第17話 エピローグ

 北の最果てに、暖かい風が吹いた。長い冬が終わりを告げる。

 薄暗く、ほのかに暖かい洞窟の奥。

 眠る二つの氷像の前に佇む一人の女性。しゃがみ込んで、氷の彫刻の足元に、そっと小さな太陽を置いた。

「今までありがとう」

 しばし二人を見つめてから、女は身を翻した。振り返ることなく、出口へと歩いていく。

「おっ? 早いな。もういいのか?」

 入り口で待っていた男性が腰を上げた。

「ええ、十分よ。待たせてごめんなさい。帰りましょう」

 男に寄り添い、腕を絡めると、二人は雪の世界へと足を踏み出した。

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氷のぬくもりで私を包んで 藤崎 千歳 @forest0326iris

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