第8話 古の失われた魔法
「いやあ、
さっきからボクの武勇伝を嬉しそうに語っているのは、テミス君改めテミス
「ほんっっとにすごかったんだよ! 水がバーっ!と現れて、ドドドドドドドドドっ!て樹々といっしょに
実際に魔術を発動させたボクよりも自慢げで嬉しそうに話してるのはどうなのよ?
ボクの方は君が男の子じゃなく、女の子だったという事実をまだ受け止め切れていないというのに……
「へぇー、そうなんですか? でも水の中級魔術や上級魔術にそんな魔術あったかしら?」
「えーっと確か……『
テミスちゃんの発言を受けてサルフェの表情が固まった。
まるであり得ない言葉でも聞いたかのような反応だ。
「――――テミス様、今、なんとおっしゃいました?」
「えーっと『
「『
「ああ、たぶん『
サルフェは口をあんぐりと開け、唖然とした表情をしている。
「あっ、あり得ませんわ! 『
なんか、まずい方向に話がいっているな……
ボクの魔法適性のことやダンジョン深層の封印された箱に眠っていたという話はあまり知れ渡らない方が良さそうだ。
適当にうまくごまかさないと……
「いや、ボクもあの時は無我夢中で、どうやって詠唱したかとかも覚えていないし、よく分からないんだ…… もしかしたら無我夢中で『
「なに言ってますの、ニコ? 術名を間違えたら発動しないことなんて、木等級の魔術士でさえ知っている魔術の常識じゃありませんか?」
サルフェに反論され、ボクは「うぐっ」と言葉を喉に詰まらせてしまう。
でもこのままボクが『
「あっ、もしかしたら『
「いや、それはない。オレは獣人族だ。お前たちと違ってある程度離れていてもしっかり音を聞き取れる。しかもあの時は獣魔術で肉体強化もしていたからな」
いやいや、そこはうまく話を合わせてよ! テミスちゃん!
「それに『
あわわわっ、やばいよ!
もうほとんど論破されてる状況じゃん!
何かうまくごまかす方法を考えないとややこしい話になってしまう……
――――そっ、そうだ! あれを使おう!
「ああ、みっ、みんなには内緒にしてたんだけど、もしかしたらこれのおかげかもしれないなぁ~……」
ボクはそういうと、右の中指に嵌めていた『エリネドの指輪』を二人に見せる。
バロラがアンヌンを旅立つ時に譲ってくれた魔法の指輪だ。
これは
少し強引だがこの話で押し通すしかない!
二人はボクが見せた緑のトルマリンがはめられたミスリルの指輪を見つめる。
「うーん、確かに『鑑定』で見ても弾かれますし、かなりランクの高い迷宮遺物とかかもしれませんね?」
「そうだな。オレも魔術のこととかはよく分からないが、この指輪からはタダならぬものを感じる。さっきの水魔術はこれのおかげだったということなのか……?」
よし!なんとか二人がこの話に乗ってくれそうだ!
困った時のバロラ頼み!
いつもお世話になってます!
「いや、なんか親切な冒険者さんから譲ってもらったんだけど、なんだかすごく価値があるものみたいだったから、あんまり知られるのもまずいかなと思って人には話さないようにしていたんだ。できれば二人もこのことは内緒にしておいてもらえると助かるんだけど……」
テミスちゃんは二つ返事で「ああ!問題ない!ニコには借りがあるしな」と言ってくれて、サルフェもそれに続いて「まあ、確かに今回は助けられましたし?このことは他言いたしませんわ!」と言ってくれた。
よし!なんとかややこしい話にはならなくてすみそうだ!
ボクはホッと一安心すると、「じゃあ巣穴のところに置いてきた袋を回収しに行こう」と二人に提案し、話題を切り替えた。
テミスちゃんがひとまず
テミスちゃんも「日が暮れる前に帰ろう!」と提案してくれて、ボクたちは一路アンヌンにもどることとなった。
そう言えば、サルフェは『
不完全な形とは言え、この世界でも『
やっぱりこの世界の魔法システムは『アポカリプス・ワールド』の魔法システムと何か関係があるのかもしれない……
「アポカリプス」は確か「黙示録」という意味の言葉だ。
そして今のこの世界の歴は「千年王国期」と呼ばれている。
「千年王国」は確か黙示録による終末の後に訪れる世界のことだったはず……
もしかしてこの世界は、『アポカリプス・ワールド』の続編のゲーム世界ということなのだろうか……?
ボクは新たな謎を抱え、アンヌンへの帰路に就くことになった。
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