第32話 vs第19階深層中ボス

「――よし、行くぞ!」


 リーズの掛け声と同時にそれぞれが散開していく。

 そんな8人の様子を、頭に角の生えた巨人は一つしかない眼でしっかりと見ていた。


 第19階深層の中ボス、サイクロプス・ゾンビ。元々青い肌ではあるが、ゾンビ化したことによりところどころ内出血したかのように紫に変色し、またこのモンスターも紫のオーラを放っている。


 一つ目も充血しており、通常のサイクロプスより一層恐ろしい見た目だ。


【サイクロプス・ゾンビ Lv.89】


 そして見た目だけではなく、中身も凄まじい。

 第19階層では難なく受けてきた棍棒と全く同じだというのに、ユキはどこか恐怖心を覚える。


「【タウント】!」


 先に動いたのはリーズだ。素早くサイクロプス・ゾンビの前に立つと、挑発スキルを放った。


【名前:リーズ・サルト

メイン:ナイト Lv.88

 サブ:ディフェンサー Lv.84

 HP:3451/3451

 MP:692/692

 攻撃:1310

 防御:1920

 魔功:524

 魔防:1920

素早さ:608

スキル

【タウント Lv.8】【シャドウスラッシュ Lv.10(Max)】【シャドウクロー Lv.8】【シャドウハンド Lv.8】【ナイトモード Lv.9】【ナイトクラッシュ Lv.7】【オートガード Lv.9】【シャドウワープ Lv.8】


 これがリーズのステータス。職業は最も安定していると言われる、Kn/Deの構成だ。武器も片手剣と盾で、攻防どちらにも転じられる安定したチョイスである。


 サイクロプスはぎょろりと大きな眼でリーズを見ると、彼の頭上めがけて棍棒を振るう。


「【オールクラウン】!」

「くっ……!」


【リーズ・サルト

HP 3409/3451

MP 150/150】


 リナのバフと自身のガードが間にあった為、ダメージは最小限に抑えることができた。


「【バーニング】!」

「【ファイアスラッシュ】!」


 ヘイトがリーズへと向いている隙に、他の『蝦の爪』のメンバーも攻撃を仕掛ける。


『238』

『265』


「――ちっ! 硬い!」


 思った通りのダメージが通らず、一人は思わず舌打ちをした。

 サイクロプスは後ろを振り返り、二人のアタッカーめがけて棍棒を横薙ぎしてくる。


「――させるか! 【シャドウワープ】!」


 すかさずリーズがスキルを発動。


 すると、一瞬にして真後ろに回り込み、サイクロプスの攻撃を受け止めた。


 【シャドウワープ】……相手の影に回り込むスキル。不意打ちを食らわせるためだったり、今のように味方を守るためだったりと汎用性は高い。


「【鎌鼬】!」

「【その一矢は地を穿つドラゴンテイル】!」

『105』

『116』


 サイクロプスに隙が出来たのを見計らい、ユキと龍矢もスキルを繰り出す。


「いっくよー! てやぁっ!」


『32』


 Rui子も拳を叩き込むが……このダメージ量。ゾンビなのに相当固いようである。


 サイクロプスは近づいてきた二人にも棍棒を振るう。


「っ! 【天狗】!」


 いくら強くても攻撃は遅い。ユキは距離を置くために飛翔スキルを発動する。

 だが……Rui子はその攻撃に気づいてないのか、構わず攻撃を続けていた。


「!? 危ないっ!」


 ユキが咄嗟に警告するが――既にサイクロプスの棍棒はRui子へと近づいている。


「――【スピンムーブ】!」


 しかし……彼女は決してサイクロプスの攻撃に気づいてないわけではなかった。

 左足を軸にし体を回転させ、棍棒をひらりと躱す。


「へへーん! そんなスピードじゃ、ボクを捕まえられないよっ!」


 身体を回転させることによってさっきとは真逆の方向に回り込んだRui子は得意げな表情を見せる。


 Rui子はまだLv.55。だが、動きはリーズたちと対等に動けていた。

 ずっと至近距離でサイクロプスに攻撃を繰り出しつつ、迫り来る攻撃はひらりと躱していく。足は常に動いているというのに、その表情には疲れを微塵も感じさせない。


「すごい……!」


 同じくらいのレベルでありながらも彼女のPSの高さに、ユキは思わず関心してしまう。


 ――って! そんな暢気なこと言ってるつもりじゃない! 私も戦わなきゃ!


 慌てて鬼斬を構え直すと、サイクロプスに向かって駆け出していく――


「なあ、ユキ先輩」

「――ふぇあっ!?」


 その瞬間、急に目の前にノインが現れ、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

 ちなみに勢い余って振ってしまったユキの斬撃はしっかりジャスガしている。


「ノ、ノインさん!? 急になんですか!?」

「いや、ちょっと訊きたいことがあって」

「後にしませんか!? 今、戦闘中ですよ!?」

「戦闘? あぁ、そんなことはどうでもいいんだ」

「どうでもいい!?」


 ――中ボス戦の真っ只中だっていうのに、何考えてるんだこの人は!


 思わず頭を抱えそうなユキを他所に、ノインはサイクロプスに向かって指さす。

 いや……正確には、敵と真正面からぶつかり合っているリーズに。


「あいつ、確か俺と同じディフェンサーだろ?」

「え、えぇ……メインではないですが、Kn/Deですね」

「じゃあ――なんでジャスガしないんだ?」

「……は?」


 思わずぽかんと口を開けてしまうユキだが、ノインは止まらない。


「だって、そうだろう? ああやってガードをしてたところで、HPは減っていく。となると、ヒーラーの役目は当然多くなる。だが、今ヒーラーを務めてるリナさんはアタッカーも兼任できるほどの持ち主だ。なら、相手の攻撃をジャスガして彼女のMP消費を抑える方がいいに決まってるだろ?」

「…………」


 彼の言ってることは間違ってない。

 現にリナはリーズたちをいつでもフォローできるようにMP消費を抑えていて、それ故に攻める手も減っている。

 しかも、このままではリナにもヘイトが向けられるだろう。ヘイト管理はタンクの役目であり、タンクを中心に戦闘が構成されると言っても過言ではない。

 となれば、リーズがなるべく被ダメージを抑えればもっと攻め手も増え、ヘイト管理も楽になるはずなのだ。


 ……もっとも、彼の案にはとあることが抜け落ちているが。


「……ふ、ふふ。そうでした、あなたはそういう人ですもんね」

「そういう……? どういうことだ?」

「いいですかノインさん、よーく聞いてくださいね」

「おう」


 素直に聞き入れる体勢になったノインを見て、ユキは大きく息を吸い込み……心の底からのツッコミをいれた。


「あれが本来のタンクの動きですからぁっ!!」


 そう……ジャストガードとは相手の攻撃のタイミングを完璧に掴んだ上で為せる技である。

 つまり、完全なる覚えゲー。しかもVRMMOとなると、ボタンを押すだけとは違い身体に染み付かせないといけないので、更に難易度は上がる。

 初めて遭遇した敵であるのならまずモーションを覚えるところから始めなくてはいけなく、何百回何千回と繰り返し試すことによってジャスガできるようになっていくのだ。


 しかし――異例がここに存在する。ノインだ。


「大体、何のためにディフェンサーのHPが高く設定されてると思ってるんですか!? 相手の攻撃に多く耐えられる為ですよ!」

「いや、そんなことはわかってるんだが……でもまあ、何度か受ければある程度タイミング掴めるだろ」

「そんなノインさんみたいにすぐジャスガできるわけじゃありませんからね!? みんなへの攻撃を受けつつ、アタッカーを動きやすくして、ヒーラーからサポートしてもらう! それが一般的なんです!」


 ノインだって初めはジャスガのタイミングを反復練習することから始めてきた。幾度となく師匠の容赦ない一撃を食らい続け、何度も何度も戦った末に今のノインがある。

 だが、ずっと孤独だったせいだろう。世間のプレイングを見ずに強くなってしまったものだから、「俺が出来るならみんなも普通に出来る」という謎の先入観が彼の中に植え付けられてしまっているのだ。


 つまるところ……「ジャスガは慣れれば誰でもできるようになる」というのが彼の思考である。


「そうなのか……いや、待て待て。そのプレイだとDe/Beの構成は生かしきれない。ただの地雷職になってしまうじゃないか」

「自覚なかったんですか!?」

「あっ、そういえば、ステップに初めて来た時にふれぃどさんも同じようなこと言ってたっけ……そうか、みんなできないから地雷職のネタ構成だなんて呼ばれてるんだな」

「むしろ、みんながノインさん並みに動けていたら無双状態ですよ……!」


 ようやく納得いったと両手を叩くノインに、ユキの頭は痛くなる一方だ。


「いい機会です、今回はここで見ててください! ごく普通の一般的な戦闘がどんなものかを!」


 そんな風に見てろだなんて言われる人あんまりいないんじゃないかな――なんて暢気なことを考えながら、刀を抜いてサイクロプスへ迫るユキを眺めることにした。


 サイクロプスまで迫ったユキは同じレベルでも懸命に戦うRui子の隣に並ぶ。


 ――Rui子ちゃんが頑張ってるんだ! 私も頑張らないと!


「Rui子ちゃん、無理させてごめん! 一緒に戦うね!」


 この時……ユキは取り返しのつかない失言をしてしまった。

 いや、彼女に悪気はない。あくまでRui子に協力するという意味で声をかけたのだ。


「……無理させて?」


 だが。

 運の悪いことにその言葉はRui子にとってトリガーであった。


「あっ! ま、待てRui子! ここではやるな!」


 いち早く気がついたリーズが慌てて制止させようとするが、もはや彼女の耳には届いてない。


「つまり、あれかな? 『背が低い人はバスケに向いてない』とか、そういう意味の無理って意味かな? それとも30点差以上つけられて、『この試合は諦めろ』みたいなことかな? このモンスターにボクが勝てるわけないと」

「えっ、いや、違っ! ご、ごめんね! そういう意味で言ったわけじゃないの!」


 てっきり怒ってると思ったのか、慌てて謝るユキ。

 ……だが、そうではないのだ。

 Rui子の身体が震えているのは怒りのためではない。むしろその顔には不敵な笑みを浮かべてさえいる。


「いいよ、いいんだよ。そうやってボクは『無理』だなんて言われてきたんだ。でも、そう言われる度にボクの心は震えてきたんだ」


 この時――ユキは空気が変わったのを感じた。

 目には見えなくとも、確かにそこにあったのだ。


 底知れぬ威圧感が。

 空気の震動が。

 そして……彼女の熱い闘志が。


「だって……その無理を覆す瞬間こそが、最高に楽しいから」


 Rui子のメインジョブは武器のナックルを見てわかる通り、ファイターである。

 ファイターは人によってプレイスタイルが異なるが……Rui子は相手の動きを見切って、素早く動き回る。

全体的に周囲を見て時には味方に指示を出して敵を翻弄する、謂わば司令塔のようなものがRui子の戦法だ。


 しかし――心情的な刺激を受けてボルテージが高まると、スタイルは全く変わる。


 その彼女のサブジョブは。



「――ゾクゾクする」


 果たしてRui子のトリガーは引かれた。


「【バーサーク】!」


【名前:Rui子

メイン:ファイター Lv.62

 サブ:バーサーカー Lv.48

 HP:832/832

 MP:0/0

 攻撃:10865

 防御:1710

 魔功:0

 魔防:1310

素早さ:14328

スキル

【バーサーク Lv.5】【ブラスト Lv.5】【ドライブ Lv.7】【スピンムーブ Lv.6】【レイアップ Lv.7】【フェイク Lv.5】【スティール Lv.3】【ダンク Lv.4】【フェイドアウェイ Lv.4】【ファーストブレイク Lv.6】【ファイトオーバー Lv.4】


 リナのバフが全部乗っかっている為、Rui子のステータスは通常のバーサークモードだけで凄まじいものとなっていた。


「【スティール】!」


 迫りくる棍棒に向けて拳を放つ。


【Rui子

HP 486/832

MP 0/0】


 かなりの反動を食らっているが、サイクロプスの攻撃を弾いていた。

 そして相手に出来た隙を見逃さない。


「【ドライブ】!」


 瞬間、一気に間合いを詰めて拳を叩き込んでいく。


「ちっ……Rui子のフォローに回れ!」


 明らかに避けることを想定してない超攻撃的なプレイに、リーズも慌てて指示を出す。


「あはっ! あはははっ! いいね、いいねぇ! キミがパワーで来るなら、こっちはスピードで応戦するよっ!」


 元々ファイターはスピード寄りのステータス。更にRui子の装備の効果もあり、その速度はこの場の誰よりも速くなっていた。


 まるで風が吹き抜けるかのようにサイクロプスの真後ろへ回り込む。


「……お?」


 だが……サイクロプスも伊達に中ボスをしているわけではない。


 Rui子の動きを一つ目で追うと、真後ろに向かって蹴りを放ってきたのだ。


「【フェイドアウェイ】!」


 拳を殴りつけてノックバックし、サイクロプスの攻撃を間一髪躱す。


「……へえ。ボクのスピードについてこれなくても、対処はできるんだ」

「おい待てRui子! これ以上はよせ!」


 慌ててリーズが警告するが……興奮状態になっているRui子は当然聞く耳を持たない。


「【バーサーク・後半戦】!」


【名前:Rui子

メイン:ファイター Lv.62

 サブ:バーサーカー Lv.48

 HP:486/832

 MP:0/0

 攻撃:12917

 防御:0

 魔功:0

 魔防:0

素早さ:15966

スキル

【バーサーク Lv.5】【ブラスト Lv.5】【ドライブ Lv.7】【スピンムーブ Lv.6】【レイアップ Lv.7】【フェイク Lv.5】【スティール Lv.3】【ダンク Lv.4】【フェイドアウェイ Lv.4】【ファーストブレイク Lv.6】【ファイトオーバー Lv.4】


「――!」


 その途端、赤い稲妻を纏ったRui子が発動したのは――完全に防御を捨てたバーサークモード。

 ユキが目指しているモードでもあるのだ。


「リナ! 頼む!」

「え、えぇ! 【オールオーバー】! 【ヒールエリア】!」


 とは言え、格上相手に防御を捨てるなど正に無謀。一撃でも食らえば即死状態だ。


「ノインさん!」


 ユキも外で突っ立っているノインに声をかける。


「お願いします、手伝ってください!」

「ん? いや先輩、さっきは『見てろ』って」

「状況が変わったんです! このままだとRui子ちゃんが危ないですからぁ!」

「……まあ先輩がそこまで言うなら」


 必死に叫ぶ彼女にノインも盾を構え直す。


「それに……あの子をここでゲームオーバーにさせるのはちょっと惜しいからな――【バーサーク】」


 そう言って赤いオーラを纏うと、素早い動きでRui子の隣へと並び立つ。


「加勢するぜ。お前のフォローは俺に任せろ」

「おっ、それは助かるね! 任せたよ!」


 かくして。

 第19階深層の中ボス戦は計画と大きく外れた、大波乱の戦闘となってしまった。



***



「ボク、一度スイッチ入ると終わるまであんな感じになっちゃうんだよ」

「そ、そうなんだ……」


 なんとか第19階深層を誰一人失わずに乗り越え、一行はいよいよ終盤である第20階深層の攻略を進めていた。


 だが……中ボスで思わぬ体力を消費してしまった為、本来計画していた攻略ペースを落とし、大体半分を越えたところで今日は攻略をやめようということになったのだ。

 予定より早い中断だったが、誰一人として異論はなかった。


 夕食を摂り明日に備え各々が準備する中、ユキはRui子と焚火の前で体育座りをしながら雑談をしている。


「これがボクの悪い癖というかなんというか。バスケだとなかなか使い勝手がいいんだけど」

「まあ、確かに……」


 バスケの試合であるのなら、ああいった興奮状態による能力以上の力を発揮する特性は戦力にもなるだろう……あくまでバスケの試合は、だが。


「迷惑かけちゃったみたいでごめんね。ボクなんて捨てればよかったのに」

「す、捨てるだなんて! Rui子ちゃんを捨てられないよ!」

「あはは、ユキちゃんは優しいねぇ」

「当然だよ! 私、お姉さんなんだから!」

「……いや、ボクもユキちゃんと同い年だからね?」


 どうも年下扱いしてくるユキに、念のために伝えておくRui子。


「っていうか、そんな真剣に考えなくても。ほら、ここって結局ゲームじゃん? 死んでもやり直せるんだしさ」

「う、うぅん、まあそうなんだけど……」


 Rui子の言うことは正しい。もしあの時Rui子がゲームオーバーになっても、後でまた再会できるのだ。だから『見捨てる』という選択肢も間違ってないのだ。


「……それでも、Rui子ちゃんを死なせなくないかな」

「ん? どうして?」

「どうしてって……」


 ――どうしてだろうか。


 まだ会ったばかりの少女に、どうしてここまでするのだろうか。


 ただの同情? それとも自分が守らなくちゃいけないから?


 ……いや。


「……私に似てるから、かな」


 ぽつりと出てきた答えがそれだった。


「似てる? ボクとユキちゃんが?」

「うん。なんていうか……あの時のRui子ちゃんを見て思ったんだ」


 あの時。

 Rui子がバーサークモードになる前の、あの時。


「他の人に『無理だ』とか『諦めろ』って言われると、なんか自分がその程度だと見られてるっぽくてさ……私もムキになって反抗しちゃうんだよ」


 思い返すのは――ミノタウロス戦のこと。


 何度も何度も挑み続け、周囲にも『諦めろ』と言われても辞めなかったあの頃を。


 その時の自分とRui子がどこか重なったのだ。


「……暴走するボクを見て、自分勝手だとか思わなかったの?」

「自分勝手? いやいや、そんなこと思うわけないよ。だって――ここ、ゲームの世界じゃん? 自分がやりたいようにやれるんだから」

「…………」

「私ね、夢があるんだ。『伝説の剣士』になるって夢が」


 自分から夢のことに語るだなんて思いもしなかった。

 いくら同い年でも……いや、同い年だからこそ馬鹿にされる可能性はあるというのに。


 それでも彼女が話したのは、Rui子にもっと自分のことを知ってもらいたかったのと……この夢を本気で信じてくれる人がいるからだろう。


「………………そっか」

「おいRui子。そろそろ会議始めるぞ」

「あっ、はーい!」


 リーズに声をかけられRui子は立ち上がるが、ふとユキの方を振り返ってステータス画面を開く。


【プレイヤー:Rui子からフレンド申請が届きました。承認しますか? Yes/No】


「……えっ」

「今日は話してくれてありがとっ! 明日も一緒に頑張ろうね!」


 Rui子は軽くウインクをすると、颯爽と『蝦の爪』のテントへと戻っていった。


 彼女は嬉しかったのだ。周りに同い年の同性もそこまでいなかったから、こうして自分のことをわかってくれる存在に会えたことが。


 クランは違えど、もっと仲良くなりたいと思った。

 そう、Rui子も――夢を持ってるから。


 だから。




「明日の第20階深層のボス戦だが――奴らを裏切ろうと思う」


 リーズからそう告げられた時には――Rui子は目の前が真っ暗になったかのような感覚だった。

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