第12話 あの鐘を鳴らすのは

 何となく大晦日の歌番組を見ている。テレビの特番は何故かしら面白くないものが多い、と僕は思う。豪華なゲストが出演していて、気になって番組を見ても、つまらない場合が多い。僕の感覚が、世間の人々とずれているだけなのかもしれないが。

 僕は食後のアイスクリームを堪能しながら、テレビをザッピングしている。受験生の僕だがもう少しだけ怠けていたい。大晦日なのだから。

 でも、と僕は思った。

 大晦日と他の一日と、何か差があるのだろうか。同じ一日なのではないか。何となく特別な一日にしている。そんな人が多いと思う。

 こんな話をすれば、冷めた子どもだと言われるかもしれない。でも、僕は記念日やら祝日やらに対する意識が薄い。強いて言えば、学校が休みになるかならないかが問題であろう。

 あっ、そう言えば、土曜日が休日になるとかならないとか、そんな話題が広がり、気が付けば、二週間に一度、土曜日が休みになった。

 その反動で、平日の授業が多くなるのだから、正直なところ、学生には嬉しいような悲しいような、複雑な心境だ。

 それに、土日を休日にするのは学生の為というよりも教師の為だろう。僕が感じるだけでも、学校の先生は働き過ぎである。もちろん、授業に熱意のない教師や淡々と作業をこなす教師もいるけれど、多くは真面目で熱心だ。休日を返上し、部活の顧問をしたり、放課後に生徒のお悩み相談に乗ったり。教師も一個人であり、それぞれに自由な生活があるはずなのに。

 僕は夕食の片付けして、お風呂に入ることにする。別に何か特別な一日ではない。湯船でのんびりしてから、心機一転、勉強に励む。僕はそう心に決めた。

 熱めのお湯が僕の体を芯から温めてくれる。

 特に何も考えることはしない。

 特に何も悩むこともしない。

 無心。

 何かの本で読んだが、無心になることは非常に難しい。

 人間は常に煩悩に包まれている。

 僕は少し眠ってしまった。

 時間にしては僅かだったが、確かに眠ってしまったようだ。

 慌てて湯船から出て、シャワーを浴び、風呂から出ることにした。バスタオル片手にキッチンに行って、冷蔵庫を覗き込む。

 スポーツドリンクかミックスジュースか。

 人間は常に選択に迫られる。

 ミックスジュースを片手に部屋に戻って、勉強を始めた。お風呂に入ったのが功を奏したのか、集中力が続き、あっという間に午後十一時半を過ぎた。

 時計を見る。

 今年は一人だな、と僕は思った。いつもなら親戚の家に滞在しているから、両親や親戚と一緒だ。

 切りの良いところまで問題を解いて、勉強をやめて、背伸びをした。窓の外は真っ暗で当然何も見えない。

 寝ようと思って立ち上がった時に、かすかに除夜の鐘が聞こえてきた。煩悩よりも眠気が強いのだから、僕はまだあの鐘に頼る必要はないだろう。

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