かえりみち
二日ぶりのお天道様を拝んだ
帰り道。
暖房も二日ぶりである、気を抜いたら眠りに落ちてしまう。発展した浮世は、愛佳たちには優しすぎたのだ。
発車してすぐ富士彦が、
「あのさ愛佳、忘れてるかもしれないけどジャージ穿きっぱなしだぞ」
今月で最も衝撃的な告白をしてきたではないか。
「でぇ……マジだ! ちょっと! も、もっと早く言ってよ! アホー!」
「あぁ、いつもの愛佳だ」
愛佳は自宅のマンションへ帰宅すると、母親の小言から逃げるように自室へと向かった。ベッドと一体化し、一分弱で眠りに落ちた。
当然、夢を見た。そこは黒い塀に囲まれた、立派な門構えの大きな旧家で、ひとりの女児と、姿の見えない男児と一緒に遊んでいた。
『わたしいつか、あざみと、お店やさんやるから。あいかちゃんもなかまになって』
愛佳は女児に答えた。どんな形であれ力になると。
『名前は、さい食同こう会。こないだ、パパが考えてくれた』
愛佳は約束した。もうすぐ引っ越してしまうが、必ず戻ってくると。
『バイバイ、あいかちゃん』
『またね、あんちゃん』
――叫ぶように飛び起きた愛佳は、
「……
布団にくるまり、数分置きに本棚の隙間や部屋の角、ベッドの下やカーテンの隙間など、あらゆる場所に目を配りながら、朝が来るのを待った。
これでは『いつもの愛佳』に戻るまで、だいぶ時間がかかってしまう。
目玉をぎょろつかせる生活は、存外長く続きそうだ。
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