第2話 走馬燈
俺は、どこで失敗していたのか?
今まで生きてきた人生を思い返してみた。
小さい時から、両親が不仲で、喧嘩ばかりする姿ばかり見ていた。
両親が喧嘩をして、父親が家を出ていくと、決まって母親は、俺に父親の悪口を言っていた。
小さかった俺は、母親が何を言ってるのか理解は出来なかったが、悪口を言っていた事は分かっていた。
小学生の途中の時に両親は離婚した。
父親は俺を置いて、単身で出ていき、俺は、母親に引き取られた。
小学生の時に名字が変わった事で俺は、いじめられた。
俺は、いじめれている時にずっと思ってた。
ー父親と母親が揃っている事がそんなに偉いのかと。片親はそんなに悪い事なのかと。
離婚した後も、たまに、父親は、母親が仕事でいない時を見計らって、俺に会いに来た。
俺をドライブに連れ出して、焼き肉を食べに連れて行ってくれたり、ゲーム機を買ってくれたりしてくれた。
嬉しかった。
ドライブから帰ってくると、母親が家に居た。
母親は、父親と何か話をして、お金の入った封筒を渡していた。
今、考えると養育費だったのかもしれない。
父親が居なくなった後、母親は、封筒のお札の枚数を数えて
ー少ねえ・・・
と顔を醜くゆがめながら嘆いていた。
そんな母親の姿を見るのに嫌悪感を抱き始めた。
小学生の時に、いじめられていた俺の事を学校の先生から聞いた母親は、先生に対して異常なくらい怒って、俺にあんな学校に行かなくていいと言ってくれた。
小学校には途中から行ってない。
家に引きこもる俺の姿を見て、母親は、将来どうすんの?と嘆いていた。
俺は勇気を出して、小学校の卒業式が終わった後に、生徒が皆、下校し終わった小学校に行き、卒業証書を貰いに行った。
その俺の姿を見て、母親は
ー学校のあいつ(先生)に来いと言われたのか!?行かなくていい!!
と俺の勇気すらも否定した。
俺は、自分の意思であった事を言えなかった。
母親に否定されるのが恐かった。
それから、中学校も行かず引きこもってゲームをしていた。
そんな姿を見て、母親は、時に泣きだし、時に怒鳴り出し
ー将来どうすんの?
と嘆いていた。
あの時、勇気を持った行動を貫き通せば、人生は変わっていたのかもしれない。
当時は、気づかなかったが、今、思うと、母親は毒親というやつだったのかなと思う。
母親の嘆きに耐え切れなくなり、俺は勇気を出して、高校受験した。
誰でも、応募すれば受かるような定員割れしていた高校だったから、簡単に受かった。
それから、俺は、死ぬ気で人生をやり直そうと頑張って高校に通った。
ひきこもりの期間が長すぎて、他人とのコミュニケーションの取り方が分からなかった。
周りから浮き始め、当然の如く、俺はいじめられた。
だけど、死ぬ気で、いじめを受け流した。
ここで、折れたら、もう、人生をやり直せないと思って。
そんな俺の姿を見てなのか、高校2年生に上がった時に、友達が出来た。
徐々にいじめをしてきた奴らも、問題を起こしたり、出席日数が足りず、留年が決まったりして高校を辞めていった。
その後、無事に就職が決まり、高校を卒業した俺は、会社員となった。
やっと、平穏な生活を手に入れられると思った。
だが、人生そんなに上手くいくはずが無い。
俺が入った会社は、俗に言うブラック企業というやつだった。
毎日、朝早く仕事に行き、終電に帰るという仕事生活に、徐々に精神は疲弊しきっていた。
でも、死ぬ気でやり直そうとしてた、高校時代の経験をかてにして3年頑張ったある時、俺は、身に覚えのない会社のお金を横領した罪を突き付けられた。
横領金額は、300万円だった。
頑張ろうと思えば返せる金額だと思うが、ブラック企業の少ない給料で返すのにはとてつもない期間が掛かる。
なら、いっそ、俺を横領の罪で捕まえてくれと言ったが、ブラック企業の上司から言われた言葉が
『横領の罪で刑務所に入れたとしても、出所後に払ってもらう事になる』
『前科を付けた状態で仕事探せるのか?返済出来ると思ってるのか?』
『なら、このまま逃がさないで、横領した罪を償いながら、うちの会社で働いて返せ』
だった。
俺はこのブラック企業から半強制的な奴隷契約を結ばされることになった。
俺は横領等していないのに、横領した奴だいう目で、会社内から見られて仕事をする環境は、終わりが見えない地獄だった。
思い返してみたら、散々な人生だった。
もし、願いが叶うのなら
普通の家族の下に生まれて、普通の家庭を過ごして、普通の学生時代を過ごして、普通の会社員になって、普通に過ごしたかった。
もう、遅いけど。
2nD LIFE 山羊 @yamahituzi
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