第26話 朝の教会

「リシュさん。リシュさん。起きてください」


 仮眠をとっていた私はシスター・マハエラに起こされる。


「シスター・マハエラ。おはようございます」

「マザー・ホートがいらしています。眠たいでしょうが……」

「いえ、大丈夫です」


 これでも私も冒険者の端くれです。ダンジョンアタックの際などは、短時間の睡眠での行動も何度も経験しております。


 見ればシスター・マハエラも完璧に身だしなみを整えた様子です。

 シスター・マハエラから手渡された新しいシスター服に着替え、私も急ぎ身支度を済ませます。

 シスター服を着ることに段々と慣れてきてしまっている自分に苦笑してしまいます。

 最後に、これもすっかりつけ慣れてしまった黒いヴェールかぶると、シスター・マハエラと共にマザー・ホートの元へと向かいます。


 ◆◇


「結界を担う聖女達をすっかり治癒したそうだね」


 私たちは滞在した教会で用意してくれた食事をとりながらお話を始めます。


「リシュはそればかりか、それぞれの教会の具合の悪いシスターを全て治癒してしまったのですよ。まさに奇跡を体現しているかのようなその振る舞いに、どの教会のシスター達も感涙し、リシュをつかわした神への讃歌が歌われる程でした」


 シスター・マハエラの大袈裟なものいいに、私は恥ずかしくなって身をすくめます。でも確かに、治癒の奇跡を施す途中から歌が聞こえてくる事が何度かありました。

 あれは讃美歌だったんですね。


「はい。あの、皆様、とても苦しそうでしたので。すいません勝手なことを」

「いや、ありがとうリシュ。助けられた全てのシスター達になりかわって、感謝を」


 マザー・ホートからの言葉におもはゆい気持ちになりながらも、ほっとします。


「さて、お疲れのところ申し訳ないが、こちらの首尾を伝えよう。リンドワードだが無事に確保できた。その際の被害も大したことはなかった」

「それは、何よりです」

「うむ。それとリシュ、貴女のパーティーメンバーのヤノスだが、ちょうど近くにいてな捕縛している」

「え、捕縛!? ヤノスも加担していたのですか?」


 私は驚きたずねます。


「いや、違う。彼女は洗脳されている痕跡があった。それだけではない。吐かせるのな朝までかかったが、魔女崇拝者達は街の外に拠点があるらしい」

「っ! そんな、まさか! 結界を手にしているのですか?」

「その可能性が、高い。ヤノスの例もある。結界を使える聖女が捕らわれ、洗脳させられて協力させられていると、上は想定している」


 マザー・ホートの発言に、朝の教会の雰囲気が一気に緊張で引き締まるようでした。


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