第22話

「正直、先ほど刑事さんが仰っていた武田さんという方が、いじめをしていたかどうかは私には分からないのですが、この学校は今でこそ地域でも優等生たちが多く在籍している学校という評判になっておりますが、15年前から5年前くらいの10年間くらいは本当に荒れている学校だったんです。なので、いじめは正直、当たり前にありました。いじめで不登校になったり、転校したりする生徒もかなり多くいました。


でも、学校側はあくまで生徒同士のよくある喧嘩や一時的なものであり、いじめは無いと言い続ける方針を掲げ、全ての教職員や私のような用務員にも箝口令かんこうれいが敷かれました。


そのため、自殺した子が出た時にいじめていた側の子たちが謝罪したいと直談判した時も、校長が絶対に謝罪はさせないといった方針であり、いじめていた生徒たちの中には罪悪感に苛まれさいなまれ、不登校になってしまった子もいました。


その武田さんがどうだったか分かりませんが、そういったことが起こっていた学校ではありました。」


「学校全体でいじめを隠蔽していた時代があったというわけですね。自殺してしまった子供の親は学校に乗り込んできたりしなかったんですか?」


「いや、来ていましたよ。真実が知りたいと。一体、誰が自分の子供にヒドいことをしたのかを知りたいと。でも、学校側は頑なに、いじめの事実は無いと言って親の要望に回答することは一切ありませんでしたね。当時は今のようにネットで炎上っていうんですか?そういったことが無かった時代でもありましたからね、親御さんも結局、泣き寝入りするしかなかったんじゃないですかね。」


「当時、自殺してしまった生徒のお名前ってわかりますか?」


「確か、高橋っていう女子生徒だったような。」


「高橋さんという女性ですね。ありがとうございます。」


神宮寺は再び、職員室へ足を運んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る