第7話 本格化する凌辱に令嬢はその理性を狂わされる

「ああッ…亜子」

ほんのりと最愛の孫娘の秘所の香りと、愛液に塗れた白いショーツが投げ込まれたのは、鍋島邸の明け方のことだ。まだ警察に知らすこともできず、現役の大臣である息子の体面を考えれば、亜子の父親にも事情を打ち明けることはできない。精神不安定な妻に相談などもってのほかで、息子の嫁に知られれば家庭内は崩壊しかねない。そんな孤独な生き地獄を味わう行正が、眠れぬ夜を過ごしブランデーをあおりつつ、ソファで思案を重ねているとき、不穏な物音を聞きつけ庭を見た。薄汚れたビニール袋に混入された女物の下着と、乱れた文字。

『上級国民の仮面をつけた鬼畜な鍋島よ パンティの液体は紛れもなくお前の孫娘のスケベ汁だぜ 嘘だと思うならDNA鑑定でもしてもらうんだな 早く決断しないと取り返しのつかない事態になるぞ 次はアエギ声を聞かせてやる いうまでもないが警察にチクれば、俺たちを逮捕はできても孫娘の恥ずかしい姿が世に晒されることになる そうなれば鍋島家は破滅だ』


相手は浮浪者と聞いたが、どうしてなかなかの智略家だ。相手は自分たちの逮捕を恐れていない。ホームレスという組織の機動力を生かし、通常の誘拐とは異なり、亜子を一定の場所に留め置かず、あちこちにと連れまわしている様子だ。もはや彼らの命じるがままに呼び出され、伝言を鍋島家に報告する伝書鳩に成り下がった東出から聞かされる状況に、行正は絶望を覚えるばかりだ。相手は亜子に、性的な凌辱を加えていることはもう間違いない。それを世間に知られたくないのは鍋島家の方であることを熟知している。マスコミに嗅ぎつけられでもすれば、一年前の暴走事件を蒸し返されることは想像に難くない。ただでさえ渦中の一家である鍋島一族はさらなる世間の好奇に晒されるわけだ。一番隠したい事件の核心にまで迫られることもありうる。それを阻止するためには、事の真相を自ら告白するしかない。が、そうすれば―――。翻弄され、肉親を穢される苦痛に、行正の懊悩は続く。


都内某所の広大な公園――――。その植え込みには浮浪者の人だかりが絶えない。それもそのはず。そこは世にも奇妙な『見世物小屋』と化していたのだから。

「あ、あんッ…い、いやんッ…そ、そんなッ…助けて誰かッ! お願い、助けてパパ! おじいちゃまぁ!」

令嬢にありがちな、ファザコン気のある亜子は、常日頃その権力を絶対視している父と祖父の名を呼んだが、窮地を救うものが現れる気配はない。代わりに、凌辱を超えた生き地獄に喘ぎ悶える虜の身の彼女に、淫靡な視線を送る眼の数々。


管理の行き届かぬ植え込み芝生の上に、全裸のまま大の字に縛めを受けた鍋島亜子。四方を囲む柵に荒縄で手首足首を繋ぎ留められ、逃れることも抵抗する術も失った彼女の白い肌を這う生き物。それは、一匹の青大将だ。

「へへへ、蛇は神の使いですよ、お嬢さん。そんなに嫌がったら罰が当たるぜ」

男たちは棒切れを使い、蛇を刺激し、恐怖に慄く亜子の白い裸体の上で、鎌首を上げ聴衆たちを威嚇する。やがて青大将はチロチロと舌なめずりをしつつ、若い令嬢の張艶十分の乳房の上を這い、恐怖にヒクヒクとへその穴が震えるウエスト部へ移動する。

「あ、あぁ、こ、怖いわッ…」

「安心しなってお嬢ちゃん、青大将は毒はねえよ」

「そ、それにこんな…」

亜子にとっての苦痛は、大嫌いな蛇の鱗の感触を柔肌に感じることだ。が、それ以上に亜子が舌を噛み切りたい衝動に駆られたことには理由がある。開脚した股座に突き立てられた柵に結び付けられた小さなコケシは、無残にも亜子の膣内を犯していた。人形供養の一環として持ち寄られた物を、浮浪者の一人が失敬し、さらった令嬢を弄ぶ責め具として用いたのだ。亜子が恐怖に緊縛された肉体を震わせれば、その都度、令嬢はその快楽の源泉を張り子に嬲られる羽目となる。鞭論のこと、その様子は宇佐美によってスマホに収められることとなる。そしてそれは今宵、亜子を屈辱的な辱めで祭り上げる準備に過ぎない。


一時間後――――。森陰に設けられた廃材で仕立て上げられたテントの中。宇佐美の男としての独壇場に、囚われの令嬢はその性力に嬲られ、愉しまれ、翻弄すらされていた。

「あッ、ああぁぁ―――ッ、ああッ、ああぁぁ―――ッ、いッ、いいぃぃッ、ひ、ひいィ――――ッ」

鍋島亜子は、囚われの身で凌辱に晒されつつも、見方、聞き方によっては和姦ともとられかねぬ、嬌声交じりの艶姿を見せている。眉間に皺を寄せた美貌は快楽の深さを物語る。激しいピストン運動に揺れる乳房は膨張しきり、屹立した乳首は女体の甘い痺れを隠さない。突き上げられるごとに、全身の筋力が緩んでくるような錯覚を覚える。再三のフェラチオでも落ち切らぬリップの色が残る亜子の唇の端から、唾液が糸を引く。

(な、なんて…強烈なのッ!? …いや鮮烈っていうのかしら…ちょっと…この気持ち良さ…マジッ!?)

拉致監禁され、レイプという形で結合したのでなければ、間違いなく亜子はこの世紀の持ち主に陥落し、歓喜の声を上げていただろう。自らも腰を振りたい気分だ。いやいや、その必要もなく宇佐美の浅黒いペニスは、亜子の上品なマンコの入り口を乱暴に分け入り、クリトリスをなぞり上げるように刺激し、Gスポットを遺憾なく責め上げる。そればかりか、昇天寸前の亜子を、トランス状態に追い込んだまま、意地悪くイカさず、冷まさずの要領で放置にかかる。まるで亜子がこの凄惨な強姦を肯定し、自ら腰を積極的に振ってくるのを待つように、だ。


(わ、私、辱めを受けているのよ…それだけはできない)

令嬢が倫理観とプライドで、昂らされた性感を鎮めんとし、それ以上快楽の坩堝に誘われることを拒むように、亜子は頭上で縛められた手首のロープを握りしめ、堪えた。

「ほおーらほら…お嬢様。イキたけりゃあ、イカせてやるぜ、どうなんだぁ?」

騎乗位の姿勢で、亜子を下から見上げる宇佐美は、サド気たっぷりに令嬢に問う。じんじんという壮絶な痺れに嬌声を堪える亜子だが、射精する気配のない宇佐美のペニスは膣内でエレクトを続けている状況だ。

「んんッ…あ、あッ、ああぁぁぁ~~~~ッ」

卑猥な嬌声を堪えようにも、自分でも聞いたことの無い艶めかしい喘ぎを漏らさずにはいられなかった。


やがて、宇佐美のペニスがピストン運動を再開する。

「んんんんああァァ―――ッ…」

亜子はもう、オーガズムに達する寸前だ。

「許してッ! んあぁ、もうッ…だめ!」

歴代のカレシたちとの同衾でもここまで、艶めかしく燃え上がった経験はない。宇佐美のテクニックには、これまで関係を持った男たちとは異なる、ある種のサディスティックな刺激と、マゾヒスティックな感性を呼覚まされるような情念が込められていた。

「何を許して欲しいんだぁ、お嬢様ぁ? Gスポットをもっと虐めてもらいたいってことか、それとも…」

脳天をつんざくような刺激に、性感の究極的な昂りを覚え、観念しかかった亜子は昇天する覚悟を決めた。がその瞬間、またも宇佐美はそれを察したように腰振りを止め、焦らしプレイで亜子を追い詰める。

「ああぁぁ―――—ッ…」

恍惚の表情で、涎を滴らす亜子の妖艶な美貌に嬲る様な視線を絡める。

「残念だけどな、ここまでだぜ、お嬢さん。寸止めを続けりゃ続けるほど女の性欲は旺盛になるし、理性も失いやすい」

「そ、そんなッ…非道よ!」

別の意味で恨みがましい涙目で宇佐美を睨む亜子。

「ご褒美が欲しけりゃあ、あの日、なぜ鍋島の爺さんが行方を晦ましたのか、白状しろ!」

宇佐美は本物のサディストだと亜子は思う。一連の監禁生活の中で、浮浪者たちをうまく操り、マニアックなハードSMまがいの手法で亜子を辱めさせた。と思えば、自らもテクニシャンぶりを発揮し、レイプによって亜子を歓喜の坩堝に追い落とす。亜子が涙交じりの感極まった表情を見せながら、頷いた。―――。

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