第11話 急変
「マザー・ホート、いらっしゃいますか!」
主聖堂のドアを開け、一人のシスターが入ってきます。
「貴方はシスター・マハエラでしたか。どうされましたか」
マザー・ホートが現れたシスターに問いかけます。どうやら顔見知りのシスターのようです。
「マザー・カサンドラより、第三位階以上の聖女に、緊急の召集です。聖人修道会支部長としての召集証書がこちらになります」
差し出された一枚の書類をマザー・ホートが受けとります。
「結界が、破られた、だと! 外結界の担い手たるシスター達に何があった?」
「詳細はマザー・カサンドラへ。一刻の猶予もありません、マザー・ホート。ご同行お願いします」
「──わかった」
重々しく頷くマザー・ホート。そしてこちらへと振り向かれます。
「マザー・ホート? 今、第三位階以上の聖女と言われましたか」
私はこちらを真剣な顔で見てくるマザー・ホートに問いかけます。私、先程の秘蹟でたしか第一位階と言われました……。
「リシュ、すまないが一緒に来てくれるか。なに、貴女は私の後ろに居てくれればよい。貴女に奇跡を頼まなければならない可能性もあるが、その時は十分な対価を約束しよう」
「マザー・ホート、もしかしてそちらが噂の?」
私へ話しかけようとしたシスター・マハエラの前にぐっと体を割り込ませ、無言の笑顔でシスター・ホートが威圧します。
私はその二人の様子を見たあとに、マザー・ホートへと答えます。
「わかりました。私で力になれるかはわかりませんが、一緒にいきます。すぐに着替えてきますね」
なぜか顔を見合わせるマザー・ホートとシスター・マハエラ。
「すまないが、時間がない」
「聖女としてそのシスター服は全く、問題ありませんよ。良く似合ってます」
私の筋肉で盛り上がった二の腕と、押し上げる肩回りの服の張りから、明らかに視線を逸らしながらシスター・マハエラがなだめるように声をかけてきます。
「え、いや、あ、ちょっと」
「行くと言ったのだ。さあ、いくぞ」
「だ、ダメです! この格好ではっ。マザー・ホート! 人前には出ないと言ってましたよねっ! あっ」
私の戦士として鍛え上げた体。心苦しいながらも体重も、人並みよりかは、ほんの少し多めです。それが、なぜか易々と二人に引っ張られて、連れて行かれてしまいます。
すぐに主聖堂の扉のそばまで来てしまいました。あそこをくぐってしまえばもう、外です。
「迎えの馬車を用意しています」
「良かったな、リシュ。ほとんど外から見られることはなさそうだぞ」
「だ、ダメです! それならせめて、せめて顔だけでも隠させて下さいっ」
そんなに強く握られていないのに、抜け出せません。パーティーの盾役としての戦士の勘が告げます。これは、精神干渉をされています。奇跡の一つにそういうものがあるに違いありません。間違いありません。
これが戦闘中であれば力業で対応するのですが……そこまでするのは流石に、はばかられます。
私があまりに絶望的な顔をしていたのを見かねてくれたのか、シスター・マハエラがばさりと何かを私の頭に被せてくれます。
そしてそのまま、外の馬車へと連れ込まれてしまいました。
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