第7話 スローライフ
うちの旦那は首都圏出身で、生まれた時から都会っ子だ。
その旦那が、就職し始めて田舎暮らししたときは、私なんかと比べられないくらいの衝撃だったに違いない。
私もそれなりに田舎に住んだことがあるけれど、結婚して初めて暮らした東北は、別世界だった。
一人で散歩しても、あれ誰にも会わなかった。
あれ、町の中心ってどこだった?
スーパーはどこ?
病院は?
本屋さんは?
図書館はある?
美容院は?
幼稚園は?
学校はあるよね?
って感じで、生活に直結して不便なので田舎だからと笑い飛ばすことはできなかった。
以前チラリと書いたけど、田舎に順応するにはまず言葉は大事。
若い人は、地元じゃない人間には標準語に近い言葉で話してくれる。日常生活にまったく問題ない。しかも東北と北海道では似たような方言が多くて、それほど違和感もない。
しかし、これがお酒が入ると、みんな人格かわる。
旦那は、よく飲み会の後何言ってるかわからなかったとこぼしていた。
町内会の会合でも、話半分くらいしかわからないこともあった。
されど日本語、まったくわからないわけではないのでそこまで困らないだろうと思うかもしれい、でも親しくなるにつれ結構な疎外感がわいてくる。
大げさなと思うかもしれないが、ちょっとしたニュアンスが分からないと、笑うツボが分からないのだ。
相槌が打てない、あれ今の話の結論はどっち? みたいな。
一人だけ笑えないのがどれほど孤独かご理解いただけるだろうか。
ここで、面白くないやつというレッテルを張られると、何もない田舎で引きこもるしかない。
引きこもればいいんじゃない? とも思うが田舎で引きこもりはかなりの覚悟がいる。
引きこもっていては地域の情報が入ってこない、ゴミ出し当番から、町内会の清掃、寄付品集め果ては予防接種、冠婚葬祭まで。それって役所の仕事では? と思う事が小さな町では口こみで伝えられるのだ。
うそではない、これは本当です。
なにせ、ごみ袋に記名しないと収集してくれない地域でした。プライバシーもなければ、自由に引きこもってもいられない。人間らしく暮らすには郷に入れなければ、すぐに変わり者というレッテルが張られるのです。
面白くない、変り者というレッテル。
なかなかメンタルに来ます。
何が言いたいかというと言葉の壁を超えるには、引きこもったり人見知りなどしていられないのだ。
方言で話に交じれなくても、積極的に会合やイベントには参加する。そうして、私はここの地域が好きですよ、とアピールしまくる。
そうすると、みんな気にかけてくれてゴミ出しにうっかり名前を書き忘れても、収集してくれる。
田んぼに車がはまっても、引っ張り出してくれる。
町内会の清掃も初めてだからと掃除道具一式貸してくれる。
何曜日に、小児科がどこでやっているか教えてくれる。これ以外に重要で、国保病院だと週に一度しか小児科やってなかったりする。もちろんネットを見てもそんなことは案内されていないし。
あ、移動絵本情報も助かった。
話がそれたけど、ここからスローライフの話。
しかも、強制的なスローライフ。
ある日、玄関前に野菜が積まれている。
誰がくれたかわからないけれど、まあ、その辺の農家のおっちゃんだろう。ありがたく頂く。
またある日には、朝いきなりバケツ一杯のイカをもらう。
ある時には、ホタテの貝付きで10キロもらう。
日々何かしらいきなりもらうのだが、一番困ったのは鮭を数本もらった時だ。
めちゃめちゃ捌くの大変。
だって、まな板からはみ出るし、骨切れないし。
一日かかってようやく、いくらまでたどりつく。
量が多すぎて、食べきれないのでとばにしたり、燻製にしたり、イカなんかは塩辛まで作ったりと、なかなかなスローライフぶり。
塩辛嫌いだから味見できないけどね。
もちろん春には山菜を山ほどもらい、聞いてもいないのに穴場まで教えてくれる。
魚なんか捌いたことないし、山菜なんか下処理したこともない箱入り娘な私は、早々にリタイアしてしまいました。
しかし、はまったのは旦那でした。
もともと釣りが趣味の旦那なので、鮭釣りに手を出し始めてから自分で捌いて、色々下処理してくれるし、山菜も長靴はいて取りに行くようになり。ついこの前も、アイヌネギを取りに行き醤油漬けを作っていました。
楽しそうに笹竹の皮をむく姿を見ると、スローライフ楽しめていいなぁと思う。
私はね。便利が一番。
魚は切り身で買いたいし。山菜よりレタスの方が好きです。
ホタテだって、むき身のたまだけで十分です。
スローライフには向き不向きがあります。ラノベなんかだとスローライフ結構楽しそうに書かれているけど、現実に始める前にどこまで本気のスローライフやるのか考えて始めた方がいいと思う。
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