第9話 報酬の分配
今、ボクたちの目の前には4,075MP分の魔晶石、
ボクたちはアンヌンに戻るといつもの冒険者ギルド本館ではなく、東館に向かった。
狩人ギルドは冒険者ギルドの東館一階に間借りする形で入居しており、そこで今回の狩りの報告と
やはりテミスちゃんの言う通り、街の近くの森で上位種の
街からさほど離れていない森なら、狩人や冒険者以外の一般人も足を踏み入れることがあるので、狩人ギルドとしても上位種が出ないように定期的にレベルが高い魔獣を駆除するようにしているからだ。
等級が低い狩人や冒険者たちが狩場にしている森だったということもあって、ギルドとしても危機感を抱くようなことらしく、後日、等級の高い狩人によって現地調査が行われる他、ギルドから狩人や冒険者たちに注意喚起がなされることになった。
ここでもボクが『
テミスちゃんは報告の後、討伐した
「今回の儲けは、
本来のルールなら冒険者が事業者と共同でクエストに取り組む場合、素材は事業者側の取り分――今回の場合だと狩人のテミスちゃんの取り分で、冒険者であるボクとサルフェはテミスちゃんが支払うクエスト報酬プラス魔獣たちの魔晶石が取り分ということになるが、テミスちゃんはみんなに公平に収益を分配してくれるつもりらしい。
こういう太っ腹なところとかはやっぱりイケメンだなぁ~、テミスちゃんは!という感じである。
「ボクは今回テミスちゃんが一番ケガも多かったし、戦闘で鉄の胸当てもひしゃげて修理しないといけないと思うので、毛皮はテミスちゃんに引き取ってもらうのが良いと思います。本来の冒険者のルールでも素材は事業者である狩人の取り分ですし…… サルフェもそれで良いよね?」
「私は……
サルフェが珍しくしおらしい。
プライドの高い彼女にとってあの失態はそれだけショックだったということか……
「うーん、そこまで二人の厚意に甘えるのはなんだか申し訳ない気がするなぁー」
「いやいや、そもそも収益を公平に分配しようとしてくれるテミスちゃんの方が寛大な訳ですし、今回の毛皮はテミスちゃんが引き取ってください! ねっ!? サルフェもそれで良いでしょ?」
「私もそれが良いと思います……」
ボクとサルフェの二人にそう言われても、テミスちゃんはまだ「うーん……」と唸りながら申し訳なさそうにしている。
本当に律儀な男、改め女だよ、テミスちゃん!
「うーん…… まぁ、そこまで言ってもらえるなら、今回は素直に厚意に甘えさせてもらうことにするよ。二人とも、ありがとう! 確かに新しい胸当てにこの毛皮を貼り付けたら、土属性の効果で物理防御も魔法防御も高まりそうだし、助かる。お礼にこの後の打ち上げではオレに奢らせて欲しい!」
ということで、毛皮は受け取ってもらい、今夜の打ち上げのウサギ
「あの…… テミス様、申し訳ないんですが、そちらの打ち上げの方も今回は私、辞退させていただきたいと思います……」
「えっ!? どうして!?」
「だって
「いやいや、そこはそんなに気にしなくて良いよ! なあ、ニコ?」
「えっ!? うん、そうだよ! サルフェ、気にしすぎだよ! それに最初にサルフェが
「ぐぬぬぬっ……」
あれ? ボクなんか間違ったこと言った?
サルフェが顔を真っ赤にして唸りだしたよ?
「ニコ! あなたは戦闘に貢献したからそんなことが言えるのよ! 私の
ああ、なんか逆に火に油を注ぐような形になっちゃった……?
やばいな、サルフェってプライド高そうだし、これは根に持たれちゃうかもしれないな……
「まぁでも、最初の
あれ? テミスちゃん、ここは空気を読む場面ですよ?
ほら、サルフェがまた「ぐぬぬぬっ」ってなってますし。ねえ?
「ニコ! 覚えてらっしゃいよ! この借りはいつか倍にして返してやりますから!」
そう言うとサルフェはその場から一目散に立ち去っていった……
あれれ? 最後のとどめを刺したのはテミスちゃんだったよね?
なんかボクが恨まれてる感じになってますよ?
でも確かにサルフェの言う通りではある。
今回は相性が悪かっただけで、相手が風属性や火属性、水属性なら火と土に魔法適性を持っているサルフェも活躍できたはずだ。
実際、同じ鉄等級であるボクはまだ中級魔術を身につけられていない。
今回はたまたま『アポカリプス・ワールド』での経験が生かせて『
後でサルフェを見かけたらちゃんと謝っておこう。
少し癪だけど……
「テミスちゃん、サルフェ、行っちゃいましたね…… 収益の分配、どうしましょうか?」
「そうだな。肉は食べないと言ってたけど、やっぱり魔晶石の方はみんなで均等に分けたいと思う。ニコもそれで良いか?」
「ボクもそれが良いと思います!」
「じゃあ、オレが今度会った時にサルフェに渡しておくよ」
ということで、今回のボクの収入は魔晶石1,329MPとなった。
これまでの魔野菜収穫クエストの収入が平均800MPくらいだったから、なかなかの収入だと思う。
「あとはこの肉だな…… この量だとさすがに二人で食べきるには多すぎるかもしれない」
確かにテミスちゃんのいう通り、
重さもたぶん10㎏以上、皮を剥いだ状態でも8㎏くらいはありそうだ……
骨の部分は食べられないにしても肉の部分だけで5㎏くらいないか?
「たしかニコは『銀の乙女亭』で住み込みをしてるんだったっけ? 肉をいくらか宿に持ち帰るか?」
なんかそれも悪い気がする。
みんなで討伐した
「そしたらせっかくだし、テミスちゃんのところのパーティーメンバーも呼んだらどうですか? みんなで食べた方が美味しいし、楽しいと思いますし……」
「良いのか? 確かにあいつら今日は休みにしててぐだぐだ過ごしてると思うから、美味しい肉があるって言ったら食いついてきそうだけど……」
「実は前からテミスちゃんの仲間がどんな人たちか会ってみたかったんですよね。良い機会ですからぜひ!」
実はそうなのだ。
ボクもそろそろパーティーへの加入とかも考えていた頃なのである。
ソロの活動だと何かと限界があるし、パーティーじゃないと受けられないクエストとかもあるしね。
それに先々、魔法協会本部があるアレクサンドラに行くとしても、自分一人で行くよりも仲間たちといっしょに行った方がはるかに安全に旅ができる。
そう考えると、そろそろどこかのパーティーに所属することを考えても良い時期な気がしていたんだ。
「ああ、ニコがそう言ってくれるのであればこちらとしてもありがたい。でもそしたら一つお願いがあるんだ……」
「なんですか? テミスちゃん?」
「そのテミス『ちゃん』って言うのを出来れば止めて欲しいんだ。オレは母ちゃんが早くに亡くなって父ちゃんに男手一つで育てられた関係で、昔から狩場にもよくつれていかれて狩人連中に囲まれて暮らしていたから、どうも男っぽいしゃべり方や仕草が染みついちまってて…… 今更女の子らしくしろって言われても難しいし、なんか『ちゃん』付けで呼ばれるとむず痒いっていうかなんていうか…… あとオレが『ちゃん』付けで呼ばれてたら大笑いするやつがパーティーメンバーの中にいるからな」
「だったら何て呼べば良いですか?」
「テミスで良いよ。あと敬語も禁止な? オレたちはもう仲間みたいなもんだろ?」
そう言ってテミスちゃんはボクの肩をガシっと組んでくる。
テミスちゃんの大きなお胸がボクの二の腕に当たっている……
これはあれですか? 当たってるんですか? それとも当ててるんですか??
とは言え、せっかくテミスちゃんがそう言ってくれてるんだし、もっと砕けた話し方をした方がさらに仲良くなれるのかもしれない……
「分かったよ、テミス。じゃあ今度からはこんな感じで話すようにするね?」
「ああ、それで良い!」
ボクの答えが嬉しかったのか、テミスちゃん改めテミスは満面の笑顔で返してくれる。
そんな顔を見せられると、やっぱりテミスはかっこカワイイ女の子なんだなぁーと感じた。
その後、ボクは今夜のウサギ
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