兄の考え
弟が怪我をして帰って来てから2日が経った。
怪我の方はしっかりと手当てをして回復魔法を掛けているので、表面上の怪我はすっかり良くなっている。さすがに体内の怪我は完全に治ってはいない。
動くたびにぎゃあぎゃあ喚くので、昨日から自室に謹慎状態になっているがそれでも時折、喚き声と言うか怒鳴り声が聞こえて来るので、一応元気にはしているのだろう。ついでに弟の世話をしているのは前に奴隷にさせられたメイドだけだ。
「ふぅ。さて、あいつのことはどう対処するか。このまま、部屋に閉じ込めているのは要らぬ恨みを買うことになる。そうなれば、こちらがスキルの対象になりかねないな」
「と言っても、どうするつもりなんだ?」
「おそらく、と言うよりも確実にあいつの怪我はスキルによるものだろう。私にスキルを使った後に足を引き摺っていたのもそれだろうな」
「え? まあ、そうだろうけど」
「だから、あいつにスキルを使わせて自滅させる。幸い、我が家であいつのスキルの影響を受けた者は両親とあのメイドだけだ。元より煙たがられていたからな、スキルの対象になるほど干渉していた者が少なかったのがいい方へ影響したのだろう」
確かに家で弟のスキルにやられたと思われるのはその3人だけだ。兄の言うように昔から弟は使用人から避けられていた。
ただ、単に今まで弟がスキルの対象にしなかったから被害が無いというだけの使用人も居ると思うのだけどな。
「いや、全員が対象外と言うことは無いんじゃないかな」
「まあ、そうだろうな。しかし、今までのことを加味すると、あいつが認識していない物に対してスキルの効果が発揮されない可能性はあるだろう。少なくともあいつがこの家に居る時にスキルの対象にしなかったと言うことは、あいつ自身が何かをされていても気付いていなかったことになる」
『ざまぁ』スキルの対象が、自分に対して何か嫌がらせをして来たと認識しているかどうか、であるのは少し納得できる。それと、あいつが難癖付けたり逆恨みだったりした場合にも効果が出なかったことから、対象となるのは嫌がらせをしてきたことを認識し、且つそれが本当ならば、というところだろうか。
「それに、スキルの対象になると言うことは、問題がある者とはいえ雇い主である当主の家族に対して、嫌がらせをした者だ。何かあったところで問題は無いだろう。むしろ、見えない問題が露見出来て良いのではないか?」
「ああ、そういう」
家の使用人でも繕うのが得意な者はいる。何かと失敗を人の所為にしたり、サボったりするような奴だな。それをあわよくば弟のついでに排除したいということだな。
「まあ、近い内に実行するから、覚えておいてくれ」
「わかったよ」
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