第1話 『転生:08』

その次の日、俺は瀬奈といつも通り学校に行き授業を受けた。


何故か俺の目に映る世界は白黒で。


ぼうっとしながら4時間を過ごした。


いや、ダメだ。

俺は紫雨 舞桜。

こんな事で思考が止まるようなヤツじゃないんだよ。

悩んでいたって、思い詰めたって仕方ないだろ。


「しーぐれっ!」


「うわっ!?」


「………どったの?紫雨。朝から元気無いよ?奥さんと喧嘩でもした?」


「あぁ……子作りって大変なんだな…。何回かトライしたが全然……」


「ったくー、そんなんじゃダメでしょ紫雨。そうだなぁ、私と練習してみる……?」


「…………うし。ありがと吏優。目ぇ覚めたよ」


パンパン!っと自分の頬を叩き、いつもの調子を戻す。


「良かったー、朝からホントに元気無かったよ紫雨。何かあった?」


「いんや……別に大した事は無いさ」


「………。深くは聞かないけど、困ったら相談しなよ?吏優ちゃん達は友達なんだからさ!」


吏優が親指を立て、眩しい程の笑顔を向けてくる。

俺はこの笑顔が好きで、何度も助けられてきた。

吏優は本当に良い子だ、とまるで親目線でそう思った。


「ほら、紫雨。みんな食堂で待ってるよ。行こ!」


椅子から立ち上がり、吏優と共に教室を出る。


……多分、みんなが俺を気遣ってそっとしておこうと言ったのを吏優は反対して自分が連れて行くから先に行っててとでも言ったのだろう。

想像したら、危うく吏優の優しさに泣きそうになってくる。

……俺が他人に、しかも友達に心配を掛けた。


もう、こんな失態は起こさないようにしなくては。


と、そこで校内放送が入った。


『えー、2年7組 紫雨 舞桜。至急職員室に来なさい。』


…………ナカちゃん先生、か。


「………らしい、悪いけど先行っててくれ吏優。後で必ず行くからさ」


「うん………分かった。絶対来てよね」


「おうっ!」


そう言って小走りで職員室に向かう。


「そーだ、しぐれーーっ!」


ん?

吏優の声に後ろを振り向く。


「さっきみたいに目が白黒な紫雨は吏優ちゃん嫌だぞーーっ!私は、くだらない冗談を言ってる時の紫雨の方が好きーーーっ!」


吏優の笑みに、俺も最大限の笑みで返す。


「おうっ!心配掛けて悪い!紫雨舞桜は、これからも紫雨舞桜で行くさ!俺に惚れないように、吏優も気をつけろよ!」


そう言って、俺は再び職員室へ向かった。



「……紫雨のバカ。もう遅いっての」








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