2nD LIFE

山羊

第1話 さよなら人生


深夜の川沿いの橋に俺は、立っている。


数日前の深夜も俺はここに来た。


飛び降りようとしたけど、恐くて出来なかった。


ここで、俺は、本当は死んでいたんだと思って、次の日の朝、勇気を持って奴隷生活を送ろうとした。


だけど、心の底から、トラウマを植え付けられてしまったのか、俺は、奴隷場に向かえなかった。


一人、家で体育座りをして震えながらうずくまっていた。


携帯が鳴るたびに、体が拒否反応を起こすのか、震える。


物音が聞こえる度に、あいつが迎えに来ると怯え震える。


耐え切れなくって、携帯の電源を切って、あいつに見つからないように、家から逃げ出して、誰にも見つからないように満喫まで走った。


周囲の目が恐かった。


あいつに見つかったら最後だ。


あいつに見つからないように、満喫に泊まって数日が経った。


満喫の他の客が入る音が聞こえる度、従業員が歩く音、他の客が歩く足音、声、物音が聞こえる度に、あいつが迎えに来た。

と幻聴と錯覚がより、俺の精神を追い詰めていった。


家に帰ったら、あいつに見つかる。


だけど、満喫に泊まって生活する資金も、底を付いた。


もう限界だ。


深夜、俺は、満喫を出て、あの川沿いの橋に向かった。


自殺する方法は、満喫のパソコンを使って調べた。


電車飛び降り自殺は、多額の賠償金を遺族に請求されるのと、電車の速度によっては失敗する可能性がある。

自殺の名所と呼ばれていた駅も、先人の自殺者が多すぎた為、ホームに自殺者対策が施されている。


ビルの飛び降り自殺は、飛び降りるビルの階層によっては、失敗に終わる可能性があるのと、飛び降りた先で通行人とぶつかってしまった場合は、迷惑が掛かる。


どうせ、死ぬなら関係ないだろと思うだろうが、糞みたいな俺のプライドで俺の奴隷人生を終わらせる為に、他人に迷惑はかけられない。


その他、自殺法を調べて見たが、中々、成功率が高いものは意外とないものだ。


なんで、この国には安楽死が無いんだ。


俺は、悩んだ結果、川に飛び降りる自殺を選択した。


この自殺法の利点としては、他人に迷惑が掛かりづらいバージョンのビルから飛び降り自殺みたいなものだ。


俺の糞みたいな最低限のプライドが守られる。


俺は、この自殺法が失敗する理由にありがちな、他人に見つかり、救助を呼ばれるという可能性を無くすため、決行日を深夜に選んだ。


周りに人が居ないことは確認済みだ。


飛び降りる時の恐怖心を消すために、満喫で大量の缶ビールを飲んで、酔っ払い、思考回路を鈍くした。


そして、橋の前でも缶ビールを一気飲みし、極限まで思考回路のスローモーション化に拍車を掛ける。


俺は、最後の勇気を振り絞り、橋の石の柵の上に立った。


ーさよなら。


目を閉じて、俺は川に飛び降りた。


ーさよなら。最悪な人生。


ーもし、生まれ変わったら・・・


俺の脳裏に、過去の人生の走馬燈がゆっくりと流れだしてきた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る