第二部
episode12 テスト勉強
オレたちが付き合ってから一ヶ月が過ぎた。
──だけど、恋人になったからといって、恋人になる前とは然程変わることはなかった。
一緒に帰って、一緒にバイトして、一緒にご飯食べて、一緒にゲームしたり、アニメ見たり、そしてその後、抱擁し合ってお互い気が済むまでキスをする。
どれも付き合う前もしていたことだ。
変わったことが一つあるとするなら、お互いイチャついてるときに『好きだよ』とか『愛してるよ』など囁き合うようになったくらいだ。
付き合う前は、お互いの寂しさをぶつけ合って触れ合うだけだったが、今はお互い好きという感情を出し合っている。
セックスはまだしてないけど多分近いうちにするだろう。
オレは柚凪がしたいって時にするつもりだけど、時間もたくさんあるんだし、そんな焦る必要はない。
今でも充分愛し合えてるから、その先にいくのはゆっくりでいいと思う。
11月も終わる頃のある日の平日、オレと柚凪は昼間からファミレスの一角に鎮座していた。
というのも、今週はテスト週間のため学校が午前中で終わるので、明日のテストに向け柚凪とファミレスで勉強することになったのだ。
なんでも柚凪は自分でも自負するほど頭が悪いらしい。
前回のテスト結果を聞いてみてもほぼずべてが赤点か赤点ギリギリの点数だと言う。
そして、さすがにやばいと危機感を覚えた柚凪が勉強を教えてくれと頼み込んで来たというわけだ。
オレの家でやってもいいのだが、昼間は親父が夜勤のため家にいる。
そのため、バイト先のファミレスで仲良く勉強することになったのだ。
ドリンクバーのカルピスをストローで飲んでいる柚凪に今日のテストの出来栄えを聞いてみた。
「柚凪、今日のテストどうだった?」
「うーん、物理はぼちぼち。数学は死んだ」
テスト一日目の今日は物理と数学の2科目があった。
物理は暗記と簡単な公式を覚えれば高得点は取れるくらい簡単だった。
だが、数学は難解で複雑な計算式や文章題がずらっと並ぶのできちんと勉強しなければ平均点すら危うい教科となっている。
「はぁ、だから昨日数学の復習しようって言ったのに柚凪が抱きついてくるから……」
「な、なによ、翔だってまんざらでもなさそうにおっぱい触ってきたじゃない!」
ばかそんな大声で、と思ったがオレたちの座ってる席は角の方で幸い隣にも前にも客はいなかった。
「それは……柚凪がその、可愛いかったんだから仕方ないだろ……」
それは昨日、オレの家で今日の物理と数学の勉強をしているときのことだった。
まず最初に物理の勉強を始めた。
オレが柚凪の隣に座り、マンツーマンでテストに出る要所や解き方のコツなど教えていた。──だが、勉強を始めて1時間くらいたつと、柚凪の集中力が切れ始めた。
オレが必死に解き方を教えていると、突如首元にチュッとキスをされたり、手を握ってきたりして、明日のテストの事など頭にないようだった。
仕方なく休憩を挟むと、その瞬間柚凪は「もう我慢しなくてもいいよね?」と上目遣いでそう言い、ドサッと勢いよく抱きついてきた。
「……数学まだやってないだろ……?」
そんなオレの言葉も無視して、柚凪は躊躇なく舌の入ったキスをしてくる。
オレも抵抗する気も失せて、そのまま柚凪の胸を揉んだりしてイチャイチャが続いた。
───そして、結局数学を勉強する時間がなくなり、柚凪はテスト当日を迎えあえなく撃沈したのだ。
「きょ、今日はちゃんと勉強するわよ」
「はて、我慢できるのかね?」
「さ、さすがに、ファミレスではあんなことしないわよ」
「さよですか、じゃあ早速明日のテスト勉強に取り掛かりますか」
「はい、お願いします先生」
「たく、先輩って言ったり先生って言ったり忙しいやつだな」
「あはは」
明日のテストは国語、英語、の2科目となっている。
柚凪は国語には自信があるとのことなので、苦手だという英語を教えることになった。
オレは柚凪に勉強を教えやすいように、今座ってる席から立ち上がり、柚凪の席の隣へと移動した。
そして、テスト対策プリントを広げ、オレたちは勉強を始めた。
「ここがよく分からないんだけど」
「ここはな、isの位置をここに置くことによって───こうなる訳だ。」
「あ!なるほど、分かりやすい!」
「そうか?まあいつもバカどもに教えてるからな」
ちなみにバカどもというのは荒谷と飯島のことである。あの二人も大層頭が悪い。
すると、柚凪が目を輝かせ上目遣いで聞いてきた。
「ねえ、翔、私がひとつも赤点とらなかったら翔がなんでも言うこと聞くってのはどう?」
「はあ?そう言うのは普通、テストの点数で勝ったら聞くもんだろ。それにもう数学で終わってるだろ」
「ああ!やっぱり数学は抜きで!それ以外全部いい点とるから!」
「……はぁ、分かったよ。数学以外赤点回避したら言うこと聞いてやるよ。オレのできる範囲でな」
「ふふ、ありがと翔」
「そのかわり、もし赤点とったら脇腹一時間こちょこちょの刑な」
ちなみに柚凪は脇腹が非常に弱い。
この前、抱き合った拍子に柚凪の脇腹に手が触れてしまったのだが「ヒャあんっ」という間抜けな声とともに全身の力が抜けるように体が崩れていったのだ。
それから「絶対に脇腹は触らないで」と忠告されているが、おもしろくて度々触っている。
「う……絶対にやだ……」
「なら頑張らないとな。ほら続きやるぞ」
「わかりました!先生!」
その後、柚凪がわからない問題があればオレが解説し、理解させる。という感じにテスト対策の勉強は進み、2時間が経過した。
「ふぅー疲れたぁ、こんなに勉強したの始めてだよ」
「これからは普段からするように心がけろ」
「それは無理な相談ですなあ」
「おいこら、擽るぞ」
オレがこちょこちょのジェスチャーをすると柚凪はひひィッと脇腹をガードした。
オレは「はぁ……」と呆れ、スマホで時間を確認した。
時間は2時半で、もう親父が仕事に出ている時間だった。
「あんま長居するのも悪いし、そろそろでるか」
「うん、そうだね」
「家帰ったら国語の勉強な」
「うげぇ」
「文章問題はなんとかなるとして、漢字くらいできてないとマズいだろ」
「まぁ確かにそうだけどぉ……」
「ん?なにか不満でもあるのか?」
「いやぁ……頑張ったんだし、少しぐらいは翔とイチャイチャしたいな〜って」
くぅ……そんな顔でそんな可愛いこと言われたら断れるわけないじゃないか。
「わかったよ、帰ったらいっぱいしよう」
「えへへ、うん」
「その後はちゃんと勉強やるからな」
「はぁい」
柚凪はそんな気のない返事をして、ズズっーっと残っていたドリンクバー飲みほし、オレたちはファミレスをでた。
家に帰りリビングに入ると、一秒も経たずして柚凪が抱きついてきた。
「お、おい早すぎだろ」
「仕方ないじゃん、ずっと我慢してたんだもん」
「おうおう、よしよし」
オレが柚凪の頭を優しく撫でると、「もう、子供扱いしないでよ」とそう言われ、キスをしてきた。
オレも背中に手を回し、柚凪のキスに応えるように舌をいれた。
───結局、ご飯とお風呂以外の時間はずっとイチャイチャしていて、漢字を勉強する時間は三十分ほどとなった。
はて、ほんとに柚凪はテスト乗り切れるのか?
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