第41話


お姉さんは半ば強引に俺のスマホを奪った。



「どれどれぇ」

「加藤ちゃんの連絡先はぁ?」

本当に電話するんですか?

「するけど」

「何か問題でもぉ」

普通に考えて面識もないのに電話しないですよ

「僕くんの普通と私の普通は違うし」

「決め付けは駄目だと思うよぉ」



たしかに

普通ってなんだろうと思った

そして、お姉さんの勢いに負けて

加藤のアドレスを開いた



「さてさてぇ」



お姉さんは躊躇する事無く電話をかけていた。



「もしもーしぃ」

「加藤ちゃん!」

(え?)

(どちらさまですか?)

「びっくりさせて御免ねぇ」

「山田さんの彼女です。」

(えぇぇぇぇええ!)

(何で先輩の彼女さんが?)

「加藤ちゃんの事が心配で心配でぇ」

「何か出来る事はないのかってぇ」

「凄い悩んでてねぇ」

「告白した相手に心配されるのも逆に困るもんねぇ」

(そうですけど)

(それはそれで私も微妙ですけど)



この会話の内容はもちろん

スピーカにしてもらっているので

俺にも伝わっている



「加藤ちゃんはさぁ」

「パワハラ・セクハラされてたのぉ?」

(私でも分かりません)

(告発したのは私ですけど)

(それが、パワハラとかなのかわからないんです)

「そうだよね」

「でも、辛かったんだよねぇ?」

「大変だったねぇ」

「加藤ちゃんがハラスメントと感じれば」

「それはちゃんとしたハラスメントだよぉ」

「頑張ったね」

「おつかれさまぁぁぁぁぁ!」

(わっ!)

「びっくりした?」

(当たり前じゃないですか)



お姉さんってなんか凄いな

面識ないのにどんどん加藤との距離が縮んでいくのがわかった。




「ねぇねぇ」

「加藤ちゃんは家、どこなの?」

(本条です)

「いがいと近いじゃーーん」

(近いとおもいますよ)

「今日は、ご飯食べれたのかな?」

「そんな気分になれないよねぇ」

(そうですね)

(食欲なかったかもしれません)

「それは駄目だぁ!」

「本条駅から近いのぉ?」

(徒歩で5分くらいですかねー)

「なるほど」

「一時間後に駅前に着くから一緒にご飯食べようよぉ」

(えっ!)

(なんでですか?)

「一緒に食べたいからぁ」

「それでけだけどぉ」

「駄目なのかな?」

お姉さん、初対面でご飯はちょっと

「なんでよぉ」

「初対面でも食べるでしょぉ」

「それじゃ、支度してねぇ」



お姉さん、流石に強引ですよ

「強引にいかないと、駄目なときもあるんだよぉ」

「一人で、もやもや考えても何も良い事なんてないよ」

それにしても強引だと

「駄目だったぁ?」



お姉さんの言ってる事はいつも大胆だ

でも、それで俺は何回も助けられている

お姉さんを信じる事にした。



何か考えがあるんですよね?

「特に何も考えてないよぉ」

え?

「ほら、僕くんしないとぉ」

「加藤ちゃん迎えに行くんだから」




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お姉さんのからかい上手。 来未 希(くるみ のぞみ) @mikeneko2989

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