両親が事故にあう
「これは本当のことか?」
実家か帰宅して1週間ほどたったある日、執務の合間の休憩中に家の使用人から渡された手紙を読んで、俺は困惑のあまり手紙を持ってきた使用人に問いかけた。
「申し訳ありません。私はその手紙を受け取っただけですので、真偽は分かりかねます」
「ああ、すまん。そうだよな」
「ただ、お兄様からの手紙なので信憑性は高いかと思います」
「そうだな。兄さんがこんな嘘をつくとは思えない」
この手紙には両親が領地を訪問した際の帰りに馬車で事故に合い、怪我をしたと言う内容が書かれていた。命に別状はないとのことだが、少なくとも当分は貴族家の当主としての活動は出来ない状態。そのため、時期尚早ではあるが、兄が家督を継ぐとの事だ。
だが、俺が困惑しているのは両親が事故に合ったことでも兄が家督を継いだことでもない。兄が家督を継ぐのは元から決まっていたことだし、そもそも馬車の事故は滅多に起きないと言うことも無い。
俺が困惑したことは、どうもこの事故に弟が関わって居そうだと書かれていたからだ。事故に直接関わったようではないが、少なくとも何かをやったような様子が確認できた。可能性としてこの前言っていたスキルが関わっている可能性が高いとの事だ。
『ざまぁ』スキルに関しての情報があまりにないために確証は得られなかったが、弟が自慢げに自らのスキルの結果だと自慢していたために疑わしい、だそうだ。
自ら両親を害したと高らかに言っているのは馬鹿ではあるが、確かにあのスキルがどのように作用し、効果を発揮するかがわからない以上、疑うことは出来ても罪として罰することは出来ない。
これが本当なのならば、なかなかに厄介なスキルである。
そして、両親をざまぁしたと言うことは次の対象は、おそらく家督を継い兄だ。両親と同じような結果になるかどうかはわからないが、少なくとも弟が兄に対して何かしらの行動を起こすことは確実だ。
兄には一層注意を払ってほしい所だが、予期しない時期に家督を継いで、しかも時間が経っていない時に弟の行動に気を配ることは難しいかもしれない。
そのことは兄も分かっているだろうが、俺からもより警戒して欲しいとの言葉と周囲の人にも警戒をして欲しいと伝えるようにと手紙に記載しておこう。わかっているだろうことを言うのはくどい気もするが、それくらいには警戒して欲しいからな。
そして他の報告も記載した手紙を書き終え、それを使用人に渡す。
「すまない。出来るだけ早く兄の所にまで届けてくれ」
「了解しました」
兄からの手紙を持ってきた使用人はそう言うと手紙を受け取り、俺の前から去って行った。
これはまた一度、実家に帰らないといけないかもしれない。あの時、危機感から直ぐにこちらに戻ってきたのは早計だったかもしれないと思いながらも、目の前にある執務に取り掛かった。
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