第2話 社宅
あ、書くの忘れていたけれど、結婚後引っ越し回数は今のところで6回目ですね。
一口に6回といいますが、これ結婚してからです。
ずぼらな私は段ボールを開けないうちに次という事も正直あります。
結婚何年目かは秘密です。
歳ばれちゃいますからね。
まあ、かなりの頻度であちこち転勤している感じで、ほとんどが社宅です。
1話にも書きましたが、たいていはその町に民間のアパートがないというのと、家賃が安いというのが理由です。
ああ、それと転勤は結構いきなり決まって民間のアパートを探す暇がないというのも大きいかな。
結婚して初めて住んだ町は東北の小さな港町でした。
それまで父も転勤族でしたが北海道を転々としていて道外に住むのは初めてでした。
もう初めに謝っちゃいますよ。東北の皆さんごめんなさい。
決して、そこの地域が悪いというわけではないです。
私が、それまで実家暮らしでのうのうと箱入りしていたのと、その社宅は築40年以上で、私たちが出た後は誰も住まないと決まっていたので、ほとんど手入れもされていない状態だったのが原因です。
しかも、この時私の精神は孤独に蝕まれていたのです。
壊れた人間の独り言だと思ってください。
さて、そのぼろぼろの社宅ですが、田んぼの真ん中にポツンと数件建っていました。
もちろんトイレはぼっとん式です。お風呂はコンクリートむき出し。
うん、ここまでは想定内です。
しかし、押入れを開けた時、上からボトっと何か黒いものが落ちてきたのです。
それは黒くて、カブトムシのようで角のない昆虫でした。
皆さんならもうわかりますね。
そう、あれです。あれ。ごきちゃんです。
一瞬、それが足元に落ちて来たので「わぁ」と声を上げてしまいましたが、動く気配もないしよく見ようと思った瞬間旦那が、「それ飛ぶから近づくな」と切羽詰まった声で叫びました。
ああ、まあカブトムシも飛ぶしな、と思ったのもつかの間。
もしかしてこれがごきちゃん?
と理解できるまで数秒。
「これがゴキブリ!」と絶叫しました。
想像していたのより小さくてびっくり。
引っ越して二日目で人生初ごきちゃんですよ!
しかも押し入れから!
流しならわかるけど、なんで押し入れ! もう最悪!
旦那が仕事に行ったら一人で家にいられない。そう一人涙しました。
しかし、悲劇はそれで終わらなかったです。
田んぼの真ん中に建つ社宅。
甘く見てました。
数日後、20センチ近くもあるムカデが流しにいて、また絶叫。
ここでも人生初ムカデです。
北海道にはごきちゃんは勿論、こんなでかいムカデ生存してないと思う。
更に、悪夢は続き、ありんこが家に行列してくるし、ヤモリは壁に引っ付いているし(もちろん見たことない)、蛙はお風呂で泳いでいるし。
我慢の限界はとっくに過ぎていたところに、梅雨で雨が続いたある日、畳の隙間からダンゴムシが沢山湧いてきたのを見て引っ越しを決意。
結局、数カ月しか耐えられませんでした。
うん、やっぱりこの時の私は壊れていたと思います。
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