第一六〇話

全ては無惨に朽ちていた。崩壊し、荒廃し、荒れ果てていた。文字通りの意味で壊滅していた。


 霊脈の恩恵豊かにして天高く広がる峻険な山脈。その高原たる其処は安住の地の筈だった。


 決して広くはない土地は、しかしそれでも百人にも満たぬ村人達を養うのには十分な実りを与えてくれていた。大半の怪物共は険しく入り組んだ山々を態々登ろうとは思うまい。周囲から陰となる山間部の隠れ里……人にとっての数少ない安全地帯だ。


 無論、地を這う獣共は誤魔化せても、空を飛ぶ鳥虫の怪物共は厄介であったが……それとて心配する程ではない。強き怪異は態々良き餌の不足するこのような場所に長居はせぬし、それ以下の矮小な怪異共相手には「彼女」がいたからだ。


「彼女」は村の老夫婦に拾われた。隠れ里から下った山地の麓で打ち捨てられていた異形の赤子を翁は拾い、嫗が大切に育てた。血どころか、種族すら同じと言えぬ子供、しかし実の孫のように可愛いがった。


 人ならざる身の上故に、幼子の内に村でも指折りの剛力を得て、しかしそれでも確かに愛されていた彼女はやがて村の防人を務めた。その力にて有象無象の魑魅魍魎共から村を守り、時には村のために山を降りては山菜や果実、薬草を採取する。


 齢十程の異形の娘はその事に疑問を持たず、寧ろその心は溢れんばかりの誇りに満ちていた。文字通り育ての親たる老夫婦が喜んでくれるなら、村の皆が喜んでくれるなら、己の居場所を守れるのなら、それ以上の喜びは彼女にはなかったのだ。


 例え日々生傷が絶えぬとしても、例え村のお役目以外で老夫婦の小屋を出る事が無かろうとも、例え村の外の者には決して知られぬ存在であろうとも……それでも尚、確かに彼女は幸福だったのだ。


 これは悲劇ではない。無惨で、無慈悲で、無情たる、弱肉強食が至上の摂理の現世においては決して理不尽でも偽りでもなかった。少なくとも食事はあったし手当ても受けられた。おやつもあった。それだけでこの世に生きる人の子の大半よりも確かに恵まれていたのだから。


 ……本物の悲劇とは、今この瞬間をこそ呼び表す。


「あ、ぅ、ぁ……?」


「彼女」には何が起きたのか分からなかった。直前に垣間見たのは光。熱。突風。そして僅か数瞬の内に全ては塵と化した。村は滅び去り、顔を知っている者達は判別も区別もつかぬ肉の塊に成り下がっていた。育ての老夫婦もまた同様に。元の形も分からぬ潰れた肉の欠片が散らばっている。


 大霊脈を巡っての、遥か北の地にて行われてた強大な二柱の神格の死闘。神話にて千年は語り継がれるだろう壮大な戦いの、その数多ある流れ弾の一つが全てを終わらせた事なぞこの矮小な小鳥が知る由もない。知る意味もない。


「彼女」に残された時間も、決して長くはないのだから……。


「あ、あぁ……ぁ……」


 呻く。爆風で打ち捨てられた小柄な躯。翼は無惨にも傷み羽根を散らばらせ、片腕に至っては酷く引き千切れていた。


 断面からは、どくどくと粘りけのある赤黒い血が零れ続けている。まるで野苺を潰したみたいだと彼女は思った。傷口からの痛みが余りないのは感覚が麻痺しているからだろう。全身を酷く打ち付けていたので鈍痛自体は全身で味わっていたが。


 あぁ、死ぬのか……極々自然にそれを実感して、受け入れた。幼い思考は、しかし驚く程に冷静だった。それはある意味で幼さ故のものだった。


 幼子は真の意味で死の恐ろしさを知らぬものだ。無知で無垢で純粋に。見聞も知識も経験もない意思には命よりも重い下らぬものが沢山あって、己の覚悟の意味も重さも知らぬ。軽はずみに命を懸ける。


 大事なものを全て失って、しかも仇の姿すら目撃していないのも理由だろう。明確な敵がいればあるいは復讐に燃えたやも知れぬ。残念ながらこれは天災に類した。憎悪の持ちようもない。己が運命を呪うのみである。


「うぅ……」


 痛みと悲しみと寂しさと虚しさに、彼女は突き動かされるように身体を引き摺る。幸運にも倒壊を免れた樹木の根元に身体を預ける。


 確か、自分と同い年の果樹であったか?そろそろ実をつける時節だと爺が言っていたと思う。……今や、実どころか葉すらないけれど。禿げ頭みたいに枝木だけが残っていた。


「んっ、……、……」


 胸を抉る名状し難い感覚に満たされて、「彼女」は虚ろな眼差しで改めて周囲を俯瞰する。


 あるのはやはり、呆気なく壊滅した村の光景……。


「……」


 最早何も言葉も、呻きすら出てこない。厚い曇天の空の下で浮かび上がる村は家屋も蔵も何もかも吹き飛んでいる。家畜小屋も全滅していて馬や牛の骸がバラけて散乱していた。村の皆が必死に耕していた田畑は焼け果てて草の一本すら最早ない。


 何もない。何も。全ての思い出は燃え尽きた。


 己を助けてくれる人も。知っている人も。覚えている人だって、全て燃え尽きた。全て失われた。誰も何も、知らなくなった。その存在はいつか影も形もなく 忘れ去られる。


 全て、全て、そしてきっと、最期は自分自身だって同じように……。


「……」 


 薄れる意識。冷たくなる身体。掠れる視界。出自故か、忌まわしくもそう簡単には死ぬ事はなくて、しかし間違いなく一瞬ごとに終わりは近づいていて、最早「彼女」にはそれを避ける気力も、手段も存在しなくて……。


「酷いもんだ。みーんなおっ死んでやがる」


 それは、少なくとも文面だけで言えば呑気極まりない物言いであった。


「あ、ぅ……?」


 何れだけ刻を経たのだろう?掠れかけた意識の中であった。「彼女」はその人影を見た。襤褸の外套に厚い妖毛の山岳着姿。着込むのは若い青年だった。少年に近い青年、それがかつて村だった焦土を呑気に探索する。


「上手く山の陰で拓かれてた筈なのになぁ。山を抉って来るとか冗談だろ?笑えねぇ。……五十鈴、どうだそっちは?」

「駄目です。形を残している小屋は皆無でした。生き残りも、恐らくは」


 青年の声に慇懃に丁重に、恭しさを感じさせるながら応じるのは少女だった。「彼女」よりかは幾らか歳上で、この御時世でも小綺麗にお洒落した姿は大人びているというよりも背伸びしているように思われた。背中に重そうな荷を一生懸命に背負って青年に駆け寄る。


「そうか。……御劔、そちらの方はどうだ?何か発見は?」

「田畑の方も見回りましたが……駄目でしたよ。やはり爆風で皆吹き飛んでいます。人っ子どころか家畜すら全滅ですな」


 荷運びの少女に続けて現れるのは独特の髪色の巨漢であった。面に目を引くような大剣を背負った筋肉質の武人そのものの出で立ち。野太い独特の声音で以て青年に向けて呼び掛ける。


 何処までも敬意に満ちた、真っ直ぐとした声音であった。


「そうか。そうだよなぁ。麓の化物連中まで挽き肉になってたもんなぁ。衝撃だけでも楽勝で死ねるか」


 青年は肩を竦めて冷笑する。分かりきっていた事の再確認といった物言いであった。そして視線を遥か彼方に向ける。


「これだけ距離が離れていても流れ弾でこれか。本当、洒落にならねぇよな。……あのイカれ野郎、観察とか正気かよ?物見遊山のつもりか?台風と津波の中突っ込みに行くようなもんだぞ?」

「地形も生態系も大分変わるでしょうから……地図の修正が必要になりそうです。後程、そちらの記録の写しを頂きましょう」


 青年が嘆息すれば荷運びの少女が重苦しく応じる。青年がその反応に「あー、そうじゃなくてねぇ……」と小声で呟くのを「彼女」は聴いた。どうやら両者の間には大きな認識の差異があるようだった。


「……ぁ、。ぁ」 


「彼女」が声を上げようとした理由は分からない。生きる事を諦めた筈なのに、呼び掛ける意味なんてない筈なのに、なのに、声を上げようとしていた。微かに灯る生への渇望。天から伸びる蜘蛛の糸を、希望を見出だしてしまった故の愚かな行動。死への抵抗。


「行きましょう。衝撃波で山道の堰も吹き飛びました。やがてここにも怪異共が登って来る筈です」

「首長の家屋も確認しましたが目ぼしいものも無さそうでした。最早ここに長居は無用でしょう。撤収が最善かと」


 巨漢が、少女が、青年に勧める。青年は灰塵で満たされた曇天の空を見上げると頭を掻いて「また取引先が全滅かぁ。不景気だなぁ」とぼやいていた。荷運びの少女が懸命に慰めて、巨漢が護衛するようにして周囲を警戒する。そして三人揃って村から立ち去ろうとする。


 待って!お願い!行かないで!此処にいる!此処に生き残りがいるの!「彼女」は訴える。訴えようとする。しかし出てくるのは空気の抜けたような吐息ばかり。声は届かない。人影は離れていく。離れていく……視界が潤む。必死に呼び止める。手を伸ばす。


 希望が、立ち去っていく。掌から、零れていく……。


「……」


 伸ばしていた手が下がる。上げる力は出てこなかった。瞼を開く力もまた……。


 虚無の中に。闇の中に。仄暗い絶望の中に沈んでいく。逃れえぬ最悪の運命。そして彼女は融けるようにしてその意識を手放して……。


「起きた?救助の呼び掛けはもっと大声でしてくれないと困るんだよなぁ。……これ、食べる?お前さんの村から拝借した奴だけど」


 次に目覚めた「彼女」が見たのは、焚き火に照らされている「彼」の姿だった。


 屈託のない笑顔で差し出した、小さな赤い果実だった。


 それはきっと、「彼女」の人生の最も大切な廻り合いの記憶で……。









「……」


「彼女」は天まで届かんとする大樹を撫でて遥か遥か昔を、半ば神代の記憶を思い起こす。


 それは何処までも懐かしく、美しく、儚く、そして二度と帰って来る事はない幻……「彼女」の在り方を形作り、「彼女」が未だに今上の世に休む理由である。


「……」


 無言のままに、「彼女」は今一度大樹を撫でる。霊脈の恩恵で本来の樹齢を遥かに超えて生きるそれの、幹に触れれば焦げ跡が残る樹皮がカラッと欠片を零す。手を伸ばす。未だ溢れんばかりに実り誇る果実を引き寄せる。撫でる。千切る。嗅ぐ。舐める。口付けをする。甘い薫りが、甘酸っぱい味わいが、五感を満たす……。


 静粛の内に過去に微睡み、沈黙する……。


「……」


 恨みはない。憎しみもない。悔しさもない。欠片もない。そんなものはある筈がなかった。嘘じゃない。あの輝かしい日々が偽りな筈はない。


 そう。もしこの胸の内にあるとすればその心は恐らく……。


「もっと丁寧に……!!」

「煩いなぁ。いいから黙って……!!」


 ……静粛故に響く喧騒の声音は空高くから。見上げれば天狗が人を吊るして飛んでいた。喧しく互いに騒ぎ立てながら。


「……御客さんは丁寧に持て成すようにって前にも言ったのに」


 里の蔵に向かって消えて行く姿を見送りながら囁いた。透明感のある空気に溶けてしまいそうな清涼感と僅かな拙さの残る声音……。


「……」


 儚い程に浮き世離れした隻腕の「彼女」は、娘の一人を見送りながら小さく小さく嘆息したのだった。


 久方ぶりに行く末の運命に思いを馳せて……。









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 天狗連中の蔵には想定以上に多くの呪具で満ちていた。それこそ民間で手に入るような下級のものから名門退魔士家でも滅多にお目にかかる事が出来ぬ最上級の代物まで……違いがあるとすれば何れも扶桑国では見覚えのないという事か。それこそ原作各種媒体でも知らぬものが殆どであった。


 女天狗が語るには天狗連中の中に呪具師衆に類似した集団がいるそうだ。つまりは地産地消の非売品のローカル銘柄という事である。ローカルの癖に扶桑の一般普及品より質が良いのは笑える。独占禁止法は必要なんだなって心から思うよ。


 ……いやまぁ、単純に原材料の品質の問題もあるのだろうが。


「言っておくがお前さんに貸し出すのは其処の逸品じゃないぞ?」


 あからさまにお高そうな錫杖や業物だろう薙刀に扶桑刀の方を指差しての天狗の言。


「分かってるよ。……どの道意味がないんだろ?」


 神器、あるいは神気による一撃でなければまともに手傷も与えられないとなれば飾られている御立派な武具の数々も檜の棒と同じだ。何なら下手に上等な方が気配を気取られかねなかった。


「よく分かってるじゃないか。……そうだな。例えばお前さんが携えるべきなのは、この輪袈裟とかだな」


 そう言って差し出される輪袈裟……マフラーに近い外観の僧侶服の飾りのような物だ……は明らかに通常の代物ではなかった。


 若草色の落ち着いた色合いに、麻の葉の紋様。素材は絹、なのか?恐らくその効果は……。


「魔除け……といったら抽象的だな。霊力的な気配を薄める効果がある。雑魚相手なら兎も角神格に何処まで通じるかといえば、まぁお察しの通りだがな」


 効果があったら喰われる天狗共の数はもう少し少なかったろうと暗に宣う赤坊長。


「無いよりはマシ、といった所か。他には?」

「そうだねぇ。これとかどうだい?」


 放り投げて来るのを受け止めて見ればじゃじゃらと鳴る数珠。造形からして最多角念珠。


「効果は?」

「精神的な物だな。厭らしい雑念を追い払ってくれるぞ。まぁ軽い洗脳系の呪具って所だ」

「物騒な……うぉ?」


 顔を顰める俺は、しかし次の瞬間に叩きつけられる回し蹴りを己でも不思議な程に冷静に受け止めていた。割と強い一撃を向けられて、しかし動揺はなく落ち着いて効率的に受け止める。明鏡止水……心の臓の鼓動は平常通り、思考も透き通っていた。俺が女天狗を見れば、本鳥はひょいっと悪びれる事もなく足を退かす。


「ほれ、有効性は分かったろ?」

「嫌な実演だな……」


 飄々と言ってくれる天狗に、俺は敢えてあからさまに眉を顰めて吐き捨てて見せた。あぁ、糞。怒りも雑念扱いか。


「これ、装備外したら一気に感情が濁流になって押し寄せる、なんて事はないだろうな?」

「私達も使ってんのにそんな馬鹿な仕掛けしてる訳ないだろ?いや、けど面白いかもな。その罠……」

「言うんじゃなかったな」


 割と真面目に考え込む天狗を見て、無駄なアイディアを与えてしまったと後悔する。そんな俺に天狗は冷笑しながら更に幾つかの呪具を俺に差し出した。


「これと、これと……まぁ、こいつも必要かね?」


 走縄は妖の毛から作った縄であり俺や雛を縛って見せた呪具である。俺に与えられたのは十六尺の短めの代物であった。尤も本来は捕縛よりも山登りに使う小道具であるという。手甲と脚半は元より手足の保護に使っていたが天狗の用意したものに入れ替えた。特に手甲は天狗の技で糸状にした鉄が編まれており完全に手持ちの上位互換であった。


 尤も特徴的な呪具は法螺であった。笛とした法螺貝。其処まで大きくはない。しかしながら漆で真っ黒に塗られたそれは今回天狗共から借り受けた呪具の中で一番特徴的な代物であったのだ。


「あぁ。ちょいと待ちな。そいつ新古品なんだ。先ずは共鳴させないと」

「共鳴?」


 言うや早く、赤坊長は己の法螺と俺に押し付けたそれとをごっつんことぶつけ合わせる。キィンと金属のような音が鳴り響く。


「ほい。耳を穴に当てな」


 命令しながら押し付ける。指示に従って法螺貝に耳を当てれば響くのは『しもしもしも?聴こえてる?』という呑気な声音。


「遠距離通信か」


 視線を手元の法螺から、己の法螺にメガホンのように口を当てる天狗に向けての確認。


「正確には機能の一つだな。一つ一つ説明してやるよ。それなりに便利だぞ、これ」


 そうして女天狗の説明する法螺貝の機能は確かに興味深いものであった。俺は頷き、活用法を考える。これは……あるいは?


 法螺貝の使い方を仕込まれてから、その他更に数点の小道具を拝領した。尤も正確には貸し出しであるが。……壊した場合の弁償は大丈夫だよな?


「私らがそんなケチ臭いと思ってんのか?」

「思ってるからいってるんだけど?」


 伝承に伝わる天狗共の所業を思えばさもありなんである。己の姿を鏡で見やがれ。


「神経が図太い奴め。……いや、今回の場合はだからこそ選んだ甲斐もあるってか?」

「嫌な評価だな」


 誘拐して脅迫して、人柱の鉄砲玉扱いで嫌味を言える気力があるならば、確かに天狗共からすれば高評価になろう。此方からすらば堪ったものではないがね。


「さて。……まぁ。こんな所だろうな。それなりには様にはなったんじゃないか?」


 皮肉と罵倒と嫌味を互いに吐き捨てながら、呪具の選定と装備を進めて、それを終えてからの天狗の一言であった。蔵の一角に置かれていた立て鏡を見れば下人装束の下人装備に見慣れぬ山伏道具で飾った黒づくめの面付きが佇んでいる。


「……これでどうにかなる、とは思わんが。無いよりはずっとマシか」

「生存率は少しは上がった筈さ。感謝しなよ?……あとは実技だな」

「実技。鍛練か」


 ツリーハウスでの天狗の発言を思い返しての反芻であった。


「そういう事。……走縄持って外に出な。一つ遊覧飛行と行くぞ?」


 せっつくような女天狗の要求に、しかし俺は断る術も理由もなかった。








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 諸君はスカイダイビングをした事があるだろうか?そうだ、飛行機等から飛び降りてパラシュートで空中を滑空しながら遊覧するアウトドアスポーツである。

 

 その危険性もあって、商業的なスカイダイビングの際には熟練の職員が背後でセットとなって落下しパラシュートを開く事例が多い。所謂タンデムジャンプである。


 ん?何でいきなり前世の知識について語り出すのかって?答えは簡単だ。それに言及したくなる状況に陥っているからである。


「何だ?何か文句でもあるのかい?」

「文句がない訳ないだろう?」


 天狗の問い掛けに即答。当然の話だろう。


 今の状況はどうなってるかって?腹回りに腰回り、肩回りにと走縄が縛りついてるよ。躾けているようで(縄を躾ける?)女天狗の指示通り無闇矢鱈に霊力を食っては来ないものの縄はがっちりと締め付け固定する。俺と天狗を固定する。


 それはまるで縫い付けるように、天狗の正面に俺の背中が密着するような形である。手足の自由は利くがこれは……女天狗が荷を背負ってるのもあって遠目から見れば完全にスカイダイビング客とそのインストラクターのセットに見える筈だ。そしてそんな物知らぬだろうこの世界の者が見れば単純に情けなく滑稽な男の姿が映っているに違いない。


 因みに向こうは胸甲に更に防寒のための厚着やらしているので背中に感じるのは硬い感触だけである。役得なぞはない。妖相手に役得も糞もないがね。


 ……しかし、何故下半身は旗袍染みた切れ込み(スリット)入り長袴(スカート)に輪郭がはっきり見えるピッチリ黒肌襦袢(黒タイツ)の組合せなんだ?そのヒラヒラ飛行中とかに引っ掛からない?この不合理的なデザイン、まるでエロゲ……そうだ。エロゲ世界だった。


「いや、もう少しどうにかならなかったのか……?」

「美脚に目のやり場に困るって?」

「そもそも角度的に見えんだろが」


 当然ながら俺が指摘したのは柔らかさを感じられない胸当て周辺に関してではなく、切れ目から覗く太股周辺に関してでもなく、無様としか言い様のない体勢に関してである。


「他にどう飛ばす?背負えばいいのか?抱っこすればいいのかい?首掴んで吊るすかい?脇に抱えようか?いっそ籠を用意したらよかったかな?それとも対面が御所望?」


 嫌味をたっぷり含んで矢継ぎ早に提案する赤坊長。脳裏にこれ等の姿を思い描き、俺はあからさまに嫌な顔で苦虫を噛む。


「……いざという時に咄嗟に動けんか」


 運ぶだけならいざ知らず、戦闘するとなれば何れもこれもが融通の利かぬ姿勢。手の自由がなく、視界も悪い。不便極まりない。


「私も飛びにくいしな。飛行自体はお前が細かく考えなくてもいいのよ。回避も着地も、細々とした機動も、全て委任したらいい訳。自分の翼で飛んだ経験もないのに彼是と言われても耳障りなだけってね」


 飛行移動回避その他諸々については一切合切お任せあれ、助っ人様はただただ戦闘だけお考え下さいましという事だ。生殺与奪の権利を委ねさせられているとも言う。


「加えれば鎧が増えるのも理由だな」

「糞天狗!」


 この体勢になった時から薄々予感はしていたがはっきり言うな!もう駄目だ!完全に肉壁体勢としか思えねぇ!俺は増加装甲か!いや待てよ、もしかして緊急時には撒き餌染みてキャストオフ出来る可能性も……!?


「降ろせ!降ろせ!!これは罠だ!!」

「こらこら、ジタバタ暴れんな!陸に揚がった魚じゃあるまいし!」

「畜生!残酷な身長差だな!?」


 妖故だろうか、女性の出で立ちながら俺よりも頭半個分は背が高く、しかも脚が長めなので現状のタンデム体勢では俺の脚の裏は微妙に地面に着かない有り様であった。女天狗が言うように情けなくジタバタともがくのみである。俺、身長少し高めだった筈なんだがな……!!


「ほれ、馬鹿騒ぎして喚くのはこれ迄!さっさと飛ぶぞ!身構えろよ!!舌噛まないようにね!!」

「おいこら。話を勝手に進める……なっ!!!??」


 態とらしく耳を塞ぎながらの天狗の宣言と警告。それを逃げと判断して糾弾しようとした俺は……次の瞬間に全身に風を感じていた。


「う、お、おぉぉっ!!?」


 それは直角九十度。一気に急上昇であった。叩きつけられるような風の冷たさに俺は激しく揺さぶられる。


「そして止まる!」

「うごっ!?」


 急上昇からの急停止。慣性の法則によって腹から来る衝撃に呻く。内臓が飛び出しそうで縄が千切れて落ちそうな感覚に陥る。


「びびるなよ!その縄はそう柔じゃないんだから!最悪、お前さんの霊力を幾らでも吸って強く締め直してくれるしねぇ!」

「余り、嬉しくねぇ話だな……!!?う、お、お、!?」


 突っ込みを入れるのと向こうが空中を回転するのは同じだった。数回の回転、そしてステップするように左右にドリフトして切り返し、姿勢変更からの上下に急上昇に急降下。また一回転。急旋回。蜻蛉返りに宙返り。急停止。グルグルとトルネード染みて回転しながらの直進……その度に激しい衝撃が俺を襲う。俺は口を開ける事で口の中を噛まぬように注意した。それだけで精一杯だった。


(質の悪いジェットコースターみたいだ!!?)


 全身に叩き付けられる風と衝撃をそのように形容する。因みに俺は絶叫マシンは嫌い派である。気持ち悪くなりそうだ。


 何が酷いかって、恐らくは天狗共の生来の能力か呪具かなのだろう。間違いなく風も衝撃も本来よりは緩和されているだろう事だ。緩和して、これか……!!?内臓が揺さぶられるな!!?


「吐くなら袋にでもやれよ?思考はどうだ?数珠の効果は効いているわけ!?」

「くっ。吐き気は分からん!数珠は……まぁ、無いよりマシだ!」


 腕に巻き付けていた数珠に触れての返答。確かに動揺や気持ち悪さはある。しかしながら呪具の影響か、思考は思ったよりもクリアであった。いっそ、その妙な乖離に違和感を覚える程だ。


「それは結構!慣れて頂戴な!……次、一気に彼方の森に突き進むよ!!」


 女天狗は宣告。そして更に加速する。翼を勢い良く羽ばたかせて風を切る。冷たい風が全身を撫で上げる。

 

 辿り着くのは天高く聳える険しい岩柱と大樹の連なる大自然。天狗は思いっきり広げていた翼を狭める。可変戦闘機の変形を思わせる所作。そしてそのまま更に加速して、岩柱と大樹の間隙を複雑な機動で以て避けながら抜けて行く。


 航空ショーの曲芸飛行、そんな印象が思い浮かぶ。それは天狗の本気の本気の飛行であった。激突寸前で眼前の岩壁を避けて見せて、乱立する木々の狭い隙間を見事に抜けて見せる。スリリングでエキサイティングであった。……酔い止めが欲しい位だ。


「なぁに腑抜けてるんだい!?そぅら、次の段階に行くよ、得物抜きな!!」

「っ!?」


 怒鳴るような催促。突然の命令に、しかし数珠の影響か驚く程冷静に短刀を引き抜いていた。夫人から授けられたものではなく、予備の安物の方を、だ。


 そして地面スレスレを這うように飛行する天狗は大樹の根元激突ギリギリで急旋回、一気に回り込むと……それが姿を現した。


『シャッ!!?』


 妖だ。変哲もない獣の中妖。鉢合わせして間抜け面で驚愕する怪物。そして……刹那にその首が跳ねた。


「おっ見事っ!!」


 背後からの快活かつ大袈裟な天狗の賛辞の言葉。首を背後に向ければ首の断面から鮮血を噴き上げた怪物の骸。ぼたりと崩れる。相手は己の死にも気付けなかった事だろう。第三者からしてみてもきっと目にも留まらぬ一瞬の出来事だった。


「ははっ!初めてにしては筋が良い!上手くやるじゃあないか!じゃあ今の感覚を覚えながら……続けて行ってみようか!?」

「いや、待て!?勝手に話を……っ!!??」


 此方の静止の言葉は考慮に入る事はなかった。通りすがりに発見した鹿妖怪は練習台として首がズレ落ちる。猿妖怪は片腕が吹き飛んでのたうち回った所で天狗ターンによって導かれる短刀で更にもう片方の腕も宙に舞い、最後は頭が刈り取られた。鳥妖怪は咄嗟に気付いて回避しようとしたが、天狗が軌道を捻り変えた事で直撃コースから逃れる事は叶わなかった。


「む、百足で、で、でぇぇぇぇぇぇ……!!?」


 挙げ句には岩陰を回って鉢合わせする巨大百足。バレルロールする天狗によって俺の翳していた短刀はその頭から勢いよく突っ込んで尻尾の先まで容赦なく切り裂いた。錆び臭い青い汁を噴き出しながらあっという間に開きとなる百足。最早通り魔である。妖相手なので同情はしないけど。


「というか!?今の大妖か!!?」

「ギリギリ範囲内って所かねぇ!どうだい所感は?やれそうかい?」

「やれそうかって……」


 会話のためか姿勢と高度は安定させて、しかしやはり森中を縫うように、遊ぶようにして飛びながらの女天狗の言に俺は言葉を濁す。先程の経験を経ても尚、あるいはだからこそ俺は肯定の言葉を口に出来なかった。


 全ては呆気なく、あっという間に終わっていた。擦れ違い様に短刀を向けていれば後は天狗が上手く角度を微調整してくれた。俺は短刀を突き立てるだけで良かった。速度と重さが全てを解決してくれた。己の技量を試す場面なぞなかった。俺は単なる短刀持ち機であった。


「こんなの、俺が居なくても……駄目だったんだな」


 天狗共の皆が皆、こいつ程の速度で動けているとは思わない。しかしながら恐らくは俺を抱えていない分、糞蛇と相対した時の赤坊長は今よりもずっと速かった筈だ。そして前任らしい坊長がこいつより遥かに腕が落ちる者だったとも思えない。それでも食われたという事は……そういう事なのだろう。


 この程度で齷齪しているようでは討伐の道は険しい。


「……おいおい、そんな捨てられた仔犬みたいな反応するなよ。猿の分際で可愛い奴め」


 此方の反応や心中を何処まで感じてか、女天狗は道化染みてふざけて見せる。耳元での囁き。背後から首を掴むようにして顎を掴まれる。犬の喉を撫でるような所作であった。


「人を、飼い犬扱いかよ……!!って、うおおっ!!?」

「あははははっ!!ほれほれ、遊覧飛行だ!!楽しめ楽しめぇ!!存分に味わいなぁ!!」


 文句への返答はこれまで以上に荒いフライトショーであった。激しく激しく、ひたすらに激しく揺さぶられる。荒々しく、荒々しく、弄ばれる。


「うごっ。ぎっ、!?待て、マジで待て!!ちょっタンマ……!!?」


 腹の中がかき混ぜられる感覚に流石に顔が蒼くなりそうなのを必死に耐えての懇願。ゲラゲラ背後で笑う天狗の振る舞いに糞碧鬼を思い起こす。無駄に知恵ある妖はこれだからいけない。手に入れた知恵はもっと真っ当に使って欲しいものである。……そんな事を思えるのも恐らく数珠の軽い洗脳効果によるものなのだろう。


「……あ、待て」


 そして俺は冷静にその感覚を理解する。胃袋の奥底からこみ上げる危急の事態を、嫌な程冷静に。あー、これは割とマジで不味いかも。胃袋が……袋、よし、間にあ、……オウエエェェ!!?








ーーーーーーーーーー

「よぅ。日も下がって来たしそろそろ昼餉にしようぜ?」

「今の俺の状況見てそれを言うか?」


 数珠と革袋のお陰でギリギリ汚い水芸を披露するのを回避して、暫く川の水面で己と向き合い続ける羽目になっていた俺に向けての呑気な発言であった。しかも見せつけるのは干し肉である。人の心とかないんか?人じゃなくて天狗だった。


「情けないねぇ。折角作った朝餉を出してくれちゃってさ。……此方としてはさっさと慣れて貰わないと困るんだがね?」

「いっその事、腹の中を空にしてしまった方が確実だろうさ」


 数日以内にあの高速機動に慣れるのは間違いなく不可能だった。正確には妖化してしまえばいけるかもだが……理性がトびかねない上に女天狗からすれば重くなって敵わないだろう。アレ?もしかして妖化って質量保存の法則逸脱してる?


「腹が減っては戦は出来ぬ。腹を満ちても戦は出来ぬ。難儀な話だねぇ?」

「本番は兵糧丸と水で誤魔化せばどうにかなるかね……うおっと!?何だ!?」


 呆れる女天狗の発言に嘆息していると瓢箪を投げつけられる。落としそうになるのを慌てて受け止める。


「水筒だ。吐いた分水分補給はしないとな?」

「……変な物仕込んでないよな?」

「いや、飯食って呪具受け取ってる癖に今更疑うなよ」

「そうやって油断させるのも妖の常套手段だろうが」


 ジト目で突っ込む天狗相手への模範解答を吐き捨てる。警戒し過ぎ?ちゃんとその手の教訓話は扶桑国ではありふれている。そもそも人柱にしようとしている連中を全面的に信用も信頼も出来ない。結局、この関係は互いに利用しているようなものなのだ。


(監視もされてるしな……)


 ちらりとそれとなく森の中に視線を向ける。妖化の名残で残る鋭敏な五感で感じ取る天狗共の気配。空中遊覧していた際にも感じていた目付役。あるいは荒々しい飛行は五感を麻痺させて連中の存在を察知させないためという意味合いもあったのかも知れない。


 いや、事前に数珠を渡されていた思えばそれも見せ掛けか?天狗連中が一枚岩でないのは眼前の鳥から把握済みだ。分からんな。


(契約の関係上害される事はないと思いたいんだがな……)


 天狗の奸智……何処まで警戒しても不足はない。そして警戒している事を相手に理解している事実そのものが軽率な企みを抑止する、といいなぁ。


「という訳で毒見っと……」


 飲む前に先ずは数滴舌の上に乗せる。妙な物が混ざっていたら舌が痺れる筈って……。


「何じゃこりゃ!?」

「何じゃこりゃって……暗摩名物、暗摩汁だけど?」


 独特過ぎる甘みと苦味を重ねた味わいに思わず唾ごと吐き捨てれば当然顔で名称を語る天狗。突然名物とか言われても何それ知らん……。


「というか……酒、なのか?蜂蜜酒?喉が渇きそうだな」

「身体はぽっかぽかに温まるぞ?……これは飛行業務用で酔いが回り過ぎないように大分希釈してるしな。私らからすれば白湯と同じよ」

「飲酒運転ならぬ飲酒飛行だな。明らかに酒精率一厘以上あったぞ?」


 そう言えばあの碧鬼の存在を思えば妖の酒精への免疫は高そうだよなぁ。化蛇酔わせるとか酒精率どんだけあったんだろう……ふと、そんなどうでも良い事を思いながら俺は瓢箪の中身を指先に数滴垂らす。そして観察する。


 若干粘り気のある黄金色の液体からは蜂蜜と酒精の臭い。間違いなく蜂蜜酒……飛行する故の暖房効果と一時的な能力ブーストを兼ねてるのだろうか?何にせよ非常識な。


「普通の水寄越せ、水を。こいつはいらん」


 天狗に瓢箪を投げつけての俺の要求であった。


 妖から差し出される飲食物というだけで唯でさえ危なっかしいものなのだ。肉と酒は絶対に口にするべきではない。故に最初に手を出した飯は精進料理故であったし、朝餉だって俺も稲葉姫も肉系には絶対に手を出さなかった。あの糞鬼の握り飯?天狗飯以上に絶対食えないね。


「昔は良くお前らが買ってたって話なんだがねぇ。それこそ、可愛い我が子を質に入れても買い占めてたって話よ?」

「そんな取引してたから接触禁止になったのでは?」


 酒は呑んでも呑まれるな。餓鬼と引き替えにしてまで輸入してた時点で真っ当な酒ではあるまい。妖が輸出してた酒な時点で絶対にまともな製法ではない。禁じられるのも当然だろう。


「それだけ有益だったって話なんだと思うんだけどねぇ……ほぉら、白湯だ」


 受け止めた酒入り瓢箪を仕舞って、腰に吊るしていた別の瓢箪を投げつける天狗。匂いと味の確認。今度は普通に白湯であった。というかこっちもあるなら最初から寄越せ。


「んっ…ん、……こんな物か。飲み過ぎても吐くだけだしな」


 中身の三割程を胃の中に流し込んで返還する。どうせまた激しい飛行訓練なのだ。欲張って飲み干しても今度こそ水芸するだけだろう。


「そんな状態では前途多難だな。その様で本番はやれるのか?」

「そのための鍛練だろ?食い終わったら教えてくれ。直ぐに慣らし飛行の再開だ」


 昼飯を食べる天狗に向けて当て付け交じりに要請。お前が呑気に食ってるのを待ってやっていると遠回しに指摘する。


「たく……がっつくなっての。せっかちな男は女に嫌われるぞ?」


 嫌味に気付いて、しかし怒るというよりもからかうように女天狗は宣い、手持ちの乾物を手際良く腹に納めていく。その堂堂とした姿は入鹿を思わせる。あるいは碧鬼ともベクトルが似ているかも知れない。牡丹もだが妖の血はそいつの神経を図太くする作用があるように思われた。……白狐から抗議の悲鳴が上がった気がするが気にしてはならない。


「鳥に嫌われても別に気にしねぇよ。そも、人間を猿扱いしてる癖に白々しい」


 横暴を絵にしたのが鬼ならば、尊大を具現化した存在こそが天狗である。他の妖相手もそうだが扶桑国において天狗は話が通じても友宜の結べる相手でなければ対等の関係を構築出来る相手でもないと念入りに御墨付きを頂いていた。


「酷い物言いだね。元々そっちが先が横暴に鳥鳥言って来るからだろうにさ。……母様への仕打ちへの意趣返しって奴さ。猿呼ばわりくらいで根に持つなよ?」

「……そう言えば聞きそびれていたな。前々から思ってたがそのは、っ!!?」


 微かに剣呑に糾弾する女天狗の態度に、幾度か思っていた疑念を口にしようとした俺は、しかし最後までそれを口にする事は出来なかった。


 震動が、一帯を揺さぶった。


「……!!?」


 地響きと震動に俺は膝を突く。地中から打ち付けるような揺れに森が震えて鳥獣が慌てて飛び立つ。こいつは、地震、か!?


「いや待て。こいつは……!」


 これまでになく緊迫した表情を浮かべて、天狗は急ぎ此方に駆け寄って来る。此方を何時でも飛ばせるように抱き寄せて周囲を見渡す。その姿から俺は状況が宜しくない方向にある事を悟った。


 問題はそれが何を意味するのかだが……。


「ん……?」


 突如として影が俺と天狗を覆った。ゆっくりと振り向いた。日差しを遮る巨柱が視界に映りこんだ。


 百丈はありそうな高みから、地を這い出し蛇の赤い眼光が俺達を射抜く。うん。まぁ……あれだよな?


「……なぁ?これはお前さんの拵えた仕込みの一種か何かか?」

「馬鹿野郎。私ならもっと出来の良い内容で準備するわ」

「成る程。それは最悪だ」


 直後に大地を抉る無慈悲な尾の一振を、女天狗は俺を抱き寄せながらの飛翔で以て切り抜ける。轟音と共に俺達が先程まで佇んでいた地形が無惨に変貌する。


「畜生がっ!!?」


 余りにも早過ぎる修羅場が、始まった……

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