第1話 『転生:03』

担任が来るまでの間、俺は自席に着きスマホで仲間達と軽いLI○Eをしていた。


俺『みんな、よろしくな』


聖汰『みんなっつっても全員顔見知りだけどな笑』


瀬奈『でも私、魅來とはあまり話した事無いかも。よろしくね魅來!』


魅來『うん、よろしくね瀬奈ちゃん』


大翔『そうだ、昼食どうするよ?』


吏優『あ〜、私と瀬奈は多分パス。午後から部活あるんだよねー。てか、大翔も部活でしょ』


大翔『初日のHRなんてすぐ終わるだろ、舞桜達と食べてから学校戻ってきても大丈夫だ』


瀬奈『うん、私も昼食は舞桜達と食べたい』


俺『だってよ、吏優。どうする?俺もみんなと食べて帰りたいけど』


吏優『分かったよぉ…。その代わり舞桜には私と瀬奈の昼食代奢ってもらうから』


俺『なんでぇ!?』


聖汰『笑笑』


魅來『みんな、そろそろ先生来るよ』


と、そんな所で会話は終わった。


ガラガラ……と、教室の扉が開き20代半ばだろうか。凛々しい顔立ちの女教師が入ってくる。


スタイルは良く、女性の理想なのかもしれない。


出ている所は出ていて、引き締まっている所は引き締まっている………うん、瀬奈みたいに。


「えー、今年から君達の担任をする事になった中河原 美紗(なかがわら みさ)だ。こんな性格だが、基本は君達に全て任せようと思う。生徒の自主性を重んじる学校と聞いているのでな」


どうやら新任らしいな。

一応、この学校は進学校という事で県では名が通っている。


静岡県の富士の根元から少し離れた所にある県立城沼高校。

地元の人達は昔から城高と呼んでいる。

偏差値は県でもトップクラスで、入学出来ただけで勝ち組みたいなもんだと言う。


そのお陰か、大翔みたいな元気馬鹿はいても度を過ぎた事をするような馬鹿はいないので俺は案外この学校が好きだ。


そんな事を思っていると、中河原先生が俺を指名する。


「おい、そこのイケメン。名をなんと言う」


………こちらを見ているから多分俺なのだろう。


「紫雨 舞桜と申します、ナカちゃん先生」


クラスをどっと笑いが包む。


「紫雨か。では、お前にこれからクラスの指揮を取ってもらおう。今日はクラスの委員長と副委員長だけ決めて解散だ」


俺もパッパと済ませて仲間達と飯を食べて帰りたいので教壇に上がる。


「うむ、俺の事はみんな色々な意味で知っていると思うけど改めて。紫雨舞桜だ、よろしく。早速だが、委員長と副委員長を決めたい。誰も立候補しないのなら委員長は俺がやろうと思うんだが、どうだろうか?」


ちらっと俺は大翔と視線を合わせる。

俺の意図を感じたのか、大翔が苦笑い混じりに言う。


「舞桜がそこにいる時点で、委員長は舞桜しかいないっしょ〜。元々委員長を狙っていた人がいるなら立候補するだろうし出来ないのならそれまでの覚悟だったって事だろ」


うむ、実に的確な意見だ。

この場で自ら立候補するくらいでないと到底これから先、委員長なんて務まらない。


「はーい、私も今回は大翔にサンセーでーす」


「うん、オレも大翔に賛成するよ」


続いて吏優、聖汰が同意を示す。


「うむ、じゃあ俺が委員長をやるよ。続いて副委員長だが……やりたい人はいるか?」


「はい!」


「は、はいっ!」


俺が言うと同時、これまで黙っていた瀬奈と魅來が挙手する。


瀬奈は予想出来ていたが、魅來は少し予想外だったな。副委員長とかやる様なタイプじゃないと思っていたが。


「魅來………」


「瀬奈ちゃん………」


2人がお互いを見る。


………なんも言えねぇ……。


「魅來、副委員長譲ってくれない?」


「瀬奈ちゃんこそ、譲ってくれないかな?」


俺達には分からんが、無言の、視線だけの女の闘いが瀬奈と魅來で行われているのだろう。


「あの、瀬奈さん魅來さん……」


『舞桜は黙ってて!!』


「はいっ!」


女って怖ぇ……。


この後10分に及ぶ2人の話し合いの結果、魅來が副委員長となり、瀬奈はこの4月中毎朝俺と登校する権利が与えられたらしい。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る