ」
ボクが
神官のラファエロ君は
「
とテミスが言うと、さすがにアルトリウスも堪えたらしい。
「そっ、そりゃないぜ! テミス」
「詫びるならオレじゃなくニコに詫びな」
そう言われ、アルトリウスも少し反省したらしく、
「さっきは言いすぎて悪かった。別に悪気があったわけじゃなく、こんな可愛らしいお嬢ちゃんみたいなツラしたやつが冒険者をやってるのを不思議に思っただけで他意は無い。テミスからお前はすげえやつだって聞いてたもんでちょっと意外だっただけだ」
と謝罪してきた。
まぁ、そこまで言ってくるならボクも許してやらんこともないよ?
とりあえずその場はいったん丸く納まり、
「
なんとなくイギリスの田舎料理みたいな雰囲気の料理を出すお店で、パイとかローストとか、揚げ物みたいなメニューが多い。
素材の味を活かした素朴なお料理という感じだ。
ボクたちが提供した
お腹を開いたウサギにざく切りの玉ねぎ、ミニキャロット、マッシュルーム、レーズン、パンを細かくちぎったものに黒コショウ、シナモン、セージ、タイム、ローズマリーなどのスパイスやハーブを加えたものを
ローストした際に出た肉汁は
テーブルには丸焼きの形のまま出され、そこで給仕係さんがナイフで腹を開き、中に詰められていたものと肉を分け、肉は食べやすいサイズに切り分けてくれる。
肉とみじん切りにした玉ねぎ、エシャロット、にんにく、セージを混ぜたものを塩とカイエンペッパー、黒コショウなどのスパイスで味を付けてオリーブオイルで炒める。
それを器に入れて上からマッシュポテトをかぶせ、オーブンで焼いたものだ。
スパイスの香りとお肉の芳しい香りが立ち上り、食欲を刺激してくる。
テミスが「ここがウサギで一番美味しいところだから」と、腿肉の大きな塊をボクの皿に盛ってくれる。
お肉の脇にはウサギのお腹に詰められていたパンや野菜たちも添えてくれて、その上から
ボクはお肉をホークとナイフで切り分け、中に詰められていたパンや野菜といっしょに口に運ぶ。
口の中で
お肉の皮の部分はパリっとローストされているけど身の方はまだしっとりしており、中に詰められていたマッシュルームの食感も良い。
時々顔をのぞかせるレーズンの甘みと酸味も良いアクセントで、パンは肉と野菜の旨味をしっかり受けとめていてふにゃふにゃになったそれが口の中でそれぞれの食材を繋ぎとめて一体感を出す。
前から魔素が豊富な食べ物を食べると感じていたことだけど、魔素はボクが元いた世界にはない味覚な気がする。
魔素には独特のコクやまろやかさのようなものがある。
強いて言えば高級なお肉を食べた時に、その旨味の塊が持つパワーで心と脳をぐわっと揺さぶられ、脳が痺れるような感覚と似ている気がするので旨味に比較的近い感じはするが、それとも違う独特のニュアンスがある。
あと、食べた後に魔素が身体の中を駆け巡り、それが血肉と結びついて力に変わっていくような得も言われぬ高揚感があって、これがまた不思議な感覚だ。
口にまだお肉が入っているのにすでに次のお肉が欲しくなる。
さっきまでボクのお皿にお肉を盛ってくれていたテミスも、見ると物凄い勢いで食べている。
狩人ギルドでは
テミスは口にまだお肉が入っているのにすでに次のお肉が欲しくなる感じを忠実に実践しているらしく、口にまだ肉が入っているのに次々と肉を食べ、リスのようにほっぺたを膨らませていた。
最初はおしゃべりしながら食べていたのに、今ではみんな無心で肉を貪っており、「あっ、これ蟹を食べると静かになるのと同じ感じだ!」とボクは思った。
神官のラファエロ君だけ、聖神教の戒律でもあるのか少し恥ずかしそうにしながら肉にかぶりついているが、それでも肉に夢中になって食べ進めているのが分かる。
途中でみんなが
豚のひき肉に
カイエンペッパーや黒コショウの風味やピリリとした辛みが効いており、いっしょに炒められた玉ねぎやエシャロットは野菜独自の甘味や旨味を発揮し、セージのヨモギのような爽やかな香りが内臓の独特の臭みを抑え、味を引き立てている。
オーブンで焼かれて表面がサクッとしているマッシュポテトとも相性抜群でこれも食べだすと止まらない味だ。
箸休めに飲んだ
ランスはある程度食を進め、満足してくるとそれまで飲んでいた
ボクも真似してそれまで飲んでいた
赤ワインはボクにはまだ早かったのか、その渋みに眉をしかめているとランスが気をつかって別の赤ワインを注文してくれる。
銘柄によってはフルーティーで甘く飲みやすいものもあるということで、新しいワインの方はボクの口にもあい、どんどん飲んでしまった。
ボクが飲めなかった渋い赤ワインはランスが代わりに飲んでくれた。
アルトリウスも肉の味に満足したのか、
「でかしたぞ! ニコ! 俺がこれまでに食べた肉の中でこれが一番うまい! また
と、ボクの背中を手のひらでバンバン叩き、上機嫌だ。
テミスが言うように、単にコイツは裏表が無いだけで根は悪いやつでは無さそうだ。
ボクとテミスはお肉を食べてる途中でレベルが上がり、ボクがLv9でテミスはLv12に上がった。
「ほら、オレが言った通り、
と、テミスがボクの肩を抱いてドヤ顔で言うので、
ボクも、
「こんなに美味しいならまた
と答えた。
美味しいお肉とお酒に満足したアルトリウスは音痴な歌を披露し始めている。
悪ノリしたランスがアルトリウスと肩を組んでいっしょに歌を歌う。
アヴァロン島の歌なのかな?
二人とも酔っぱらってるし、なんて歌っているのかはよく分からないけど、とにかく二人ともゴキゲンだ。
ラファエロ君はお酒に弱いのか、さっきからテミスの右腕を抱きしめながらウトウトしている。
「テミスさん、今日も美味しいお肉をありがとうございます……むにゃむにゃ」
ラファエロ君のお気にはテミスちゃんなのかな?
お姉さん、応援しちゃうぞ?
こうやってその日の「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます