反撃開始

 敵の兵器を破壊し、ただちにその場を離れるユリーシャたち。背後で完全に兵器が爆散した。

 迫る敵の戦闘機を確認したユリーシャが琴音たちに指示を出す。これだけの大軍勢ならば、それぞれ離れた場所で戦って敵の流れ弾も利用したほうが効率が良い。


「各自散開! 敵艦の近くで戦闘を!」

『『『了解!』』』


 早速ユリーシャが敵機を連れて戦場を他に移す。あえて対空装備が強力なドラムグード王国の護衛艦、通称ハンターコブラに接近して敵を引きつけた。

 ユリーシャの狙い通り、対空装備が起動して攻撃を開始する。だが、そんなものユリーシャに当たるはずもなく、放たれたエネルギー弾はユリーシャを追いかけていたドラムグード戦闘機を破壊した。

 慌てて飛行ルートを変更しようとしていたが、ユリーシャが回り込んで機関銃を撃つ。弾丸が次々敵機を墜としていった。

 これにはハンターコブラの船員が慌てている。船のモニターには警告を示す赤ランプが点灯し、緊急事態のサイレンがずっと鳴り響いていた。


「攻撃中止! 対空装備の出力を切れ!」

「システムリセット! くそったれが!!」


 ハンターコブラの対空装備はエンジンと連動している。つまり、エンジンが稼働している限り常に接近する敵を自動迎撃するようになっているのだ。

 これ以上は味方の被害を増やすだけだと一隻がエンジンを停止した。その瞬間、ユリーシャが機体を急降下させて船の直上に張り付く。

 機体の下腹部を解放。搭載していた爆弾を投下して甲板を爆破した。

 エンジンを切ったため、シールドも消失している。爆弾は容易く装甲を貫き内部の重要機関まで吹き飛ばす。

 飛び散った破片が周囲にいた船にも被害を与える。多くの船は物理干渉シールドで破片を弾くが、そのシールドが付いていない旧型の船は破片を船体に受け一緒になって爆発した。

 圧倒的な物量差を逆手に取ったユリーシャの戦法。これには敵戦闘機の動きに乱れが生じる。

 弾薬を温存し、同士討ちをさせてやろうとユリーシャが再び動き始めた。


『おお! さっすがユリーシャ姉!』

「ありがとう琴音。でも、貴女こそ」

『分かる? こういう姑息なやり方私得意!』


 琴音の機体はスモークを大量に噴射していた。そのせいで敵機は視界が悪くなり、煙を抜けた機体同士で激突して自滅を繰り返している。

 いつか見た琴音の戦い方。あれは、こういう多勢に無勢な戦局では非常に有用な戦い方だ。

 他にも、椿たちは自分たちのやり方で戦闘機を撃破している。

 一方的に殲滅されるでもなく、ちゃんと戦闘として成り立っている。個人個人の頑張りでドラムグード王国と戦えている。

 轟音が聞こえた。見れば、前線に出ていた敵戦艦が沈んでいく。

 大輔たちもビシュトリアで奮戦していた。前に出てきた敵に砲撃を浴びせてシールドを剥ぎ取り、そのまま撃沈、もしくは連邦軍の戦艦が最後の一撃を与えていた。

 かなりの被害を与えることに成功した。そろそろ撤退してもおかしくない頃だとユリーシャが思っていると、アビスホエーラが動いたのが見えた。

 側部ハッチが開き、数機の機体が飛び出してくる。それらはビシュトリア目指して飛んでいった。


「行かせません!」


 即座に撃墜しようと動く。が、キャノピーの端に映った剣を見て機体をバンクした。

 敵の兵器が放った剣は敵戦艦を直撃。シールドを破壊する。

 新手の機体は遥か遠くに行ってしまった。あれはビシュトリアの対空砲台を信じて任せるとして、ユリーシャはもう一基の兵器の破壊を目指す。

 やり方は先ほどと同じ。だが、爆弾をさっき使ってしまったために火力不足が心配された。それでもやれると接近して対空装備を破壊する。

 爆弾がないなら直接機関銃で穴を空ける。そう決めて照準を固定した。その時。


『――どけ。一緒に消し飛ばすぞ』

『こら! 隊長に向かってなんて口の利き方を!』


 新しく二機戦闘機が飛んでくる。

 黒と橙色の機体は、兵器の上空を飛ぶと爆弾を投下して去っていく。装甲を破壊し、内部で爆弾が爆発して兵器を完全に破壊した。

 二機がユリーシャに並ぶ。


「助かりました。貴方方は?」

『ビシュトリア航空隊のレオネスだ。部下の名前くらい覚えとけ』

『レオネス! こほん。私は如月美雪。詳しい自己紹介は後でいいかしら?』

「もちろんです。さぁ、ここを切り抜けましょう」


 アビスホエーラのすべての武器がユリーシャたちを狙っていた。さすがに敵の指揮官を怒らせすぎたと微笑する。

 発砲と同時に回避に専念する。ホーミング能力を有するブラスターキャノンに追いかけられるも、こういった武器は敵になすりつけるのが得策だとユリーシャは近くを航行中の敵戦艦にキャノンを当て逃げする。

 燃え上がる敵戦艦を背後にユリーシャが飛ぶ。新たに発進してきた敵戦闘機に追われながら、次の作戦を頭で組み立てていた。

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