第5話 50,000時間かけて

「――【バーサーク】」


【名前:ノイン

メイン:ディフェンサー Lv.2

 サブ:バーサーカー Lv.2

 HP:40/40

 MP:6/6

 攻撃:40

 防御:18

 魔功:2

 魔防:15

素早さ:39

スキル

【シールドスラッシュ Lv.1】【バーサーク Lv.7】【ブラスト Lv.1】


「さーて……とぉっ!」


 戦闘開始からバーサークモードになったノインは、容赦なく攻撃してくる自分の師匠、もとい白銀の鎧ティガヴァイスの攻撃をジャスガした。


「そう慌てんなって師匠」


 ノインは短剣をティガヴァイスへ振りかざす。


『1』


「――これが最後の戦いなんだ。じっくりやっていこうぜ」


 ノインのダメージはたったの1。痛くも痒くもないという風に次の攻撃が迫り来る。


「師匠の第1形態は確かに硬い。防御力は4,000にもなるやべーレベルだ。でもな……4,000程度なら、攻撃力が40さえ超えれば1ダメージも与えられるんだ」


 ――つまり、無理にバフをかけなくてもいい。


「HPは100万。ってことは、たったの100万回攻撃で第1形態は倒せちまう」


 たったの100万回。

 一般人にとって、それがどれだけの苦労なのか――50,000時間も閉じ込められたノインにとっては、ほんの少しの時間である。


「今の俺がマジもんの本気を出せば、たった35時間で終わっちまうんだ。でも……そんなんじゃ、つまらないだろ? もっと楽しもうぜ!」


 ジャスガすると同時に短剣を振るう。


 攻防を繰り広げること100時間。常人ならぶっ倒れるような激戦を、ノインは涼しい顔して続けていた。


「……あれ?」


 と。

 ノインの一撃を食らったティガヴァイスは力なく倒れた。


「まだ100時間しか経ってないんだが……あぁ、もしかして俺の攻撃速度が上がったせいか? それなら調整したのに……勿体ない」


 と、彼は心の底から残念そうな顔をする。


 しばらくして――白銀の鎧が崩壊し、中から長身の鎧が現れた。


【宿命之白帝・ティガヴァイス(第2形態) Lv.100(Max)】


「ま、ぼやいてても仕方ないか……ラウンド2だ」


 ティガヴァイスがゆっくり動いたと思いきや――一瞬にしてノインの目の前まで迫り来る。


「相変わらずはっやいなー」


 目にも止まらぬ速さの斬撃。今の一瞬で5連撃をノインに向けて放っていたのだ。

 しかし、ノインは平然と全てジャスガする。


 そう、例え第2形態でもジャスガするのは簡単だ。だけど……反撃には転じられない。つまり、バーサークモードは維持できなくなる。


 というのも、バーサークモードには制限があるのだ。

 通常3分間、解除されるとクールタイム5分間。しかし一定ダメージを与え続けていれば、バーサークモードの維持は無限に可能である。


「まあ、バーサークモードが解除されてもある程度凌げるけど……きちんと維持しながら倒してこそ、師匠から教わったことをちゃんと生かせてる証だからな」


 ノインはそう言うと、更なる狂人化へのスキルを唱える。


「【バーサーク2ndセカンドモード】!」


【名前:ノイン

メイン:ディフェンサー Lv.2

 サブ:バーサーカー Lv.2

 HP:40/40

 MP:6/6

 攻撃:238

 防御:0

 魔功:2

 魔防:0

素早さ:204

スキル

【シールドスラッシュ Lv.1】【バーサーク Lv.7】【ブラスト Lv.1】


 次の瞬間――赤いオーラが赤い稲妻へと変化する。

 ティガヴァイスの斬擊と同時に、ノインは短剣を構えた。


『17』

『17』

『17』

『17』

『17』


 ティガヴァイスの頭上に連続表示されるダメージ。


 【バーサーク2ndセカンドモード】――それは防御と魔防を0にする代わりに攻撃と素早さを上げるバーサークモード。

 彼の師匠であるティガヴァイスの第2形態からヒントを得て、自身で習得したのだ。



 なお、Lv.2の時点で固有スキルを進化させるなど前例にはないが……。



「第2形態は素早さが倍に跳ね上がるが……その代わり、防御力は半分に落ちる。だから、ダメージも倍になるんだ。そうだな、師匠?」


 素早さが上がったということは、攻撃速度も跳ね上がるということでもある。


 よって、たったの50時間程度で第2形態を倒してしまった。


「うーん、ここまで順調……いや、順調すぎる。俺としては師匠と最後の時を、満足するまで分かち合いたいというのに」


 倒れた白銀の鎧を見て腕組みするノイン。


 今まさに自身で第2形態を倒したというのに、その表情は実にあっさりとしている。



 そう――新たなイベントは発生しないし、第2形態の鎧は消えてない。



 つまり。


 まだ形態を残しているということなのだ。



 鎧の中から飛び出したのは……神々しい存在。

 真っ白な光のみで表現されてるかのような体には黒縞模様が描かれている。

 大剣が変化した光の剣を構えるその姿は、正に光の剣士。


 これこそ本当に最後の形態。これこそ宿命之白帝・ティガヴァイスの真の姿。



【宿命之白帝・ティガヴァイス(第3形態) Lv.100(Max)】



「んじゃ――正真正銘、最後の戦いだ。行くぜ、師匠」


 ノインは大きく深呼吸をし――発動する。


「【バーサーク3rdサードモード】!」



【名前:ノイン

メイン:ディフェンサー Lv.2

 サブ:バーサーカー Lv.2

 HP:1/1

 MP:0/0

 攻撃:372

 防御:0

 魔功:0

 魔防:0

素早さ:324

スキル

【シールドスラッシュ Lv.1】【バーサーク Lv.7】【ブラスト Lv.1】



 発動した新たなモードは――正に狂戦士バーサーカー


 赤いオーラと赤い稲妻を同時に纏う。


 ありとあらゆるステータスを攻撃と素早さに割り振った、一度でも失敗すれば即死する状態である。


 またHPが強制的に1まで削ったことにより、ディフェンサーのサブスキルも発動済みだ。


「……準備オーケーだ。来いよ」


 ノインがそう言った時――既に戦闘は始まっていた。

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