異種族転生…どうせ人になるなら意味なくね?

葵流星

異種族転生…どうせ人になるなら意味なくね?

俺は、無職でいわゆるニートだった。

学校は不登校気味…いじめに遭っていた。

この世界が憎い…。

つらい…。


年齢?


かなり、現実的な年齢だ。

異世界転生の主人公と同年代…社会人でないし、高校は卒業した。

そんだけ…。


つまり、もうどうでもいい。

俺は、この謎の白い空間に居て、偉そうな椅子がある。


…異世界転生だ!


俺は…幸せになれるんだ!


そう、俺はこれから女神に会い、エロゲ並みのハーレムを築き上げる!


ああ、なんて幸せなんだろう…。


「おっす、中年チビデブハゲ

「なっ…。」


こらえるんだ…ここで、上手く立ち回れば…。


「よう、管理者…。俺は、下山和人だ!」

「はいはい…お前の人生なんかどうでもいい…それじゃあ、イケメンで能力マシマシハーレム…二郎系ルートでいいよね?」


そう…管理者なのか…何も名乗らない神はそう言った。


さすがに…俺もキレちまったよ。

というか、ここは雰囲気ぐらい盛り上げてくれない?

というか、なんかだらしない白衣で、ジーンズ黒ベルト、『疫病闊歩』という文字の書かれたいわゆるダサTの神はそう言った。


「…あのさぁ…なんか、適当過ぎない?」

「私は、異世界転生RTAを目指しているんだ!」

「…えぇ。なんだ、それ?」

「これは、とある神が土砂崩れに巻き込まれて死んだ野球部員を異世界転生させた『3回』の回答の記録を、私が打ち立てたいんだ。

…もう、君ではもう…ダメだが…。」


異世界転生RTA…。


…どういうことだ。

そんなものが…あるのか?


困惑する俺が自分の腕を組むと、若返っていたというか、中学生くらいのイケメンの男になっていた。


「…待ってくれ…少なくとも、異世界転生モノの小説に従ってだな。」

「記憶改竄するから、問題なし。」

「身も蓋もない!」

「どうせ、この後登場しないから良いだろ?

というか、私も異世界転生モノのアニメとか、ライトノベル、漫画は読んだ。

そして、実際に神だ。

主人公達のオナニーに等しい前世の俺は、私は…こうだった。

不幸だ…は、もう飽きた。

そもそも、東アジアにおける無宗教層の異世界転生願望の増加により、ただでさえ転生させる死者が多くなっているから…普通に手続きを踏むと面倒くさい。」

「…メタい。」


えっ…何?

人類全体で、そうなっているの?


「…とっ、とにかくだ!まずは、あんたの名前とさっき言った3言について教えてくれないか?」


俺は、もうこの際だからと神にそう聞いた。


「私の名前はエクボ。

それとさっきの3言は…。

『能力魔法マシマシハーレム付き?』

『中世ファンタジーな世界がいい?』

『何かやりたいことは?』…だ。」

「それで、その返事は?」

「はい、いいえ、野球がやりたいだ。…彼は、メジャーリーグに行って幸せに余生を過ごしている。」


そりゃあ、3言で足りるわなと思った。

じゃあ、俺の番だ。


「なるほど、それで…俺は?」

「はい、はい、エッチなこと…で良いだろ?」

「…その通り…と言いますか、なんか困難的なことはない?」

「ああ、恨み異世界転生希望か。」

「…ひでぇ、ネーミングセンス。」

「まあ、喋り方がその身体になった後、どっかで見たことある主人公のような話し方で、脳内が絶望を知る前の状態になっているから…そっちが良かったか…。」


…完全にディスられてる。

確かに主人公にあるまじきキモさというか…ああ、もうパクリです!

パクリました!

俺は、無口で陰キャで早口で女子とも話せませんでした!

異世界で興奮して、調子乗ってます!


「良かったな、お主。トラックに轢かれて死んで…トラックの運転手はブラック企業で過労死というか、心臓発作でお主と同じくめでたく異世界転生している。

死にやがれ人類。」

「なっ…神様なのに…。」

「いやだって、痘痕(あばた)の神だから…。」

「あばた?」

「天然痘の神だ。」

「…天然痘?」

「…世界全体の知能レベルも低下させてやるわ。ようするに、病気の神だ。」

「そんな…危ない神様が俺を転生させて…。」

「大丈夫、記憶改竄して巨乳ロリシスタードジっ子に転生させて貰ったことにするから…。」

「…おっさんやんけ。」

「ヴァーチャルユーチューバーと言うのと同じだろ?ボイチェンしている配信者。」

「なんか、すごい今風のことを知っている神様で話しやすい。」

「まあな、暴れてないだけだし…。」


※天然痘は、かつて人類に猛威を振るった病で現在でも直接効く薬はなく、ワクチンで罹らなくなる方法しかない。この世界ではWHOが根絶を宣言している。

異世界では…わからない。



「じゃあ、蜘蛛かスライムでいい?」

「う~ん、なんかドラゴンとか、剣とかでもいいかなって…。」

「一つ思うのだが…。」

「ん?」


この時、この後…記憶改竄されるから良かったと思った。


「どうせ…人になるんだから意味なくね?」


エクボはそう言い放った。

たぶん、そう言う小説を書いた作者さんも同じ事を後から思っていると思う。

そう…どうせ意味がないのだ。

チートと、能力で這い上がるから…。


「…そうですね。」

「いやさぁ…なんていうか、成功体験が欲しいんだよね?

たぶん…。

どうせ万人するラブコメで文章量を作者さんが稼いでいると思うし…。

なんか、自分の動物も人化させるわけで…。

そう言った、絶望的な状況に置くって神様まじ酷い、生き残ってやる的な表現でもあるし…。

文系は過程を大事にするけど、理系は結果が同じわけだから…これ、パクリじゃね?とか、タイトル詐欺になったじゃんとかあるわけだ。

私がそう言った異世界モノの作品書く時もそうするもん。

結局、前世並みに意味のない設定だと私は思う。」

「…ごめんなさい、産まれてきてごめんなさい。」


ああ…そっか…どうせ異世界転生した後の現実世界でどうだったなんてまったく使わない設定だもんな。


…俺の前世…本当に無価値だ。


たぶん…みんなもそうだろう…。


「じゃあ、勝手に決めるから…。」

「はい。」

「…一応聞くけど、蜘蛛でいい?」

「蜘蛛はちょっと…。」

「太宰治の蜘蛛の糸って、知ってる?」

「知ってますけど…それが?」

「恨み異種族転生モノは、それの成功版なんだよ…。」

「…どういうことですか?」

「あの話はさぁ…。

生前助けた蜘蛛が基で、お釈迦様が糸を地獄に差し伸べてくれるじゃん?」

「そうですけど…。」

「そんでさあ…。

この立場を今に置き換えると私がお釈迦様で、能力とチートが糸、絶望的な状況に置かれるのが君で…。

普通に、君は登りきってしまうわけだ。

掴む人が君しかいない、出来レースで…。

オチい。」


蜘蛛の糸のオチは、結局…地獄に落ちたままでいるという話だ。


「ようするに…つまらないと?」

「そう…それで、何に転生する?」

「地方の有名でプレッシャーも掛からない、将来安定な貴族の息子で…。」

「わかった、さらば…少年。」

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異種族転生…どうせ人になるなら意味なくね? 葵流星 @AoiRyusei

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