第8話 謎の女性

何も無い、白い世界

黄金の光が、何かを導いている


始まりもなく、終わりもない

でも、何故か心地よい


「あなたが魔夜くんね」


どこからか声が聞こえた

お姉さんのような、母のような、年上の女の人の声


「ふふっ,こっちだよー!」


声の方を振り返ると、そこには女の人がいた

高身長で、羽が生えている。

絵に書いたような天使。

性格は少し無邪気さがある。

そして美しい


「誰ですか!?」

「え!?お姉さんのこと知らないの?ミカねぇさん、悲しいなー」


どうやら、ミカというらしい


「み、ミカさん?」

「だめだよ!お姉さんとか、姉貴とか、お姉ちゃんらしい名前にしてちょーだい!」


魔夜は戸惑いを隠せなかった


「えっとー、僕のお姉ちゃんなんですか?」

「うーん?厳密に言うと違うけど、弟みたいに可愛がりたいなーって!」


「何者ですか?」


「そのうち分かるよ」


ミカはよく分からない発言をした

父さんのように


「魔夜くんは、今どこにいるの?早く会いたいな...」


(今ここにいるのに、何を言ってるのだろう)


答えようとすると、世界はなくなっていた


天井には、また同じシャンデリアがあった


「...夢?」


魔夜はいつの間にか、寝ていた


(ミカ姉さんは、何者?)


「...もうお目覚めでしたか」


低い男の声がした

そこには高校生くらいの男の人が立っていた

タキシードに身を包み、キャニャ同様、ケモ耳としっぽをつけていた。整った黒髪と無気力のような茶色い目まで、キャニャにそっくりだ。


「すみません、どちら様?」

「ワド・アニマです。犬の妖精で、ここの館の召使いです。戦えます。」

「アニマ...もしかして、キャニャさんの!?」

「ワド、ここに居たのね」


キャニャがちょうどよく魔夜の言葉をさえぎった


「ワドは私の義理の弟です」


ワドは感情がないかのような死んだ目をして床を見ている


「あのすいません!」


急に魔夜が声を出す

「はい?」

「...」


「ミカさんって知ってますか?」


キャニャは深く考えている

ワドは隣でキャニャの服を掴んでいた


「さて...どうしたのですか?」


「あの、夢に出てきて...」

「架空の人物なのでは?」


「やっぱり、そうですよね」

魔夜は戸惑いながら言った


「そう言えば、魔夜様に伝えたいことがありまして。」

キャニャの眼差しは真剣だった

「何ですか?」


「この国のために戦ってください、この国をまとめてください、この国の…」






「トップになってください」




突然の発言に、魔夜は動揺を隠せない


「え、僕弱いし、てかなんでトップなんかに!?」

「述懐様の御要望です」


「そんなこと言ったって!僕まだ12歳です!この国の事なんて分からないですよ!」


「ちゃんと私たちが補佐します!たとえ魔夜様が反対してても述懐様の言うことは破れません。」


「僕は、君より述懐様にお世話になってるので。姉様に賛成します。」


魔夜はワドの無愛想な言い方に少し腹が立ったが、グッと我慢した。












いつもなら、(父さんがいるから)と全て素直に受け止められた魔夜だが、述懐がいない現実を受け止めようと必死だった


そして、自分の未熟さを感じていた


魔夜はまた、述懐との最後の日を思い出し涙目となった


キャニャは察しがよく、

「どうか、考えておいてください」

と言いすぐに部屋を出た


一方、ワドはまだ何もわからず、そこに立っていた

そのため、魔夜はまだ泣けなかった


すると、ワドの口が開いた

「泣いていいですよ」


ワドの突然の発言に魔夜は驚く

「僕がいるから泣かないんですか?誰かに頼らなくていいんですか?それで君は生きていけるんですか?これからずっと。」


ワドは相変わらずタメ口のような敬語を使って話す。


「…」


「ワドさんに、僕の何が分かるんですか?」

全ての感情が爆発し、魔夜はワドに八つ当たりし始めた

それでも、ワドは応じない。びっくりしない。


「どれだけ僕が今苦しんでるか、分かるんですか?急にトップになれとか、現状を掴めてなくて、混乱している僕の気持ち、分かるんですか?」


やっと魔夜は泣いた

しかし、魔夜らしからぬ口調で話す


「なんで怒ってるんですか?僕は姉さんから全部聞いてます。なので分かりますよ。」


魔夜は我に返った

そして何度もごめんなさいという言葉を繰り返す




















「僕達も君と一緒だから、分かりますし。」


また意味のわからない発言だ

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