第16話

「資料だけ見てても、何も掴めそうにないな。明日から聞き込みしてみるか。」

そんなことを考えている間に、時刻は電車も終わり事件が発生した時間と同じような時間帯になっていた。

「そろそろ現場に行ってみるか。」

神宮寺は資料を片付けると、一番最初の加害者であり自殺してしまった女性の足跡を検証することにした。


「ここが最後にいたお店か。」

時刻は深夜2時。お店のドアにはすでに『close』となっていたが、まだ誰かがいるかもしれないと思い、店に入ってみた。すると、店主らしき男性が一人で片付けをしていた。


「すいません、もう閉店なんです。」

店主は神宮寺に気付き声を掛けてきた。


「閉店時間に申し訳ありません、私こういう者なんですが、少しお聞きしたいことがありまして。」

神宮寺は警察手帳を見せた。


「警察の方がなんの用でしょうか?」

店主は明らかに嫌悪感を露わあらわにした。


「1、2週間前くらいにこちらの女性が友人たち数人と飲んだあと、公園で全裸になって寝ているところを保護されるといった事件があったのを覚えていますか?」


「あぁ、その事件なら覚えてますよ。先週くらいに違う警官の方に話は全てしていますけど。」


「申し訳ありません。ただ、改めて確認したいことがありまして。」


「なんですか?」

店主は早く帰ってくれという雰囲気を醸し出した。


「その女性に出したお酒って、普通のお客さんに出しているのと同じ度数や割り方で出しましたか?」


「どうだったかな?ハッキリとは覚えてないなぁ。」


「重要なポイントなんです。思い出してもらえませんか?」


「そう言われても。多分、普通にお酒を出していたと思いますよ。」


「じゃあ、量を沢山飲んでいたとかは?」


「確か、だいぶ盛り上がってテキーラのショットを何杯かイッキ飲みしていたような記憶はあります。」


「なるほど。じゃあ、だいぶ飲んでたんですね。」


「飲んでいたというより、飲まされていたっていう表現の方が正しいかもしれないですね。」


「飲まされてたんですね。貴重な情報ありがとうございます。」


「もう良いですか?」


「はい、お忙しい中ありがとうございました。」

神宮寺は一礼して、お店を出た。

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