11日目「たのもーう、幼馴染よ!」


 人間という生き物は不思議だ。

 驚いて、怒って、許して、笑って、楽しんで、そしてまた——驚いて。


 感情や行動のサイクルを繰り返していき、いろんな人との交流を深めていく。最初から否定せず、直観的なものは頼らずに相手としっかりと話をして解決していく。たまには印象で決めることもあるけれど、決めつけないようにと自制して——少なくとも俺はそうやって生きてきた。


 あの日、俺が椎奈真音しいなまおんという女性に会った日の様に、変な出会い方をしたとしてもこうやって同じ屋根の下で暮らしているのだから。


 そう、夏休みのある日。

 

 ——俺は野生の巨乳ロリに出会った。



―――――――――――――――――――――――——————————————



「——っおいしいね!」


「——はぃ」


 はにかんだ笑顔を見せる真音さんをどうして直視できないのか、その理由は自分でも分かっている。しかし、身体というのは正直でぶっきらぼうに返事をしていた。


「どうしたの? 朝からぼーっとしてるけど……もしかして、口に合わなかった?」


「いやっ、そういうわけじゃないです!」


「じゃあ、なんで……うわの空な顔してるの?」


 ほんと俺も罪深い。

 意味ありげな顔をしといて——実際はというと昨日の事なのだから。


 だって、仕方ないじゃないか! 不意に手を掴まれて、あんな顔までされて、見方によれば誘っているようなものだぞ! この、健全な思春期男児である高校二年生の高橋亮介がドキドキしないわけないだろうが‼‼ それも、一日経っても拭えるわけもないやろがい‼‼


 ——っはぁ、っはぁ。叫ぶのも疲れるなぁ。


「……怒りません?」


「怒らないけど……?」


「昨日のが——かくかくしかじかで——」


 すべてを事細かに説明すると、真音さんが徐々に顔を真っ赤に染め上げていく。ていうか、マジ可愛い。可愛すぎ、もう結婚したいくらいだ。——おっと本音が、今のなし。


 しかし、そんな可愛い彼女のおかげで自分が今、何を話したかなど覚えてもいなかった。というか、顔しか覚えてない。当たり前だが。


「……それはぁ、えっとぉ……えへへっ」


 さらに赤面しつつも何とか隠し通そうと微笑む真音さん。


 かぁ~~、たまらん。


 こういうところで妙に頑張るから、不器用なお姉さんって感じがして男心をくすぐってきやがる。昨日みたいに、ずっと積極的で何にも気づいていないのも悪くはないが、照れる彼女も捨てがたい。


「なんで笑ってるんですか……」


「っへへ……なんだろうね、嬉しいからかな?」


「まぁ、僕も言えませんね。それじゃあ」


「え、そうなn——!?」


 刹那だった。

 真音さんがそう言おうとした瞬間、ピンポーンピンポーンとインターホンが鳴った。普段は使われないインターホンが火を吹いたせいで少し体がビクついた。


「うわっ」


「びっくりしたぁ……」


 お互いに目配せしたが身に覚えはない。通販で何か買ったのか、それとも部活か……。いや、今日は部活オフの日だったはずだ。


 では、一体……。


 そうやって二人で静止しているともう一度。


「で、でます?」


「う、うん……」


 恐る恐るドアに手を掛ける。そして、一度息を吸ってドアノブを捻った。


 ガチャン――ッ。

 そんな音とともに、聞き覚えのある声がした。


「——たっのもーーう‼‼ りょーすけよぉぉお‼‼」


 ボーイッシュで少し拳が効いていて、それでもどこか張り上げるように突き抜けた高音ボイス。元気よさそうなそれが——俺の頭をこねこねと撫でていた。


「あはは……、遂に来てしまったよ、亮介」


「来てやったぞ、我が弟よ!」


「弟じゃないだろ、真広まひろ


「いやいや、こいつは真広の弟みたいなもんだよ! んで、あんたはお兄ちゃん!」


「ははっ、それもそれで悪い気がしないな」


 急に来て、急に話し始める二人。


 そのうちの女の方が、いや——俺の幼馴染である吉岡真広よしおかまひろがずっと頭を撫でている。


 貧相な胸を張って、腰まで伸びた蜜柑色の長髪を揺らす彼女。身長は真音さんよりも少しだけ高めの150㎝そこらで、撫でている割には足をピンと伸ばして頑張っているのが見て取れる。小さい姉と言うべきだろうか。


「お、清隆、わかってるぅ!」


「だなぁ!」


 そして、その隣。


 同じくゲラゲラ笑っている好青年の様な容姿をしたのがもう一人の幼馴染である高嶺清隆たかねきよたか。毛先を少し遊ばせて、空に輝く綺麗な茶髪が陽キャラであると宣言していた。くしくも、その通り。学級委員長を務めるクラスの中心的な存在だ。俺では一生勝てない友達である。


「——なんで、お前らが」


 そんな二人に驚きつつも尋ねると、返って来たのは衝撃的な言葉だった。

 

「なん、で——あれれ、白を切るつもりなの?」


「亮介、お前知らないのか?」


 目を合わせて、首を傾げる二人。

 対して、こちらも何のことだか分からなかった。


「お前が、おっぱいおっきな大学生のお姉さんと付き合ってるって噂立ってるんだよ」


「おっぱ――!? はぁ⁉」


「そうそう。いやねぇ、お姉ちゃんも我が弟が健全な男の子で安心してるけど、そのが——どうにもねぇって思って……」


 じっーーと俺の背後を見つめる真広。

 しかし、ハッとして振り向くとそこにいたのは真音さんだった。


「これがぁ、ねぇ……」


「おぉ……おっきい」


「ってどこ見てんだ‼‼ やめろ‼‼」


「ははっ、これは失敬失敬」


 俯いて状況を整理する俺に、後ろであわあわと口を震わせている真音さん。

 幼馴染が乱入してくるとはまさか、予想外だった。

 ていうか、今日は何もないぞ……それにいつも気を付けてるし、一体どこで……。


「くっそ、なんなんだ……」


「わ、私も一体何が何だか――」


「うわ、あんたがそれ言っちゃうの? 真広の弟にちょっかい出しておいてさ?」


「ちょ――だ、出してないよぉ」


「ふぅーーん、まぁいいわ。上がるから!」


「え?」


「りょーすけ、入れなさい!」


「はぁ⁉」


 どこどこと突き進む自称姉の真広と自称兄の清隆。

 真音さんが居なくなる数日前なのに――どうしてこうなった?



<あとがき>


 さぁ、幼馴染の登場に修羅場的展開! この後の四人はどうなってしまうんだぁ⁉

 良かったら、コメント、お星さまも恵んでいただけるとありがたいです。そして、600フォロー突破ありがとうございます‼‼ 皆様の応援のおかげです! なんとか1000フォロー行かないですかね……笑

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