第30話わたし好きなんです。



「先輩、彼女いますか?」

うん、居るけど

何で急に?



さっき先輩が言ってた事か?

「加藤はお前の事、好きだぞ」

そんな訳がない

妹みたいに見ていたし

あいつもきっとその認識で居たに違いない

普通に答えれば良いだろうと思った



「なんか最近、小奇麗になりましたよね」

そうか?

どの辺がよ

「寝癖も無いし、ワイシャツも綺麗にアイロンかけてたり」

「極めつけは定時で帰る様になったこと」



そんな所までみてるのか女子って

すごいの一言しかでない

でも、なんで

興味の無い俺のことをみていたんだ?



「同棲とかしてるんですか?」

いや、してない

まだ、付き合い始めてから日が浅いし

なんか、掴みどころがないと言うか

でも、大好きなんだよな

「彼女さんが羨ましいです」

えっ

なんで?

「先輩、自分の事、過小評価しすぎですよ」

そうかな

仕事も普通だし

見た目も普通だし

どこにでもいる男だろ

「だから、それが違うんですよ」

「仕事は、速いって先輩たちが言ってましたよ」

「それに、時折だす優しさは女子からしたら卑怯だと思いますよ」

「疲れたと思っていたら缶コーヒー奢ってくれたり」

「そんな、単純な気遣いが女子は嬉しいもんなんですよ」

そうなんだ

俺って優しいのか

知らなかったな

「先輩、顔がニヤけてますよ」

そうか



嬉しくないと言われれば嘘になる

そりゃ

顔も緩くなってしまう



いいから、早く食え

「はーい」

あと、どれくらいで終わりそうだ?

「もう終わりました。」

やれば出来るじゃん

確認するから食い終わっておけよ




だから、先輩それが駄目なんですよ

座っている私から覆いかぶせる様にパソコンの画面を観て直ぐに褒めるんだから

褒めないでよ先輩

ミスしたの私なんだから

ずるいよ

どきどきしちゃうじゃん




バッチリだな

お疲れ様。

「やったー」

今回は許すけど次回は許さないぞ

ニアミスだからな提出する前に必ず確認しろ

そして、一人で仕事は抱え込むな

わかったか?

「わかりましたよー」

夜も遅いし途中まで送ってやるから

支度しろ



「先輩、もう出れますよ」

OK

じゃ、行くか

「はーい」

「こらこら、加藤、言葉を伸ばさない」

おいおい

先に言うな

一応、お前の世話係りだぞ

言わば俺はお前の上司だぞ

「分かってますって」



加藤は俺を追い越し振り向いて俺に話しかけてきた



「先輩、私」

「告白して良いですか?」

はっ?

なんだ告白って仕事のミスまだあるのか?

勘弁してくれよ

「そんな訳ないじゃないですか?」

じゃー

なんだよ?



加藤はめちゃくちゃ間をおき

大きな声で



「先輩!」

「わたし、先輩の事が好きなんです!」

どんな冗談だよ

「真剣ですけど!」

「まだ付き合ったばかりでしかも相手の事も」

「余り知らないんですよね?」

それはそうだけど

それも恋だろ

「先輩は私の事をただの後輩としか見れないですか?」

「妹のようにしか見れないですか?」

妹では無いけど

俺の後輩だと思ってみてる

「じゃー」

「今日から、異性としてみてください」

なんでだよ

「良いじゃないですか」

「諦めたく無いんですよ」

どう言う事だよ

「好きのままで良いですか?」

好きって言われて嫌な奴は居ないと思うぞ

「忘れるまでは先輩の事を好きでいかせてもらいますから」

忘れるまでな

「私、振り向かせる自身ありますから」

「今の言葉、忘れないでくださいね」

好きにしろ



加藤は凄く笑いながら言っていたけど

きっと本気で俺の事を好きなんだろうな

でも、俺はお姉さん以外

好きになるって事、

あるのかな?


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