第4話

まだ興奮状態が続いている様子の女性を落ちつかせるため、新田は温かいお茶を淹れてくると言って女性を一人部屋に残した。


「田中さん、女性が目を覚ましました。」

田中は、『分かった』と一言だけ返事をすると、調書を取る準備を始めた。

新田は田中に声をかけたあと、お茶を淹れに台所へと向かって歩いて行った。


「少しは落ち着いた?」

新田が部屋に戻ると、女性は部屋の真ん中で座り込んでいた。

「はい、とりあえずこれでも飲んで。」

「ありがとうございます。」


女性は一人になったおかげか、先ほどよりは落ち着いている様子だった。

「あの、私はなんで交番で寝ていたんでしょうか?」


「早朝にあなたが公園で寝ているという通報があってね、それで駆けつけてみたらぐっすりと眠っているあなたを発見しました。そこで声を何度も掛けたんですが、全く起きる気配が無かったため、とりあえず一時保護のために交番まで連れてきました。」


「ちなみに、私が公園?で寝ていた時、その、なんというか。」

女性が急にしどろもどろになった。


「発見された時に裸だったかどうかを気にされているんですか?」

新田からの問いかけに女性は静かに頷いた。


「裸でしたが、誰かが公園近くでシャツを買ってくれたんでしょう。新しい感じのシャツが掛けられていました。通報した人が掛けてくれたのか、たまたま通りかかった人がかけてくれたのか、あなた自身が掛けたのかは分からないですが。」


女性の顔が一瞬にして赤くなった。

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