第29話後輩



昼食を終えデスクに座り次の案件に入るところで

後ろから



「せんぱーい!」

言葉を伸ばさない

もう、社会人なんだから

「そんな事で何で注意するんですかー」

癖を直すことも仕事だ、お客様と接する時に困るのは加藤だぞ

「はーい」

おい!

「そんな事より今朝、渡した資料は見てくれたんですかー」

今、見るところだけど

「もう!」

「遅いんですけどー」

申し訳ない、急ぐからもう少し待っててくれ

「今日は、残業したくないんですよねー」

彼氏か?

「それ、セクハラですよ!」



加藤は少し強めに言い、振り返って自分のデスクに座った

難しい時代になったものだ

すると、横にいる先輩から

「ありゃ、駄目だよ山田」

何がですか?

「お前ら付き合ってないんだろ」

「でも、加藤はきっとお前が好きだ」

なんでそんな事を思うですか?

「あいつの話し方を見れば分かるよ」

「俺と話すときは普通で」

「お前と話すときだけだぞ、子猫に見える時って」

いやいや、あいつは単純に子供なだけですよ

「モテる男は違うねー」

「早くみてやれよ、それ俺も関係してる案件だから」

分かってますよ



プライベートが良くなったとたんに俺の仕事が段々と増えて行くこともあり後輩に引き継ぐ案件が増え責任を負う仕事が増えていた

プライベートが上手くいくとその他も充実するって先輩たちが言って事は嘘では無かった

加藤が作った資料を見ると一見しっかりとした様に見えたが

数字の入力ミスその事によりグラフがメチャクチャだった。



加藤!

ちょっと

資料、見たぞ頑張って作ってた事は知ってるそこは褒めてやる

が!

数字ミスでグラフがメチャクチャだ

やり直しだ

「えーーー」

「残業したく無かったのにー」

「先輩が確認するのが遅くて残業確定ですよー」

提出する前に確認してから出せ

そうすれば、時間の無駄が減るだろ

「はーい、すぐ直しまーす」

おい!

「はいはい、伸ばさない伸ばさない」



真面目なのに少し抜けてるんだよな

ムードメーカーの特権なのかすぐに周りの同期人がからかいを始める

見ているだけならホノボノするんだが

優先順位の高い案件のホノボノに見えない



「おい、山田」

先輩が声をかけてきた

はい、どうかされました?

「定時だぞ、最近ずっと定時だろ」

「定時に帰るようになってから一気に仕事が出来る様になったな」

そうですか?

「でも、これからもっと忙しくなるぞ」

そうなんですか?

「今度、立ち上げるプロジェクトに俺が抜擢された」

出世じゃないですか?

「そこで、俺の仕事の割り振りをしないといけない訳」

「今、俺がサブリーダーをしてる所に入れる予定だから」

え!

あの、プロジェクトって結構デカいですよね?

「俺が一番可愛がってるお前を推薦したから」

「良い経験になるから頑張れよ!」



背中を強く叩かれた

そんな事より仕事で認められた方が嬉しくて痛くなかった



「せんぱーい」

おっ

加藤どうした?

「どうしたじゃないですよー」

「先輩が帰ったら誰がチェックするんですか?」

確かにそうだな

「私だって帰りたかったんですからねー」

すまん

俺も、残業するかな

「あら、珍しい」

早く終わらせろよ

「はいはーい」



加藤は振り向き口を手にあてている

きっと俺に注意されると思ったからだろう



結構、腹へったな

時計を見ると22時をさしていた

俺は、加藤の様子を自分の席からみた

気難しい顔をしている

俺はあんな顔をしている加藤を見たことが無いこともあり



ブハッと吹きだしてしまった。

オフィスに俺と加藤しか居なかった為、想像を超える響きだった。



「せんぱーい!」

「今、笑ったでしょう!?」

いやー

笑うでしょういつも笑顔な奴が真剣に取り組んでる姿をみれば

「ひどいですよー」

悪い悪い

もう、終わりそうか?

「後、少しだと思います。」

そっか、夜も遅いし今日は帰るぞ

「いや、あと少しなんで終わらせちゃいます」

そっか

申し訳ないけど俺は帰るぞ

「はーい」

じゃーな

「お疲れ様です。」



あいつかなり疲れてたな

ちょっとお洒落なカフェで軽食でも買っててやるか



おーい

加藤、これでも食って頑張れー

「良いんですか?」

お前の為に買ってきたんだから良いに決まってるだろう

じゃーな

「先輩」

うん?

「流石に一人で食べるのは寂し過ぎますよー」

確かにそうだな

見ててやるから食え

「見つめられてると恥ずかしいですよー」

じゃー

どうすれば良いんだよ

「何かおしゃべりしましょうよ」

ネタがないぞ

「ありますよ」

どんな?

「先輩、彼女さんいますか?」












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