10日目 「映画を見よう!」
夏休みのある日。
——俺は、野性の巨乳ロリに出会った。
いやはや、盾についてきたな。この台詞。そろそろ名言集MADに出てもいいんじゃないかって思うんだが、あれか、もう似たような言葉の先客いたような気がする。二番煎じだぁ? 仕方ないじゃないか、本当に野生だったんだから……。
俺はあくまで事実を述べただけだ、そうだそうだ。お前ら傍観者に見せてやってはいないのさぁ!
あはははははっはははは‼‼
気持ちぃ、気持ちィよォオオ‼‼ さいっこうにィ―—決まっちまったよォオメェハァアアアア‼‼
ケハハッ‼‼ ケハッケハハッハハハハハハ‼‼‼‼‼‼
————って、これもパクリになるか。一方通行カッコいんだけどなぁ。あの白髪と赤目、そして最強の称号にチート級の強さはそこらのなろう系主人公と戦わせてみたいぜ。
って、何やってるんだ俺……。
——んなことはどうでもいいんだよ。
いよいよ、俺たち二人の馴れ初め、いや、同棲生活も終わるころ。
涙ぐんでもいいんだけど、そんな感動チックな話でもないか……。
―――――――――――――――――――――――——————————————
「……ん」
小鳥の囀りと夏のじめじめとした暑さに俺は目を覚ました。
「あ、起きたぁ?」
「……ぁぁ、ま、おんさん……おはよ、ございます……」
「あらら、まだ眠そうだね」
「いやぁ……ちょ―—って、ん?」
「んー?」
ゆっくりと瞼を開けると陽の光が差し込める。
そんな光に目を
どうやら、いつも通り台所で朝ごはんを作っているようだった。換気扇から洩れただしの香りが鼻腔を滾らせる。おそらく、真音さんの得意料理であるしめじと豆腐のみそ汁だろうか。
―—って、何分析してるんだ俺。そうじゃない、全然違う!
昨日、確か映画を見るとか何とかって言っていた気がするが——果たして俺は映画を見ただろうか?
その疑問が真音さんのエプロン姿を見つめていると頭の中を駆け巡る。
————そして、出てきた答えがこれだった。
「……すみませんっ‼‼ 真音さんっ‼‼」
「——えっ」
「あの、昨日俺寝ちゃっててすみません‼‼」
頭を深く下げて、まるで長座体前屈の如き態勢をとった。これが我が最大の謝罪、最強の土下座だ‼‼
何言ってるんだ、馬鹿かよ。
「あ、あぁ―—別に大丈夫だよ?」
「いやでも、真音さん結構楽しみにしてたし……なんかすっごい、申し訳ないというか……」
「いやいや、大丈夫だよぉ。結構疲れてたみたいだし、部活でヘロヘロだったでしょ? 私もオフの日にしてあげたほうが良かったかなって思ってたし……」
「それは……まぁ」
「んね? あ、でも今日は休みじゃなかったっけ、部活っ」
ニコッと微笑みながらこちらに目配せをする。もちろん、たぷんっと揺れた胸に視線が集まる。逸らしても逸らしてもどうしてか目が向かってしまって俺には何もできなかった。そろそろ慣れてきたと思ったが、胸、ましては巨乳だけはまじで慣れないようだ。
「えっと——はい、まあ一応」
「——じゃあこの後、映画見よ!」
☆☆
「それでぇ、何見たい?」
「あ、えっと……」
久々につけたテレビの前にて、正座をする真音さん。その隣で胡坐をかく俺に彼女はバックから取り出したDVDを見せつける。
一枚、二枚、……そして七枚。
「どんだけ借りてるんすか……」
「え、いいじゃん! 今日はずっと二人で映画見ようよぉ、面白いよ? これとか、これとか……」
「ホラーと、シリアルキラー……なんすかこれ、怖すぎません?」
「えぇ! これ名作なんだよぉ! ずっとループするから変なところとかくすぐられるし、変に面白いから何とも言えないよ‼‼」
「そ、そんなに……」
「うん! あ、でも……こっちの戦争映画もいいかも!」
「ぷ、ぷらいべーと、きりあん……」
「そうそう! 本当にあったノルマンディー上陸作戦を舞台に前線にいるキリアン二等兵を助けるお話んだんだけどね、すっごい感動出来て、最後の終わり方にはもう涙がねっ‼‼」
「——お、おぉ」
さすがの圧。π圧といってもいいかもしれない。
普段からアニメしか見ない俺からしてはよく分からない興奮ようだ。
「……」
「な、なんです?」
俺がぼーっとDVDを眺めていると彼女が下から顔を覗いてきた。くりくりと輝く大きな目が俺を見つめていて、心なしか頬も赤く染まっているようだった。
童顔、最高かもしれん。ロリには興奮しないと自負していた頃の俺が忌々しいぜ、まったく。
「いや、なんか楽しくなさそうだなぁって」
「————いやいや、そういうわけじゃないですよっ」
「ほ、ほんとにぃ?」
「はい、ただ少しびっくりしてんボヤついてたというか……楽しくないわけじゃないですよ!」
迫る童顔、そしてπ。
なにより、心配そうに上目遣いを向ける姿が見てはいけないものを見ているような感覚になって少し怖くなる。
「な、なら……いいけどぉ……」
「はい、大丈夫ですっ! そうです、そうですよ! ほら、それならこの恋愛映画でも見ましょうよ! ね、ね!」
冷や汗が額から垂れた。
さすがに何とかしなきゃいけないだろうと感が囁いていたので、凄くほっこりしそうな恋愛映画を指さした。
「あ、あぁ……これ?」
「はい! み、見ましょう!」
「う、うん……」
飲み込んだかのような返事に俺もさすがに申し訳なくなる。別にそういう意味でぼーっとしてたわけじゃないんだ、可愛かったし、映画も面白そうだけど少しなんか、驚いただけだったんだ。
―—そんな理由も口には出来ずに、俺たち二人は映画を見始めた。
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