弟が怪我をして帰ってきた(自業自得)

 

 両親は兄が言うように命に別状はなかった。ただ、事故の際に馬車から放り出され、その時に腕と足に傷を負っていた。

 その傷は、日常生活でも多少の不都合が生じる程のものだったため、手紙に書かれていた通り兄が家の執務を担当しなければならないことは分かった。


 そして、弟が何をやらかすかがわからない不安はあったが、俺は時期的にちょうどいいと判断し、執務場所を実家に移動させることにした。当たり前だが、兄の執務を補助することも考慮しての判断だ。



 両親の様子を見た翌日、まだ俺の執務はここに移していないが、兄の執務を手伝うことになった。元よりここに来るために俺の仕事は早く終わらせてあるので、俺の執務に影響なく手伝うことが出来る。


「若旦那様。少々よろしいでしょうか」

「ああ、いいぞ」

「失礼します」


 昼を越え、夕方に差し掛かった時間に執務室に使用人がやって来た。少し困惑している表情だが、何か問題でも起きたのだろうか。……そう言えば、1つ思い当たることがあるのだが、それか?


「何だ?」

「学園から通達が来ています」


 ああ、はやりそうか。弟は何をやらかしたんだ? スキルを使って復讐するつもりで学園に向かったはずだから、それ関係だろうけどな。


「…内容は」

「目を通してもよろしいでしょうか?」

「構わない」

「では、『学園にて、そちの家の者が突然大怪我を負った。それまでは、在学中の元級友を勢いよく罵っていたのだが、何やらスキルを発動させたと同時に倒れ込んだようだ。慌てて近くの者が距離を取って確認した所、体の至る所から出血し、四肢においては骨が折れている所があるようだった。それと同時に数名の学園性が似たような状態になったのだが、もしやこれが其方の言っていたスキルの効果なのだろうか? 一応、その者には最低限の治療は下が、それ以外はそちらで対処願う。被害のことについては先の通達に在ったようにしていただければ問題はない』だそうです」


 とりあえず一部ではあるが復讐は成功したのか。ただ、兄さんが言った通り条件を満たさなければスキルの効果は無いのかもしれないな。


「ああ、わかった。それはこちらに渡してくれ。それと、この後こちらからも学園に向けて通達を出す。その時になったら、また呼ぶ」

「了解です」


 そう言って通達を持ってきた使用人は、今言ったことが書かれていた紙を兄に渡し、そのまま執務室を出て行った。


「とりあえずこちらで出来ることは対処しようか。おそらく学園で被害を受けた学園性は、あいつに嫌がらせをしていた奴らだろう。もともと態度も悪い集まりだったとは聞いていたから、そこまで悪い結果にはならないと思うが」

「兄さんは、被害に合う者が誰だかわかっていたのか?」

「いや、誰が、と言うのは把握していない。しかし、あいつが事あるごとに悪態を着いていた際に幾人かの人名が出ていたから、それらだとは思っていたが」

「なるほどなぁ」


 そう言えば弟は誰々に何をされたとかの報告、と言うか愚痴は多かったからな。そこから判断は出来るか。


「さて、通達の方も出来たし、あいつの受け入れ準備をしないといけないな。おそらく喚き散らしながら帰って来るだろうし」


 ああ、もうありありとその光景が想像できる。それに、ただ心配してみていただけなのに、馬鹿にしてんじゃねぇ! って感じで突っかかって来るのも想像に難しくないな。




 暫くして、弟が乗っていると思われる馬車が家の前に着いた。そして、その馬車の中から予想通りの声が聞こえて来る。


「何で俺がこんな目に遭わなきゃ行けないんだよ! ふざけんな! どいつもこいつも俺のことを馬鹿にしやがって。後に見てろよ! 俺のスキルで後悔しても足りないぐらいの目に遭わせてやる!」


 本当にここまで予想通りの結果になるとはな。まあ、弟のことを知っている奴らからしてみれば、予想するのは難しくは無いか。

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