第77話 いざ第36階深層へ

 降下すること数分。


「や、やっと着いたぁ……!」


 ようやく見えてきた地面に、ユキが安堵の声を洩らす。


 青みがかった薄暗い洞窟。すぐそばにモンスターが徘徊している……というわけでもなさそうで、目の前にあるのはボス戦の前にあるような大きな扉があり、βとマイが扉の前で待っていた。


「これ、開けちゃっていいんですかね……?」


 おそるおそる扉に近づくユキだが、「いや」とノインが首を横に振る。


「開かないぞ」

「へっ?」

「もうすぐ始まるから、それまでな」

「始まる……?」


 ――何が?


 まるで知ってるかのような口ぶりのノインに疑問符を浮かべている――と。



『やぁ、こんばんは』

「――!?」


 突然聞き慣れない男の声が部屋全体に響き渡った。


『ん、あれ? もしもーし? 挨拶くらいはしてほしいなぁ』

「あっ……こ、こんばんは……」

『まあ挨拶されたところで、僕にはわからないんだけどね。これ、録音だし』


 ――じゃあなんで挨拶させたし。


 ただ1人素直に挨拶し返したユキが、心の中でツッコミをいれる。


『さて、この深層に来たということは、自分の腕に相当な自信があるみたいだね……あぁ、そう身構えないで? 僕の深層は一番優しい難易度だから』


 ――本当かな、それ。


 格上が言う『簡単』はどうも信用ならない――とユキがこんなにも疑心暗鬼になってしまうのは、明らかにノインのせいだろう。


『というわけで、早速2グループに分けよう』

「2グループ?」

『僕の深層は二手に分かれて攻略してもらうんだ』

「なるほど! 2チームに分かれて、それぞれ試合を展開するのか! センターがいなければポストを使うこともできないし、中にも攻められない。逆にシューターがいなければ、外からゴールを狙うことが出来ず、中で勝負するしかないってことだね! このチーム分けはかなり重要だよ!」

「……? マスター、あの子は何を言ってるの?」

「あんな意味不明な言語、俺がわかると思うか?」

「あー……要するに戦力の分断ってことだ」

「「なるほど」」

「なんか龍矢くんに解説されるのは違う!」


 普段とは逆の立場にRui子は頬を膨らませるが、実際にバスケ未経験者にとっては意味がわからないので仕方ない。


『んー……最初は左右に分かれよっか。はいっ』

「う、うぇっ!?」


 と。

 男の合図と共に――ユキたちの間に何かが通り抜けた。


 おそるおそる右手を伸ばしてみるが……途中で何か硬い物体によって阻まれる。


 ――透明の壁!


 男は今さっき、『左右に分かれてもらう』と言っていた。


 左サイドはノイン、ユキ、マイ、ユミリン。

 右サイドは龍矢、Rui子、ソウタ、β。


「おぉー! こっちはポジション被りがあまりないね!」

「ふっ……どんなチームであろうと、蒼茫の星になることには変わりないさ……」

「と、とりあえず、みんなの足を引っ張らないように頑張るよっ」

「俺たちの遠距離はユミリンさんだけだな」

「ありゃりゃ。ちょっと荷が重かったりー?」

「だ、大丈夫です! ノインさんさえいれば、大抵のことはなんとかなりますので! ……えっと、一緒に頑張ろうねマイちゃん!」

「ナー。私はマスターの指示に従うのみ。一緒に頑張るつもりはない」


 それぞれが和気あいあいとする中……唯一人、透明の壁を恨めしそうに見つめる人物が。


「…………………………………………」

「……ヒッ!? ノ、ノインさんっ。あの人、見てます! めっちゃこっち見てますよ!」

「あー……そりゃまあ、自分のパートナーと離ればなれになっちゃったからな」


 あそこまでにはならないだろうが、その気持ちはわかる――と今にも暴れだしそうなβを見て、苦笑いを浮かべる。


『さて……僕は優しいから、始める前に君たちの意見や質問を聴いてあげよう』

「チームの再編成をしろ」

「あ、あの、ダンジョンのギミックは、どんな感じなんですかっ?」

『ま、これ録音だから本当に聴くだけなんだけどね。大丈夫大丈夫、成るようになるよ』

「「…………」」


 素直に従ったβとユキに静かな殺意が芽生えた。


『じゃ、攻略開始。頑張ってねー』


 という合図と共に……目の前の扉がゆっくり開かれる。


「……マイ」

「?」

「命令だ。何がなんでもクリアしてこい」

「ヤー」


 マイが頷くのを確認したβは、続いてノインとユキに顔を向ける。


「……もしマイをゲームオーバーにさせたら、お前らも同じ目に遭わせてやるからな」


 その口調は氷よりも冷たく、刃物のように鋭い視線は一切冗談を言ってるように見えない。


「了解した。誰もゲームオーバーさせずに合流するよ」

「……ハッ。マイ以外のお前らはどうでもいいがな」


 吐き捨てるように言うβにユキが眉をひそめるが、何か言う前に扉の中へと入ってしまう。


「る、Rui子ちゃん!」

「ん? どした?」

「気を付けてね! そっちは三人で固まってるけど、その、まだあの人は信用できないし……!」

「大丈夫大丈夫! もし攻めてきたとしても、こっちは三人! 軽くカウンターを決めてあげるよ!」

「そ、それならいいんだけど……」


 ――心配だ。


 まだ入ったばかりのソウタ、いまいち頼りない龍矢、となれば当然まとめ役はRui子となるのだが……。


 ――僕、Rui子ちゃんに避けられてるような気がして……。


 ふと思い返されるのは、数日前のソウタの悩み。

 誰とでも打ち解けるRui子に限って、そんなことはないだろうとは思うが……完全に否定もできない。


 どうか二人の仲に亀裂が生じませんように――と心の中で願いつつ、扉の中へと入っていく。


 扉の向こうは大きなホールだった。円形状に型どられているが……進むべき道がどこにもない。


『全員、入ったね? じゃ、始めるよ』

「――!?」


 と。

 全員が入ると、床に描かれた巨大な魔法陣が白い光を放つ。


 光はだんだんと強くなっていき、そして――。



***



「――ハッ!?」


 次にユキが目を開いた時には、見知らぬ洞窟の中だった。


 先程とは違う、道が続いている薄暗い洞窟。周りを見渡すが、誰もいないようだ。


 一人という状況に孤独を感じるが、慌てて首を横に振る。


 ――ダ、ダメダメ! 私がノルズのリーダーなんだから! 弱気になってる場合じゃない!


「……よしっ。まずは他の人と合流しつつ、この深層のギミックを確認しよう。えい、えい、おー!」


 いつものように拳を振り上げ、気合いを入れ直したところで。


 岩陰から何かが躍り出てきた。


「――っ!」


 即座に構えをとるユキ。


 ここは深層。並大抵の敵じゃないということはわかっているので、最大限の警戒をしつつ――




【スライム Lv.1】


「あ……れ……?」


 頭上のステータスを見た瞬間……ユキの手がピタリと止まった。


 目の前に現れたのは、第1階層付近でよく見かける懐かしき存在。レベルも高くないどころか、めちゃくちゃ低い。


 ――随分と優しすぎない?


 確かに『深層の中でも一番優しい設定』だとは言っていたが……深層どころか、普通の階層と比べても優しいレベルだ。


 なんだか拍子抜けしてしまい、ユキの全身から力が抜けてしまう。


 だが、目の前のスライムは戦闘状態。

 溜めの動作に入ると、勢いよくユキに飛びかかってくる。


「よっ、と」


 とはいえ、相手はLv.1。軽々と突進を避ける……が。


 ――あれ?


 避けた時……何か違和感を感じた。

 なんとなく……なんとなくだが、いつもの調子ではないような、そんな感じ。


「……とりあえず倒しちゃおっか」


 刀を構え、隙だらけのスライムに一振り。


『6』


「……え?」


 表記された数字を見て固まる。


 確かにスキルも何も使ってない、ただの攻撃だった。スライムに打撃や斬撃耐性に強いというのも知っている。


 だが――それにしても、ダメージ量が低すぎるのだ。相手がLv.1に対し、こっちはLv.60。軽く攻撃を与えただけで、瞬殺できるはず。


 なのに……一桁ダメージで、スライムは倒されてない。


 身体を動かした時の違和感、優しすぎる設定……様々な要素から、ユキは恐る恐る視界の左上を見てみる。


【ユキ

HP 17/17

MP 5/5】


「――っ!」


 原因は明白だった。


 スライムは続けて攻撃を仕掛けてくる。


「っと! や、【八咫烏】っ!」


『7』『9』『7』


 今度は油断せず。

 スキルを放ち、確実なダメージを与える。


 3連撃を受けたスライムは光の粒子となって消えていった。


【レベルアップ!】

【名前:ユキ

メイン:ナイト Lv.1→2

 サブ:バーサーカー Lv.1→2

 HP:17/17→34/34

 MP:5/5→10/10

 攻撃:18→36

 防御:14→29

 魔功:5→10

 魔防:11→22

素早さ:20→39


スキル

【バーサーク Lv.4】【ブラスト Lv.4】【鎌鼬 Lv.7】【八咫烏 Lv.5】【天狗 Lv.5】【河童 Lv.3】【鵺 Lv.4】【餓者髑髏 Lv.2】【小豆洗 Lv.4】【絡新婦 Lv.1】

エクストラスキル

【彷徨】


 スライムを倒した瞬間、レベルアップの表記がされる。


「これが、第36階深層のギミック……!」


 Lv.1からのスタート。スキルがそのまま引き継がれているのが、せめての救いだろうか。


 ――とりあえず誰かと合流しよう! 下手したら、ゲームオーバーになっちゃう!


【ゴブリン Lv.5】

【ゴブリン Lv.5】

【ゴブリン Lv.5】


「「「ギギィッ!」」」

「っ!」


 ――こ、こんな時に!


 他のプレイヤーと合流する前に出てきたのは、ゴブリン三体。


「ギィッ!」

「ぐっ……!」


 ゴブリンが振るう剣を慌てて躱す。


「【バーサー――」


 応戦すべくバーサークモードになろうとしたユキだが……ピタリと止めてしまう。


 ――バーサークモードを使ったら防御が下がる。そしたら……負ける可能性が高くなる。


 負けたら終わり――彼女のその迷いが命取りだった。 


「ギギィッ!」

「あっ……!?」


 一閃。

 ユキの手に剣が振るわれ……その衝撃で鬼斬を落としてしまう。


「しまっ――!」


 そして生まれる隙。


「――っ!?」


 慌てて刀を拾い上げようとする後頭部目掛けて、別のゴブリンが棍棒を振り下ろした。


「がっ、ぁっ……!?」


 ユキの目に星が飛ぶ。

 予期せぬ打撃に身体のコントロールを失い、続けて攻撃を繰り出してくるゴブリンの突進に対処ができなかった。


「あ゛あ゛ぁっ!」


 自分が何をされたのかすら認識できず。

 突進をモロに受けたユキは壁へと打ち付けられ、全身に鈍い衝撃が響き渡る。


「――はっ……っ……!」


 最早立っていることすら難しく、ぺたりと地面にへたり込んでしまう。


「……ぁっ」


 彼女が顔を上げた先には――刀を奪ったゴブリンが、下卑た笑みを浮かべながらゆっくりと歩み寄ってきていた。


【ユキ

HP 9/34

MP 10/10】


 ――あっ、ヤバい。死ぬ。


 あと一撃でも食らえば終わり。

 逃げなくては――頭ではわかっているものの、身体はぴくりとも動かない。


 とうとう刀が届く範囲まで距離を許してしまい、ゴブリンが刀を上段構えをする。


「い、いやっ……!」


 顔を青ざめながら態度でしか抵抗できないユキだが……相手がそんなことで止まるはずもなく。


「ギィッ!」


 無情にも刀はユキの頭上目掛けて振り下ろされる。



「――!」


 迫り来るダメージに思わず目を瞑った――その瞬間。





「――【シールドスラッシュ】!」



 銀の星が飛来した。


『9』

「ギギィッ!?」


 予期せず攻撃に、ゴブリンは横へ吹き飛んでしまう。


「大丈夫か、先輩」


 そしてユキを守るように、ゴブリンたちとの間に割って入ってきたのは……銀甲冑のプレイヤー。


「ノ、ノイン……さん?」

「あぁ」

「どうして、ここに……?」

「ん? さっき言っただろ? 誰もゲームオーバーさせずにクリアするって」

「誰もゲームオーバーさせずに……」


 反芻したところで……ハッと気がつく。

 自分が既に諦めていたことに。


「すみません! 私、私っ……!」


 ――私、リーダーなのに……諦めてた。


 リーダーとして……いや、プレイヤーとしてあるまじき醜態に、ユキが怯えたように謝る。


 だが、ノインはそんなユキに対して「大丈夫」と優しく声をかけた。


「誰にだって失敗はあるさ。後から取り返せばいい」

「ノインさん……」

「だから、先輩も好きに戦っていいんだ」

「で、でも、レベルが……!」

「レベルなんて関係ないさ。相手はいつも相手しているゴブリンってことに変わりないんだからさ」


 ……尚、この間にもゴブリンたちの攻撃は続いているが、ノインは見もせずに全てジャスガしている。


 バーサークモードを使ってるから? 既にレベルがゴブリンより高いから?



 ……否。


【ノイン

HP 40/40

MP 6/6】



 Lv.2のステータスさえあれば――彼にとって十分だからだ。


「よっと」


 剣と棍棒の同時攻撃を弾くと、小さな体に拳を叩き込む。



『3』

『3』

「「ギィッ……!」」


 ダメージは出ないものの、ゴブリンたちは衝撃で後ろへ吹っ飛んでいった。


 ――好きに戦っていい、か。


 替えの鬼斬を再装備すると、静かに目を閉じる。


「すぅ………………【バーサーク・妖狐】!」


 深呼吸をし――ユキの叫び声と同時に赤いオーラを纏った。


「ギィッ!」


 鬼斬を構えたゴブリンが襲いかかってくる。


「ふっ――」


 ユキは無理に攻撃するわけでも怯えるわけでもなく……刀の軌道を読んで、必要最低限の動きで躱す。


 レベルが高いと言えどゴブリン。乱雑に振られる剣撃を避けることは、普段の相手に比べて容易いものである。


「――ここ!」

『8』

「ギィッ!?」


 隙を見つけ一閃。スキルを無闇に使わず、通常攻撃で相手のHPをジリジリと削っていく。


「ギギギッ!」


 追い詰められたゴブリンは大きく声をあげると、刀を最上段に構えてきた。


 ――来た!


 これこそユキの待っていたチャンス。態勢を整え、納刀する。


「ギィイッ!」

「……あなたは知らないんでしょうがね」


 大きく刀を振り下ろしてくるゴブリンに――ユキが取った対応は一歩後ろへ下がっただけだった。


 だが……それだけで十分だと言えた。


「ィギッ……!?」

「そんな振り方をしちゃ……簡単に壊れるんですよ、鬼斬は」


 地面にぶつかった瞬間、粉々に砕け散る刀にゴブリンの動きが止まる。


 ――完全に隙だらけの状態。


 一歩。素早くゴブリンの懐に踏み込むと、柄を強く握りしめた。


「――【鎌鼬】!」

『14』


 光速の一太刀がゴブリンを襲う。


 ユキの攻撃はこれで終わりじゃない。


「【天狗】!」

「ギッ!?」


 飛翔スキルを使い、ゴブリンと共に天井へ飛び上がる。


 なんのために?


「――【ブラスト】」


 答えは――ゴブリン三体をまとめて倒すために。


 天狗の風圧で一緒に飛び上がった一体、そしてノインが相手している二体。


 その三体が……全部直線上にいるという条件を整えたのだ。


 ――今!


「【鵺】っ!」


 ユキの最高火力、そしてバーサーカー特有のバフスキル。


『83』

「ギッ……ガッ……!」


 いくらレベルが低かろうと……この火力には勝てない。


 ユキの攻撃は止まることなく、他の二体へ攻撃していく。


『158』

『157』


「「ギィッ……!?」」


 突然の不意打ちに、残り二体は振り返ることすらなく。


 まとめて串刺しにされた三体は……光の粒子となって消えていった。


【レベルアップ!】

【名前:ユキ

メイン:ナイト Lv.2→8

 サブ:バーサーカー Lv.2→6

 HP:17/34→61/122

 MP:10/10→40/40

 攻撃:36→120

 防御:29→97

 魔功:10→40

 魔防:22→77

素早さ:39→130


スキル

【バーサーク Lv.4】【ブラスト Lv.4】【鎌鼬 Lv.7】【八咫烏 Lv.5】【天狗 Lv.5】【河童 Lv.3】【鵺 Lv.4】【餓者髑髏 Lv.2】【小豆洗 Lv.4】【絡新婦 Lv.1】

エクストラスキル

【彷徨】



「ふぅ……な、なんとか、勝てた……」

「流石だ先輩」


 とノインが拍手を送るが、ユキはジロリと睨み付ける。


「そりゃわかりますよ。ノインさんが一体も倒さなかったのは、私に全部経験値をよこす為だってことくらい。私、あなたといた時間は短くないんですからね?」

「……それもそうだな」


 ノインが笑みを浮かべ頭を撫でると、「んぅ」とユキは抵抗せずに受け入れた。


「……あの、ノインさん」

「ん?」


 撫で続けていること数秒後、不意にユキから声をかけられる。


「……んっ!」


 ノインから一歩離れると……両手を大きく広げてきた。


 それがどういう意味をしているのか――彼女といた時間は決して短くないノインは、すぐに何をしてほしいのか理解した。


 片膝をつき……そっと小さな身体を抱き寄せる。


「んっ……」


 ユキは目を閉じると、ノインの背中に手を回す。


「……怖かったです、本当は」

「ん?」

「助っ人に来てくれた誰かが偽物、だなんて。見えない敵に闇討ちされたらどうしようって……」

「もっと早く甘えてくれたって、よかったんだぞ?」

「あ、あの時はみんないたじゃないですかっ。あとマイちゃんも……! 年上である私が甘える姿を見せてちゃ、頼りがいがないと思われちゃいますっ」

「そうか?」

「そうなんですっ。だから……だからこれは、今だけの特権です……」


 そう、今だけ。

 二人だけ空間でしかできない、ユキの特権――



「でも……マイなら、すぐ隣にいるぞ?」

「っ!!」


 ユキの目が見開かれた。


「おっと」


 反射的にノインを突き飛ばし、勢いよく横を振り向く。


「……………………」


 そこには――何が言いたげな目でジーッと見つめるマイの姿が。


「ありゃりゃー? 二人ってそういう仲だったりー?」


 と、その隣からユミリンが顔を出す。

 彼女が浮かべる笑みには、どこかしら優しい感情を浮かべているのは気のせいだろうか。


「……ノ、ノ、ノインさん! 二人がいたこと、知ってたんですか!?」

「え? うん」

「なんで教えてくれなかったんですか!?」

「いや、別に隠す必要なんてなかったから」

「私、二人だけって言いましたよね!?」

「やだなぁ。スタンピードの時も、龍矢とRui子がいたじゃないか」

「あれもあなたのせいです!」


 どうしてノインは羞恥心というものがないのだろうか――と頭を抱える。


「……………………」

「……と、とととりあえず! こちらの班は無事に全員合流できましたね! 油断できないギミックなので、力を合わせていきましょう! えい、えい、おー!」

「おー」

「…………」

「……え、なにそれ。超可愛いね」


 なんとか誤魔化そうにも誤魔化しきれず、この先が少し不安になったユキだった。

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